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「打ちたいのに打てない」 HPVワクチン「騒動」に巻き込まれて、今なすべきこと

1/10(水) 6:46配信

BuzzFeed Japan

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。国が積極的に勧めることを中止してから4年半、医療現場ではどのようなことが起きているのでしょうか? そして、今私たちは何をすべきなのでしょうか?
【寄稿 堀成美・国立国際医療研究センター感染症対策専門職 / BuzzFeed Japan Medical】

予防接種外来で起きた「たいへんなこと」

ある日、「たいへんなことになっている」という連絡が予防接種をしている外来の看護師からきました。

予防接種の外来でおきそうな「たいへんだ」には、予約患者さんなのに冷蔵庫に在庫がないといったポカミスから、接種した際に患者さんが数秒意識を失った(迷走神経反射)、打つワクチンの種類・打つ人を間違えたということまであります。

しかし、この日の話は今までに経験したことがないものでした。

まずは安全確認をしなくてはなりません。

幸いなことに、患者さんが体調不良になったとか事故が起きたということではありませんでした。

当院は月に1400本前後のワクチン接種をしている専門外来があります。10年以上やっていますが、重症な副反応であるアナフィラキシー(急性のアレルギー反応)と診断された事例は経験していません。

ちなみに当院の救急科も、年に100件前後のアナフィラキシー症例の対応をしていますが、ワクチンが原因の事例はないのです。

それでも年に2回は救急医とともに対応訓練をしています。備えをしておけば安心ですし、医療機関が万が一に備えていれば、患者さんや家族の不安も軽減されると思うからです。

さて、連絡をしてきた看護師は何にびっくりしていたのでしょう。それは、患者と家族が遠方から特急を乗り継いでの受診ということだったのです。

「定期接種」のワクチンが地元で打てない

特定の国に入国する際に必須の黄熱ワクチンならばそういうことも珍しくないのですが、その人が希望しているワクチンは「定期接種」のHPVワクチン(※)です。

※子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を防ぐワクチン。日本では小学校6年生から高校1年生の女子が、公費で接種できる「定期接種」となっている。

定期接種の場合、その対象であれば公費が出され、原則自己負担なしで接種ができます。

しかし、自治体ごとに運用されているため、通常は居住地以外ですと公費とならずに自己負担が発生します。遠方ならば交通費も必要となります。なぜそのようなことになったのでしょう。

ご本人に確認したところ、「近くで接種をしようとしたが、対応してくれる医療機関がなかった」との説明でした。

実は、私たちはその後も同様の相談を複数受けているのです。当事者が接種を希望しているのに、医療側の事情で接種を妨げられる不利益が生じてもいいのでしょうか。そもそもなぜそのようなことになったのでしょうか。

その医療機関に直接確認をしたわけではないので理由は明らかではありません。しかし、例えばインターネットの情報をみていると、ワクチン接種を勧める医師を匿名の人たちが個人攻撃をしたり脅迫をしていたりするので、そういったことに巻き込まれたくないのかもしれません。

あるいは医療者が番組制作会社のシナリオで作られた放送をそのまま信じて、「このワクチンは危険だから接種はやめよう」と思っているのかもしれません。そんなことを想像しました。

日本では厚労省が調査を行う目的で、臨時の対応として積極的接種勧奨の差し控えをしています。それでも、定期接種として接種は可能ですし、公費で打てるままです。

当然、打ちたい人の接種の機会を奪うようなことがあってはならないのですが、事実、目の前には地元で打てなくて困っている人たちがいます。

誰かを批判するのは簡単ですが、批判が目的化してはいけないし解決にはつながるわけでもありません。この先に行くにはどうしたらいいのでしょうか。

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最終更新:1/10(水) 6:46
BuzzFeed Japan

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