ここから本文です

<落語>手話で笑い40年 桂福団治さん、プロ弟子も誕生

1/11(木) 13:30配信

毎日新聞

 耳の不自由な人にも落語を楽しんでもらおうと、落語家の桂福団治さん(77)が手話落語を始めてから、40年を迎える。手話落語家を育てるうち、念願だったプロとして活動する弟子も誕生。弟子と全国のショッピングモールで公演を重ねている。この40年で、聴覚障害者と健常者の間にある「壁」が少しずつ取り除かれているように感じるという福団治さん。「壁がもっとなくなるよう、活動を続けたい」と気持ちを新たにしている。【山田夢留】

 手話落語のきっかけは、声帯ポリープの手術で入院中にラジカセを聴いていて急に音が聞こえなくなり、不安を感じた経験から。ラジカセの故障のためだったが、その時に「聞こえない」とはどういうことかと考えた。聴覚障害に関心を持ち、手話を学ぶようになった。その後、落語会に来てくれた聴覚障害者の客を笑わせたいと、1978年の春ごろ、手話落語を始めた。

 福団治さんは、華麗で完璧な芸の持ち主だったと評される上方落語四天王の一人、三代目桂春団治さんの筆頭弟子。それだけに、本来は聴覚芸である落語を、視覚芸として演じることから、当初は「伝統芸をぐちゃぐちゃにした」と批判されるのではとの懸念もあった。古典落語をそのまま手話にしても伝わらない部分について、試行錯誤も続いた。「最初は同音異義語のギャグなど、演じていても伝わらず、難しいと感じたこともあった」。視覚で伝わりやすいギャグに変更するなど改良を加えたという。

 作家の故・藤本義一さんらの支援もあって活動が広がり、一般向けに開いた教室からは約100人の手話落語家が巣立った。現在、手話落語の弟子は7人おり、うち宇宙亭福だんごさん(54)がプロとして活動。福団治さんは「手話落語を始めた時の目標が、聴覚障害者のプロを育てることやった。うれしい」と目を細める。

 5年前から全国の商業施設「イオンモール」で、福団治さんが得意とする本格的な人情噺(ばなし)と手話落語をセットに公演を続けている。昨年11月、東京都日野市での公演を訪れた、いずれも60代の聴覚障害がある夫婦は「こういう機会はありがたい。面白かった」と喜んでいた。

 40年の歩みを振り返り、「手話は、聴覚障害者のものと健常者は考えがちで、それが『壁』になっていた。娯楽性のある落語と組み合わせることで、その壁を取る役割を果たせたのではないか」と福団治さん。「いつの日か健常者が聴覚障害者に弟子入りする日が来てほしい」と夢を膨らませる。

 16~18日には大阪・和歌山のイオンモールで古典落語と手話落語の公演がある。16日はイオンモール堺鉄砲町、17日は同りんくう泉南、18日は同和歌山で。いずれも午後2時から古典落語(手話なし)、午後2時50分から手話落語。入場無料。問い合わせは事務局(0120・126・145、rakugo@kreo.ne.jp)。

最終更新:1/11(木) 14:56
毎日新聞