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石綿訴訟で遺族(福野)が敗訴 アルバイトで中皮腫発症

1/12(金) 23:46配信

北日本新聞

 2013年に南砺市苗島(福野)の野村光弘さん=当時(47)=が中皮腫で死亡したのは、大学時代に建材を切断するアルバイトでアスベスト(石綿)を吸い込んだことが原因として、遺族が雇用主の内装会社(射水市)と建材メーカー(東京)に計約1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが12日、東京地裁であり、同地裁は請求を棄却した。遺族側は控訴する方針。

 鈴木正紀裁判長は、的確な証拠がなく、野村さんが石綿を含む建材を扱ったとは認められないと認定。高岡労働基準監督署が12年、中皮腫との因果関係を認め労災保険の支給を決めたことについては「肯定できず、判断を左右しない」とした。

 野村さんが後に営んだ中古自動車販売業で、石綿が含まれる可能性がある部品を扱ったことから、内装会社での作業以外にも石綿を吸い込んだ可能性があると指摘した。

 判決によると、富山大の学生だった野村さんは1984~87年、ジーエル・本江(射水市)に雇用され、吉野石膏(せっこう)(東京)が製造、販売した石こうボードを切断する作業に従事。2011年に中皮腫を発症し13年1月に死亡した。


■妻の美雪さん「理解遅れている」
 「石綿による健康被害への裁判所の理解が追い付いていない」。提訴から3年半にわたり司法の判断を待った野村さんの妻、美雪さん(53)は、大雪の影響で遅れて東京地裁に駆け付け、弁護士から判決内容を聞いて歯がゆさをにじませた。

 石綿は吸い込んでから発症までに数十年の潜伏期間があり「静かな時限爆弾」とも言われる。吸引した事実を証明するには時間の壁が立ちはだかる。遺族側は野村さんが石綿を含む建材を扱っていたことを直接示す証拠を出せなかった。「事実上用意できない証拠を求める厳しい判決」(弁護士)に美雪さんは「長い時間を経て苦しみを与える石綿の特性をもっと考慮してほしかった」と訴える。

 アスベストユニオン(横浜市)によると、石綿による労災被害を巡る訴訟は、職場が一緒だったなど同じ立場の人や遺族が団結して起こす場合が多く、被害者1人の遺族だけで提訴するのは珍しい。美雪さんは自らの姿が、周囲に同じ境遇の人がいない被害者、遺族でも声を上げられるという希望になると考えている。

 「無念な思いをしている他の多くの人のためにも最後まで闘う。主人ならきっとそうすると思うから」

 一方、被告の内装会社は判決を受け「特にコメントはない」、建材メーカーは「現段階でのコメントは差し控える」とした。


◆アスベスト◆
 天然に産出する繊維状の鉱物の総称。耐熱、絶縁などの特性があり、国内で断熱材などに広く使われた。繊維を吸い込むと、肺や心臓などを覆う膜にできるがんの一種の中皮腫や肺がん、石綿肺などを引き起こすとされる。1970年代から製品製造や建物解体の現場で労災が問題化。発がん性の強い青石綿、茶石綿は95年に使用が禁じられ、残る白石綿も2004年に原則禁止となった。

北日本新聞社

最終更新:1/13(土) 12:24
北日本新聞