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荒れ果てた草原、夫婦で再生 全国から見学客 20年の物語、絵本に 熊本・阿蘇

1/13(土) 7:10配信

西日本新聞

 草原の維持が課題となっている熊本県阿蘇地方の荒れ果てた放牧地を、希少な草花が咲く丘に再生させた野草園がある。同県高森町の「花咲盛(はなさきもり)」。ある夫婦が数年がかりでよみがえらせ、全国から見学客を引き寄せたが、病気を機に管理を諦めた。十数年の活動を、仲間が絵本にした。伝えたいのは、夫婦の足跡と、阿蘇の自然のサイクルだ。

⇒【画像】和紙の貼り絵で仕上げた絵本「花咲盛」の原画

 夫婦は熊本市東区の宇野公子さん(73)と夫の教光さん(83)。1999年、高森町の山奥にあるすり鉢状の丘約10万平方メートルを購入し、自力で整備して2006年に野草園をオープン。そこを花咲盛と名付けた。

 「最初は見渡す限りのやぶでした」と公子さん。牛が放牧されていたのは半世紀ほども前。夫婦2人で伸び放題の草を刈り、木を切り倒し、復活させた草原には草花が芽吹いた。一度は好みの庭園にしようとチューリップを何千株も植えたが、植物学者に「阿蘇特有の花を生かすべきだ」と指摘され、全て引き抜いた。その後は自生する草花を大切にし、新芽を促すため春の野焼きも再開した。

「人生にいい時間を与えてくれた」

 春はサクラソウ、梅雨はハナシノブにノハナショウブ、夏はヒゴタイ、秋はリンドウ…。季節ごとに希少な草花が山道を彩った。観察を楽しむ人たちが全国各地から訪れ、野草園の管理費は活動に対する賛同者からの年会費で賄った。

 ところが、13年末に公子さんが脳内出血を発症し、活動は一時中断を余儀なくされた。約2カ月の入院を経て草刈りを再開したものの、左目がほとんど見えなくなる後遺症があり、山に通う頻度は減った。「けじめをつけよう」と管理を諦めることにした。後は、植物の調査をしながら夫婦との交流を深めてきた植物研究者に譲った。

 「大変だったけれど、山の草木と人々との出会いが、人生にいい時間を与えてくれた」と公子さんは振り返る。

 約20年にわたる夫婦の物語をまとめた絵本「花咲盛」(ブイツーソリューション発行)も、山を通じた出会いから生まれた結晶だ。活動を支援してきた高森町の長尾孝子さん(69)が阿蘇の自然を和紙の貼り絵で表現した。長尾さんは「阿蘇の草原を維持するには人の手が必要。野の花を守ってきた2人のことを知ってほしい」と話している。絵本は税込み972円。B5判、24ページ。書店で取り寄せられる。

西日本新聞社

最終更新:1/13(土) 7:10
西日本新聞