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[読書]安間繁樹著「西表島探検」 山歩き、必読の奥地紀行

1/13(土) 20:00配信

沖縄タイムス

 本書は1965年、「未知のヤマネコ発見」というニュースに衝撃を受けた当時20歳の大学生が初めて西表島に上陸して山を歩いて以来、西表島の不思議な魅力にとりつかれてしまった「西表島探検」の記録で、山歩きの最高のガイドブックだ。

 著者は大学卒業後3年間、西表島に滞在しイリオモテヤマネコ研究に青春の情熱を注いだ。85年からは国際協力機構(JICA)の海外派遣専門家としてボルネオ島に足かけ30年関わり16年間居住、動物調査や若手研究者の育成に尽力した人物である。そのような著者が60歳を迎え2005年から12年にかけて西表島の道なき山々を奥深く独りで歩いた。その驚くべき体力と気力に敬服するばかりだ。これから西表島の自然の研究を志す若い研究者には必読の奥地紀行として強く薦めたい。

 世界自然遺産登録に推薦されている西表島は海から眺めれば美しい山並みであるが、いざ奥深く足を踏み入れれば複雑怪奇、予測不可能な地形に出合い困難の限りを体験することになる。本書を読めばその複雑怪奇なありさまがリアルに記録され、手に取るように分かるだろう。

 冒頭から笹森儀助という人物が頻繁に出てくる。青森県弘前の士族でのちに青森市長を務めた人である。1893年明治政府の要請を受けた儀助は八重山の島々をくまなく歩いた。その記録は「南島探験」として出版されている。儀助は仲間川より御座岳へ登り仲良川へ下る横断を決行するなど西表島で一番難儀な行程を選んだ。著者があえて本書のタイトルを「西表島探検」としたのは「南島探験」とした笹森儀助の思いと重なり合っているのではなかろうか?  と私は思っている。

 旧知の仲でもある著者は一つ先輩であるがその活力に圧倒される。西表島に生まれ育った私にとって、山々を歩くことは生活そのもので当たり前のことであるが、これまで島外から挑戦した多くの研究者や大学探検部の中で、西表島の山々の奥深くまで歩いた人は著者が一番であろう。本書を手に多くの若者たちが西表島探検に挑戦することを期待したい! (石垣金星・西表をほりおこす会代表)

 【やすま・しげき】 1944年中国・内蒙古生まれ。東京大学大学院博士課程修了。世界自然保護連合種保存委員会ネコ専門家グループ委員。日本山岳会会員。「イリオモテヤマネコ 狩りの行動学」「熱帯雨林の動物たち」など著書多数

最終更新:1/13(土) 20:00
沖縄タイムス