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<トヨタ>プリウス大成功でEV出遅れの“ジレンマ”

1/14(日) 9:30配信

毎日新聞

 世界的に注目が集まる電気自動車。でも、日本の自動車メーカー、とりわけトップ企業のトヨタ自動車が電気自動車ブームに乗り遅れている感じがします。なぜなのでしょうか。環境経営コンサルタント、村沢義久さんが解説します。【毎日新聞経済プレミア】

 これからの自動車産業の方向を示す事件が起きた。2016年11月に日産自動車の「ノート」が、車名別新車販売台数で初めて首位に立ったのである。それまで首位だったトヨタ自動車の「プリウス」は3位に後退。1位奪取の原動力は、「ノート e-POWER」である。

 ハイブリッド車には、大きく分けて「パラレル」、「シリーズ」の2方式がある。「パラレル」方式では、エンジンとモーターが同時に(パラレルに)車輪を駆動する。対する「シリーズ」方式では、車輪を駆動するのはモーターだけであり、エンジンは発電して電気を供給するだけだ。主役はモーターであり走行性能的にも電気自動車(EV)と変わりない。

 「ノート e-POWER」はシリーズ方式。通常の発進はエンジンを停止したままバッテリーからの電力のみで行い、発進後はエンジンがかかり、発電しながら、その電気で走り続ける。

 ◇「プリウス」が完璧であるが故の悩み

 一方、「プリウス」は、基本的にはパラレル方式。通常はエンジンだけで走り、馬力の必要な時にエンジンとモーターの両方を使う。主役はエンジンでモーターは脇役だ。

 その「プリウス」を、外部から充電できるようにするプラグイン化した車が「プリウスPHV」である。PHVは「プラグインハイブリッド車」の略だ。確かに、「ガソリン車→ハイブリッド車→プラグインハイブリッド車→純粋電気自動車」は一つの流れだ。しかし、「プリウス」の場合はそう簡単ではない。

 問題は、エンジンとモーターの両方で最大出力を発揮する構造のパラレル方式では、モーターだけで走るEV走行時には出力が半減してしまうこと。さらに、エンジンを外して「プリウスEV」に進化させると、「プリウス」が誇る複雑で精巧な機構をほとんど捨てることになる。

 「プリウス」がハイブリッド車として完璧であるが故の悩み。これが「プリウスのジレンマ」だ。

 ◇下請けピラミッド構造のしがらみ

 トヨタ自動車の電気自動車での出遅れの理由として、巨大な下請けピラミッド構造とのしがらみがある。トヨタ自動車といえども、部品点数約3万点という自動車全部の技術を持つことは不可能。子会社やグループ企業から購入するのだが、その際に技術的なすり合わせが欠かせない。

 これは長い関係の上に構築されたプロセスであり、メーカーにとって重要な無形資産である。そのパワーが特に強大なのがトヨタ自動車。そして、そのすり合わせ技術の多くがガソリンエンジンに基づいたものだ。

 トヨタグループの代表格企業はデンソー。前身はトヨタ自動車の開発部門であり、1949年に日本電装株式会社として創業している。売り上げは4兆3000億円に上る。

 ◇エンジンがなくなる日

 問題はその主要製品の中に、エンジン関係の部品や機器が多いこと。それらは、冷却機器(ラジエーター、冷却ファン、インタークーラー、オイルクーラー等)、エンジン機器(点火コイル、マグネット、ディストリビューター、点火プラグ、排気センサー、燃料噴射装置)などだ。EV時代になると、これらの機器は全て要らなくなる。

 トヨタグループのアイシン精機も同じ。売り上げ約3兆円で、主な製品の中に、エンジン関連やトランスミッションが含まれる。特に世界トップレベルと言われるオートマチックトランスミッション(自動変速機)が無用になれば、それは痛い。この2社の下に、さらに「デンソー系」「アイシン精機系」といった子会社や関連会社群があり、その下にさらに下請けや孫請け企業が延々と連なる。

 大きくなり過ぎた恐竜は小さな哺乳類に変身することが難しい。それが、今日のトヨタ自動車の姿である。

最終更新:1/14(日) 9:30
毎日新聞