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フライングのルールが変わる?飛躍的に精度向上、時の計測が突きつけた新課題

2/12(月) 10:00配信

THE PAGE

 平昌五輪が開幕し、熱戦を繰り広げています。会期中、メダルと同じくらい注目を集めるのが、どんな記録が誕生するかということです。国内では昨秋、桐生祥秀選手が100メートル走で日本人初の9秒台を記録、そのタイム「9秒98」は昨年の新語・流行語大賞の特別賞となるなど話題になりました。

 こうした正確なデータを計測するため、どのような工夫がなされてきたのか。そして計測技術の向上は、競技ルールにどんな影響を与えてきているのか。時の研究家、織田一朗氏が連載第4回「フライングのルールが変わる?」を執筆します。

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飛躍的に進歩したスポーツ計時

 今日のスポーツ競技には、計時(タイムなどの計測)が欠かせない。科学の力による正確さ、公正さを導入することで、「速さ、強さ」を客観的に判定できるからだ。また、同じ会場にいないアスリートとの比較や、過去のアスリートの実績との照合も可能になる。

 しかし、当初は時計がスポーツの速さについていけず、満足な計時ができなかった。だが、クオーツ技術、電子技術を取り入れることで飛躍的な進歩を遂げて完成の域に達し、今ではスポーツ自体をも変えようとしている。

 ギリシャの古代オリンピックでは、競技の結果は順位をつけるだけだった。1896年の第1回近代オリンピックでは5分の1秒単位で計測可能なストップウオッチが使われたが、記録はあくまでも参考程度だった。時計への信頼が十分でなかったのと、計時方法が確立していなかったからだ。

 オリンピック憲章の「より速く」「より高く」「より強く」の標語は1920年の第7回のアントワープ大会から使われたが、このころから、人々は勝敗や順位だけでなく、記録に対しても関心を払うようになった。

 1964年に東京で開催されたオリンピックで、SEIKOは初めて五輪の公式計時を担当したが、全自動でスタートからゴールまでを100分の1秒単位で計測する電子計時システムを完成させた。スターターのピストル音をマイクロフォンでひろって時計が動き始め、ゴール線上に設置したカメラで全選手のゴールの瞬間を撮影し、タイムが刻み込まれたフィルムに再現する仕組みだ。水泳競技ではタッチ板を導入し、波や水しぶきが舞って判定のしにくいゴール付近でのタッチの有無を含めて、正確な計時を行った。

 その結果、オリンピック史上初めて、選手から計時に関するクレームのない計時が実現し、今日の計時技術の基礎を築いた。国際陸上競技連盟は、さらに慎重な検討と検証を重ね、1976年に「記録の単位を100分の1秒に改正すること」「記録は電気計時による測定のみを公認とすること」を決定し、スポーツ競技は電子計時の時代を迎えた。

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最終更新:2/19(月) 11:43
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