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飲食を絶ち、自ら死期を早める患者たち

1/18(木) 6:03配信

BuzzFeed Japan

(この話に登場する人物にモデルはいますが、仮名を使うなどご本人とわからないように詳細は変えて書いています)

医師は誰しも過去に苦々しい経験をしています。もちろん私にも、どうしても忘れられない出来事があります。

それは、外科医のように上手くいかなかった手術や、内科医のように病気を見過ごしてしまった出来事ではありません。以前働いていたホスピスで、患者の死に加担してしまったのかもしれないという疑念を、今もずっと振り払えないでいるのです。

自分で飲み食いを止めて死期を早めた患者のことです。
【寄稿 新城拓也・在宅緩和ケア医 / BuzzFeed Japan Medical】

ホスピスに入院してきた末期がんの患者

ホスピスでは毎日のように末期のがん患者が亡くなっていきます。医師である私は、患者が苦痛なく最期の日が迎えられるように、できる限りの治療をしてきました。

「緩和ケアは死を早めたり、引き延ばしたりしない」ように治療、ケアにあたるのが、ホスピスで働く上で大切なことでした。無理な延命治療で、患者の苦痛を長引かせてはなりません。また反対に、患者に請われたとしても、患者の死を早めるような治療してはなりません。

私も一人で患者と向き合えば、判断を誤ることもあるでしょう。しかし、私の働いていたホスピスでは、私の他にも医師(上司)がおり、多くの看護師も患者のケアに当たっていました。病室の中で、私と患者が決めたことであっても、必ず他の医師と看護師に周知し、治療とケアを絶えず見直していました。

しかし、もう10年も前に出会ったタカシさんの治療は、当時の私の知識や経験ではどうしたら良いのか分からない迷宮に入り込んでしまいました。

タカシさんは、肺がんのためホスピスに入院しました。既に子供さんも独立し70才を超えたタカシさんは、奥さんと2人で暮らしていました。穏やかな口調で話す方でしたが、自分の考えをきちんと持っている方でした。

ホスピスに入院してからも、きちんと座って話もでき、食事も自分で食べていらっしゃいました。奥さんが毎日病室に来て、自分の作ったおかずを差し入れていました。

幸いタカシさんの痛みは、薬で十分に抑えることができました。自分で、肺がんであること、既に治る見込みがないことをご存じでした。そして、今後病状は悪くなり、近い将来亡くなることも予感されていたのです。

それでも、ホスピスに入院してからは、

「家に居るときは、今後どうなっていくのか不安でたまりませんでした。ここに来てからは、いつも見守ってもらえているような気持ちになれてほっとしています」と話し、奥さんも、「私一人、どうやって家で看たら良いのか、ずっと不安でした。ここで機嫌良く過ごしているので安心しています」と話していました。

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最終更新:1/18(木) 17:20
BuzzFeed Japan