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老夫婦の異変、誰も気付けず アパートに遺体、負担増す民生委員

1/18(木) 11:12配信

福井新聞ONLINE

 福井市の市街地にある古い木造アパートの一室で昨年10月、住人の高齢夫婦とみられる遺体が見つかった。死後1カ月ほど経過していたとみられる。近所の住民によると、夫婦は町内会に入っておらず近所付き合いは希薄。民生委員の訪問は途絶え、在宅福祉サービスや介護保険サービスも利用していなかったとみられる。高齢社会で民生委員の負担が増す中、夫婦の異変は地域や福祉の網に掛からなかった。

 ⇒増え続ける高齢世帯数

 昨年10月2日午前、アパートの一室から「異臭がする」と住民が110番通報した。警察官が室内に入ると2人の遺体があり、扉の郵便受けから玄関に落とされた、読まれていない新聞がたまっていた。規制線は張られず、警察は日中のうちに室内の捜査を終えて引き揚げた。事件性を疑わせるものはなかったとみられる。

 複数の住民の話を総合すると、夫婦は70歳を超えており、妻は足が悪く、夫が自転車でドラッグストアに食材を買いに行っていた。夫婦を訪ねる人はほとんどなく、安否確認を兼ねて飲み物などを配る市の在宅福祉サービスや、デイケアなどの介護保険サービスを利用している様子もなかったという。

 住民の多くが「交流はなかった」と話す中、50代の女性は食べ物をお裾分けするなどして夫婦を気に掛けていた。8月下旬に扉をノックしたときは返事がなく、出掛けていると思ったという。「振り返ってみると、それ以降姿を見かけなかった。何で気付いてあげられなかったのか…」とショックを受ける。

 ■重くなる負担

 福井県の調査によると、右肩上がりを続ける高齢単身や高齢夫婦の世帯数は、昨年4月1日時点で6万9717世帯。一方、高齢者宅を訪れて状況を把握する民生委員の定数は16年12月時点で1852人。平均すると1人が37世帯を担当する計算になる。

 高齢世帯は2012年から5年間で約1万5千世帯増え、総世帯数の4分の1近くに達しているが、民生委員の定数は総世帯数に応じて決まるため、一人一人の負担は重くなっている。民生委員自体の高齢化も進んでいる。

 先の高齢夫婦のケースでは民生委員の訪問が途絶えていた。アパートがある区域を担当する女性は「かつては訪ねていたが、あるときを境に拒まれるようになった」と話す。市からは担当区域内の単身高齢世帯や高齢夫婦世帯のリストが渡されるが「すべてを回るのはとても無理。最近は80歳以上の世帯に絞って訪問するようにしていた」と打ち明ける。

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