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銀色の鉄道車両、なぜ増えた? そのメリットと塗装離れの背景

1/23(火) 6:20配信

乗りものニュース

コストが掛かる鉄道車両の塗装

 JRや特に首都圏の私鉄では、銀色のボディに色テープを貼った車両を多く見ることができます。そのため鉄道にあまり興味ない人が見たら「会社や色が違うだけでどれも同じ電車」に見えてしまうことでしょう。

【写真】鉄道車両の塗装ブース

 かつて車体に色を塗っていた鉄道車両が、ここ20年ほどでなぜ、銀色ばかりになったのでしょうか。

 銀色の鉄道車両の多くは、ステンレス(ステンレス鋼)、もしくはアルミ(アルミニウム合金)でできています。ステンレスは「stain(さび、汚れ)がless(少ない)」という意味で、さびにくい金属です。

 これまで車体を塗装していた理由のひとつに「さびを防ぐ」というのがありました。しかし塗装は、パテを塗って表面を整え、色を塗って乾かして、2色以上塗るならさらにマスキングをして色を塗ってまた乾かして……という作業が必要で、時間と手間がとても掛かります。

銀色には大きなメリットがある

 塗装を省略できれば、検査日程を短縮できます。鉄道車両は乗客を運んで初めて利益を生むものですから、ステンレス車両の塗装省略は、鉄道事業者にとって大きなメリットなのです。

 また、鋼鉄の車両はさびることを見越して板を厚くしていますが、さびないのであれば板の厚みを減らしても問題ありません。板を薄くして軽量化すると、走行に要するエネルギーを減らせて経済的というわけです。

 アルミは鉄に比べて強度が低いため、ステンレスのように板を薄くすることは難しいのですが、鉄と比較すると比重は1/3ほどであるため、ステンレス以上に軽量化のメリットがあります。さびについてもステンレスと同程度には強くなっています。

 ただしアルミは空気と反応して表面が変色することがあるため、銀色に見えても透明の塗料で塗装している場合があります。

 鋼鉄に比べてメンテナンスが楽になり、さらに軽量化できるとなれば、経済性を重視する通勤電車が銀色になるのは必然というわけです。

「銀色」のメリットと見栄えを両立する秘策

 銀色の車両が経済的であることは分かっていながらも、あえて車体全体を塗装している鉄道事業者も少なくありません。

 たとえば関西の阪急電鉄は、開業以来の伝統色であるマルーンを会社のイメージカラーとして大事にしており、アルミの車両にもつやのあるマルーン塗装を施しています。このほか京阪電鉄、近鉄でも銀色の車両は1両もなく、アルミなどであっても車体に塗装を施しています。

 関東でも京急電鉄が、新造車両としては11年3か月ぶりに、新1000形電車17次車に全面塗装を施しました。これまで、アルミ車両やステンレス車両の新1000形は赤や白のフィルムを貼った車両もありましたが、京急電鉄は「“京急らしさ”を取り戻すために、あえて全面塗装を復活させます」としており、同社が「赤い電車」を自社のブランドとして意識していることがうかがえます。

 一方、すでに車体の塗装設備を廃止していた東京メトロは、2012(平成24)年、銀座線の新型1000系電車を鮮やかな黄色でデビューさせました。塗装設備を復活させずに色付きの電車をどうやって登場させたのでしょう。

 その答えは「カラーフィルム」です。アルミの車体全体をカラーフィルムでラッピングして塗装の代わりとしています。

 この手法は技術の進歩により大面積のフィルムを作れるようになったために実現したもので、印刷しだいでは、塗装では工程的にできないようなデザインも可能です。

 また、一部のステンレス車両は、前面のみを繊維強化プラスチック(FRP)や鋼鉄で造り、そこだけ塗装をすることで個性を出すことも行われています。ステンレスは曲げ加工や溶接が比較的難しいため、複雑な造形だったり、万一の事故で変形するなどの可能性があったりする前面部分は、FRPや鋼鉄で造った方が理に適うためです。

 このように、数を増やしている銀色の鉄道車両も、いろいろ工夫を凝らしています。

児山 計(鉄道ライター)