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「サイレント・ベビー」の真実

1/24(水) 12:04配信

BuzzFeed Japan

サイレント・ベビーという言葉をご存じですか?

赤ちゃんがなにかを訴えて泣いているのに母親がすぐに対応しないと、なにも要求しない子になってしまうというあれです。

ママサイトがたくさん取り上げているこの育児論を小児科医の立場から検証します。
【寄稿 森戸やすみ・小児科医 / BuzzFeed Japan Medical】

医学用語ではない、サイレント・ベビー

サイレント・ベビーとは小児科用語集や児童青年精神医学用語集に載っているような医学用語ではなく、1990年に小児科医の柳澤慧氏が考案し著書で発表した言葉です。

”表情が乏しく、発語も少ない静かな赤ちゃんを私は「サイレント・ベビー」と名づけましたが、このサイレント・ベビーという言葉は、医学用語でも育児用語でもありません。(中略)育児の上での環境、とりわけお母さんとのかかわりあいが、大きく影響します。”

(『いま赤ちゃんが危ない サイレント・ベビーからの警告』より)

その後、国内の論文検索サービス「医中誌Web」で確認する限り、他の小児科医や内科医ら2人が、母親のストレスのためにサイレント・ベビーや「うつ状態」になる赤ちゃんが日本で増えていると述べています。

テレビやテレビゲームを子どもに見せることや母親がウォークマンをつけて育児をすることがいけないとしているものの、因果関係を示す統計や調査を載せているものはありません。

以前、朝日新聞の医療サイト「アピタル」でママサイトのサイレント・ベビーについて少しふれたところ(子どもが泣き止まない)、泣かせないように、赤ちゃんが放って置かれたと誤解しないように大変な努力をしているお母さんがTwitterに投稿をしていました。

サイレント・ベビーが医学用語じゃないことに驚き、だとしたら彼女の今までの努力はなんだったんだろうという内容でした。

「サイレント・ベビー」を掲載してしまうママサイトの問題

しかし、妊娠・出産・育児情報などを扱うママサイトにはサイレント・ベビーについての記事が数多くあります。

赤ちゃんを泣かせっぱなしにすることによって、サイレント・ベビーになり将来はとんでもないことになってしまう、と母たちの不安を煽っています。医学的に根拠や因果関係のあるものでないとは明記せず、必要な育児情報であるかのように書かれていることは大変問題です。

例えば、「マーミー」の「サイレントベビーの特徴とママが知っておくべき予防法」という記事にはこう書かれています。

”(サイレントベビーは)将来的に問題行動を起こしたりひきこもりになったりする可能性が高いといえます。

周りの評価ばかりを気にするあまりに、自分の意思を持たない大人になってしまう可能性が高いため注意が必要です。”

「イケメン保育士が贈る新米ママの成長記」の記事「うちの子「サイレントベビー」かも...と悩んでいるママへ」も脅し文句が並びます。

”(サイレント・ベビーは)もしかしたら乳児期の人見知りが生涯続くかもしれませんし、我慢・忍耐力が欠如し家庭内暴力に手を染める子供になるかもしれません。集団生活に馴染めなく、いじめや登校拒否の可能性も”

BABYRINA(ベビリナ)の「サイレントベビーにしないための愛情たっぷりの子育て方法」はどうでしょう。

”自分が自分であることに自信を持てなかったり(自己肯定感が低い)、親から見放される不安が強くて、気を引くような異常行動ばかりを起こしたりする場合もあります。”

怖いですね。ママズアップの記事「赤ちゃんが泣いても放置するとサイレントベビーの原因に」も同様です。

”サイレント・ベビーと言われた子が成長したら…

自分に関心を持ってもらえなかったことから、自分に自信が持てず、大人しい子になったり、周囲に対しての興味がない、無気力、引きこもり…そんな風になってしまうのではないかと言われています。

また、言葉の遅れなどから発達障害があらわれることもあるそうです。”

これらの記事のように原典にないことを付け足すのがママサイトの特徴です。だんだん尾ヒレが長くなっていくのです。

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最終更新:1/24(水) 19:27
BuzzFeed Japan

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