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【舛添要一の僭越ですが】 人生80-90歳時代 年金・住宅の制度変更を

1/24(水) 12:05配信

ニュースソクラ

小手先の解決策では、追いつけない

 前回、2040年には全世帯の4割が一人世帯になるという人口推計を取り上げ、町作りや社会保障、ビジネスのあり方に大きな改革が不可欠なことを力説した。

 この人口推計の前提には、日本が急速に超高齢社会へと進んでいることがある。2016年の日本人の平均寿命は女性が87.14 歳、男性が80.98歳である。前年に比べて、女性は0.15歳、男性は0.23歳伸びている。

 厚労省が統計を取り始めたのは、1947年であるが、当時の平均寿命は、女性が53.96歳、男性が50.06歳であった。まさに、「人生50年」という時代だったのである。

 経済成長、公衆衛生の向上、医療の進歩などのおかげで、その後、日本人の平均寿命は右肩上がりに伸び続けた。戦後70年で、約30歳伸びたことになる。この趨勢が続けば、2065年には、女性が91.35歳、男性が84.95歳になるという。

 いま高齢者というと、65歳以上の人を指し、年金の受給開始年齢は65歳である。2016年生まれの人が、その65歳まで生存する可能性は、女性が94.3%、男性が89.1%である。また、女性の半数、男性の4分の1が、90歳まで生存する。

 大まかな言い方をすれば、現在、女性は「人生90年」、男性は「人生80年」の時代である。つまり、サラリーマンは、定年退職後15~20年間は生き残る。その間の生活保障はどうするのか。高齢化に伴って医療や介護の必要性は増してくる。年金だけ十分ではないから、老後に備えて貯蓄に励む。消費が伸びないのは当たり前で、デフレは終わらない。

 「人生50年」時代に始められた様々な制度が、今や超高齢社会に適応できなくなっている。早急に改革していく必要がある。今週、二分野で、政府による改革の検討が始まった。

 第一は、年金受給開始を70歳超に先送りできる制度の検討である。受給開始を標準年の65歳より後にすると月当たり0.7%ずつ増額、逆に早くすると月当たり0.5%ずつ減額されるが、この制度を70歳超まで拡大し、増額率もさらに大きくするという案である。政府は、これにより高齢者の就業が促進されることを期待している。

 これは改革の小さな一歩にすぎず、終身雇用制度と年功序列賃金によって成立してきた日本的経営そのものを、今や抜本的に変えなければならなくなっている。終身雇用・定年退職・退職金は現役賃金を低く抑える効果があったし、年功序列賃金は能力以外の要素を考慮する制度であった。

 しかし、健康な限り働く制度に移行するのなら、賃金体系は能力を基準にするものにし、退職金は廃止して、その分を賃金に組み込む改革が必要である。

 第二は、遺産分割に関する民法改正である。遺産分割の際に、配偶者が自宅に住み続けることができる配偶者居住権の創設が検討されている。これにより、所有権が他人に移っても住み続けることができる。また、居住権を実際の不動産評価額(所有権)よりも安く設定すれば、預貯金などの取り分が増える。

 どのような遺産分割を望むかはケースバイケースであり、広大な家屋に一人で住むことのマイナス(管理の手間と経費)を考えれば、売却して現金化するほうが良いのかもしれない。しかし、今や不動産が「負動産」となる時代であり、売却も不可能で、空き家ばかり増えている現実がある。

 法制審議会の今回の要綱案は、配偶者と死別した後も長年生き続けるという超高齢社会の現実に対する一つの解決策を提示したものであるが、「負動産」に象徴される現実に追いついていないのではあるまいか。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:1/24(水) 12:05
ニュースソクラ