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小中学生のワクチン集団接種 をやめたら、インフルエンザ で亡くなるお年寄りが増えた。なぜ?

1/27(土) 11:40配信

ハフポスト日本版

■集団接種は幼児やお年寄りにも影響を及ぼしていた

小中学生の集団接種の停止は、接種を受けた小中学生だけではなく、もっと小さい幼児やお年寄りにも影響を及ぼしていたのだった。

2001年、米医学誌に、日本で子どものインフルエンザワクチンの集団接種が続いていた間と、やめた後の年寄りの死亡率を日本とアメリカで比べた研究が載った。

子どもへの集団接種が始まると、インフルエンザで亡くなるお年寄りの数(超過死亡)は減った。お年寄りの数自体は増えていたのに、だ。だが、集団接種がなくなったあたりから再び増えた。

グラフ(写真3)を見ると、それが一目瞭然だ。日本では、ワクチンの集団接種率(棒グラフ)が高かった時期、肺炎やインフルエンザで亡くなる人の割合(折れ線グラフ)は下がっていた。88年に希望者のみの集団接種、そののち94年からの任意接種で接種率が極めて低くなったあたりから増え始めた。アメリカのそれと比べて、対照的だ。

この研究からは、子どもにワクチンを打つことが、子どもたち自身の発症や重症化を抑えていただけでなく、インフルエンザで亡くなることの多い高齢者の発症をも抑える役割を果たしていたことが分かる。

研究によると、日本での小中学生にインフルエンザワクチンの集団接種が、年間約3万7000~4万9000人の死亡を防いでいたという。言い換えると子ども420人への接種で、死亡者が1人防いでいたということを意味する。

研究で示唆された、小中学生への集団接種が、社会のほかの集団にも与える影響は「間接予防効果」(集団免疫)と呼ばれ、各国のインフルエンザ対策に大きな影響を与えた。

一定割合の集団にワクチンを打つ取り組みを続ければ、それは接種を受けた本人や集団に免疫をつけるだけでなく、やがてその社会全体に免疫をつけることになるのだ。

そのことを説明している図がある=写真4。

誰もワクチンを打っていない集団だと、インフルエンザのような感染症は集団にあっという間に広がる。ワクチンを打って免疫がついた人たちも多少いれば、その広がりはワクチンのない世界よりは鈍る。

さらにほとんどの人がワクチンを打って免疫を付けている集団ならその間で感染する人はぐっと低くなる。免疫のない人たちと感染した人たちが接触する機会がぐっと減るからだ。

皮肉なことだが、日本では集団接種をやめた後に、初めて集団接種でもたらされる「社会の免疫」が実感されるようになり、一方で海外で集団接種に進めるきっかけになったのだ。

いま、日本のインフルエンザワクチンは、定期接種の対象になっている高齢者らを除き、任意接種なので、医療機関で打つと1本3500円前後する。ワクチンを打った人は確実にインフルエンザにかからないという訳ではないし、一人一人がうがいや手洗い、人混みを避けるなどの予防策を講じることはもちろん大事だが、集団接種という取り組みが、社会全体に「免疫」を与え、インフルエンザの大流行を抑えていたという点も、覚えておきたい。

錦光山雅子/ハフポスト日本版ニュースエディター

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