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あなたも他人事ではない?相続問題で備えるポイントは「家族信託」

2/1(木) 8:30配信

ファイナンシャルフィールド

近頃よく耳にする「家族信託」ですが、仕組みは少々複雑です。事例を見ることで、どのように使うのか、またどのような人が利用すると良いのかを知ることが出来ます。注目されている理由を一緒に考えてみましょう。

家族信託は、このような制度です

家族信託は「信託」とあるように、財産を信じて託す人(委託者)と託される人(受託者)、さらに収益を受取る人(受益者)が登場する制度です。賃貸アパートを持つAさんの例を見てみます。Aさん(75歳)は年金とアパートの家賃収入で暮らしています。この頃アパートの管理を続ける自信がなくなってきています。

出来れば息子に任せたいのですが、アパート自体を譲ると贈与税もかかりますし、自分の家賃収入がなくなることも気がかりです。そこで以下のような家族信託を考えます。

委託者:Aさん(賃貸アパートを、息子を信じて託します)
信託財産:賃貸アパート
受託者:息子
受益者:Aさん(家賃収入はこれまで通り得ることが出来ます。)

家族信託の契約を交わすことで、Aさんはアパート(信託財産)の管理や運営は息子に託し(Aさんから見れば委託、息子さんから見れば受託)、収入は得る(受益)ことが出来ます。アパートの運営や管理、つまり不動産会社とのやり取りなどは息子さんが行います。もし売却することになった場合は、その判断は息子さんがしますが、売却による手取り収益はAさんのものになります。

信託の終了要件をAさんの死亡、信託終了後の残余財産帰属権利者を息子にしておくと、Aさんの死後アパートは息子が引き継ぐことになります。

また受益者を第一受益者、第二受益者…とすることもできます。第二受益者を妻に設定し、終了要件を「AさんおよびAさんの妻」としておくと、Aさんの死後、家賃収入は妻が得ることが出来、妻も亡くなると息子に引き継がれます。

持っている不動産が自宅だけなら関係ない?

事例をみても「わざわざ家族信託をする必要はあるのかな」と思われるかもしれません。今は大丈夫でも、Aさんが高齢になって認知症になった場合はどうでしょう。

判断能力が低下してしまうと、賃貸借契約を結ぶことやリフォーム工事の指図など、運営管理が出来なくなります。こうなってしまうと、自分の財産であるのに自分だけでなく家族も、自由に管理や運営、処分が出来なくなります。

賃貸不動産を持っていない場合はどうでしょう。

持ち家の自宅に住むBさんの例です。子どもは別に暮らしています。日頃から将来は子どもと同居せず、自宅を売却して施設に入居することを希望しています。Bさんが認知症になった場合、自宅を売却して施設の入居費用に充てることが簡単ではなくなります。

このような場合は、成年後見制度を利用することになります。家族が家庭裁判所に法定後見人を立てる申し立てを行います。家族が後見人になることも出来ますが、家庭裁判所の判断が必要となります。諸々の手続きの後、自宅の売却となりますので、施設に入居するまでに時間がかかってしまいます。

「認知症になったらどうしよう」という心配は、誰もが抱えています。“信託しておいた方が良いかも”という財産がある場合は、家族信託に詳しい司法書士などに相談してみては如何でしょう。

Text:宮崎 真紀子(みやざき まきこ)