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米国の北朝鮮攻撃計画「鼻血作戦」は本当か、嘘なのか

2/7(水) 15:01配信

ニュースソクラ

駐韓米大使内定取り消しの教授が「巨大な危険」と批判

 いま、韓国のマスコミで大論争になっている問題がある。米国が秘密里に北朝鮮への奇襲計画「鼻血作戦」(Bloody nose)を作成し、平昌冬季五輪後に実行するのではないかというのだ。一体どんな内容なのか。

 この聞き慣れない単語がおおやけになったのは、昨年12月20日のことだ。英国の高級紙・ザ・テレグラフが特ダネとして伝えてからだ。

 それによれば、米国は北朝鮮への限定的な攻撃を検討している。北朝鮮の核プログラムを止めることに真剣になっていることを伝えるためだ。ただし、この計画については、ホワイトハウス内で反対も多い、としていた。内容は今ひとつはっきりしていなかった。

 ここに来て、再び脚光を浴びることになったのは、空席のままになっていた駐韓米国大使の人事をめぐってだった。

 このポストには、北朝鮮研究で知られたジョージタウン大学のビクター・チャ教授が内定しており、韓国政府からのアグレマン(同意)も取り付けていた。ところが今年に入って、突然この人事が白紙化された。

 韓国の新聞は、「アグレマンまで出た人事が白紙化されるのは極めて異例」と驚きを持って報道した。その理由が明らかになったのは、1月30日にチャ氏本人が行った米紙、ワシントンポストへの寄稿だった。

 「鼻血作戦は、アメリカにも巨大な危険をもたらす」という内容で、たとえ部分的攻撃であっても、反撃してくる可能性がある。韓国に住む23万人、日本にいる9万人の米国人はもとより、韓国人も危険にさらす、と強い調子で批判した。

 また、北朝鮮に対する奇襲攻撃の前提は「統制不可能な金正恩が米国の強大な力にひざまずくということだ」。しかし、「金正恩が米国の空襲に驚いて、合理的、理性的に屈服すると考えるのはナンセンス」とも指摘していた。

 チャ氏はニューヨーク生まれの韓国系米国人。ブッシュ政権で、国の重要な安全保障政策を決める大統領直属の諮問機関、国家安全保障会議(NSC)のメンバーに選ばれ、平壌に行ったこともある。

 対北強硬派の1人とされていた。鼻血作戦については、赴任直前に説明を受けたと推測される。

 この人事取り消しで、韓国のメディアが一斉に報道を始めた。

 各社のワシントン発の記事を総合すると、鼻血作戦は、北朝鮮の核・ミサイル能力を奪う大がかりな攻撃ではない。あくまで米国の攻撃力や、本気度を示す奇襲攻撃だ。

 具体的には北朝鮮国内の象徴的な場所数カ所を電撃的に叩く。そして相手の戦意を喪失させる。

 つまり、相手の鼻を突然殴りつけて、驚かせ、相手の戦意を喪失させるというのだ。

 何の前触れもなく、ステルス戦闘機数機が、北朝鮮の領内に侵入して、爆撃を行い、そのまま帰還する。地上部隊の派遣もない。米軍にとっては、北朝鮮のレーダー網を破るなど簡単なことであり、危険も少なく、いつでも実行可能な作戦だ。

 爆撃候補地としては、北朝鮮の核実験場、ミサイル発射基地、潜水艦建造基地などが候補に挙がっている。非軍事的な場所が選ばれる可能性もある。1968年に拿捕され、その後平壌市内の川に係留されている米国の情報船、プエブロ号もその1つだという。

 精密攻撃だけでなく、EMP弾、マイクロウェーブ弾といった最新の爆弾を北朝鮮の上空で爆発させ、ミサイルの電子回路を不能にすることも検討されている。

 北朝鮮の弾道ミサイルの発射が相次いだ昨年夏から検討が始まり、年末にまとまったという。

 しかし、チャ氏の言うように、北朝鮮は鼻先をいきなり殴られて、黙って引き下がるだろうか。後先を考えず、猛烈な反撃を行ってくるかも知れない。

 軍事施設を破壊された場合には、反撃の度合いはさらに激しくなるだろう。あまりにも楽観的な見通しに立った作戦といえよう。

 これに対して、ホワイトハウスは「いままで誰も鼻血作戦などという単語を使った人間はおらず、全くの虚構だ」と打ち消しに躍起になっている。

 チャ氏の人事取り消しについても「チャの個人的理由」と説明しているが、ここまで具体的に報道されていて、全くの虚構と考えるのは難しい。

 奇襲作戦なので、あくまで否定するしかないのだろう。

 もちろんホワイトハウス内も、鼻血作戦を実行に移すことに反対の意見もあり、内部で対立状態が続いているという。あとは、トランプ大統領がどう決断するかにかかっている。

 9日から始まる韓国の平昌冬季五輪、パラリンピックは3月18日で全日程を終える。この日付をにらんで、作戦実行に向けた最終の検討が行われるだろう。

 韓国メディアは「米政府内には、戦争危険を冒す価値がある。自分たちの土地で人が死ぬより、遠い場所で死ぬ方がよりましという論議がある」と紹介し、「米国の同盟国である韓国の犠牲を無視してでも北朝鮮を攻撃するというのは、傲慢このうえない」(ニュースサイト・ノーカットニュース)などと、怒りを伝えている。

 安倍晋三首相は、北朝鮮政策については完全に米国追従だが、この戦略は日本にも被害をおよぼす危険性がある。

 本当に米国が北朝鮮への奇襲攻撃を考えているのか、確認する義務があるだろう。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にした。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:2/7(水) 15:01
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