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米州議会、遺伝子組み替え農業の除草剤を禁止に

2/8(木) 17:04配信

ニュースソクラ

米アーカンソー州議会がモンサントにストップ

 ある除草剤の利用を認めるか認めないかが、米国で議論を巻き起こしてる。背景には、従来の除草剤では駆除できないスーパー雑草の広がりがある。

 新しい商品でやっかいな雑草問題の解決を進めようとする企業側と、周辺の畑に悪影響を与えると主張する農家側との対立が深刻になっている。

 「異議なしと認めます。それでは次の議題にいきます」。米アーカンソー州の議会法務協議会は1月19日朝、わずか数秒で州の農業関係機関が答申した除草剤ジカンバの使用禁止を正式に決めた。州内の農家は、4月16日から10月末まで遺伝子組み換え(GM)でジカンバ耐性を持った大豆と木綿の畑でこの除草剤を散布できないことになった。

 ジカンバそのものは古くからある農薬だ。日本でも農薬登録がある。ところが、2016年からモンサント社などがジカンバ耐性のGM大豆、木綿種子とのセット販売を始めたところ、問題が生じた。作物そのものは耐性があるため、頭の上からジカンバを掛けられても生育は続ける。畑の雑草だけが枯れるという仕組みだ。除草効果は非常に高いことがわかった。

 しかし、ジカンバは揮発性が高い。思わぬ飛散によって周辺の畑で被害が各地から報告された。耐性のない大豆、木綿だけではなく他の作物で「葉が枯れて収量が落ちた」などの苦情が相次いだ。ミズーリ大学の研究者によると、昨年、全米で2700件、150万ヘクタールでジカンバによる悪影響が出た。

 ジカンバを使った農家と周辺農家との深刻な摩擦も引き起こした。そこで被害が目立つアーカンソー州が、被害を受けた農家の声を受け、作物生育期の使用を禁じる措置を決めたわけだ。

 一方のモンサント社は、同州の決定に反発し、訴訟で阻止する動きだ。同社によると、「GM種子と併せて低揮発性のジカンバも開発した。農家など5万人を対象に使い方の研修をしてきた。散布方法を守れば周辺への悪影響は抑えられる。アイオワ州など主要産地では(被害などの)問い合わせは少ない」(日本モンサント)という。農家が指導に反して揮発性が高い古いジカンバ製品を使ったことが被害の主な原因という立場だ。

 アーカンソー州の農家の中にも、「ジカンバを利用したい」という声はある。20年間使われてきた除草剤のラウンドアップで枯れないスーパー雑草が各地にはびこってきたからだ。除草剤耐性の遺伝子を組み込むGMは、作物以外の雑草を根こそぎ退治できるため、米国の農家にとって欠かせない技術として定着した。全米のトウモロコシ、大豆の大半がこの技術で生産されている。

 ところが同じ除草剤の使用を重ねたことで、雑草側が耐性を獲得してしまった。全米各地で数年前から作業に支障が出てきたため、農家にとって、スーパー雑草にも効果があるジカンバの利用は魅力的と映る。

 農薬の飛散被害は、昔からある問題。事態がこじれた一因は、モンサント社などが、販売を急ぎすぎ、普及のための十分な時間を割かなかったことにあるように見える。大学の農薬、作物研究者らが、情報開示に不熱心な同社などへの不信を強めていると地元メディアは伝えている。

 同じ除草剤に頼りすぎると、次から次へとスーパー雑草が生まれるのは宿命でもある。ジカンバも例外ではない。抗生物質が効かないスーパー細菌が、人類を脅かすのと同じ構図だ。

 雑草を持続的にコントロールするには、除草剤だけではなく、輪作や機械を使った除草などさまざまな手法を組み合わせるのが本筋だ。今回の「ジカンバ騒動」が、長い目で見た農作業のあり方を考えるきっかけになるとすれば、悪い話ではない。

最終更新:2/8(木) 17:04
ニュースソクラ