ここから本文です

印市場好調のスズキ快走 トヨタとの確執越え…最高益更新に投資家も注目

2/12(月) 7:15配信

SankeiBiz

 成熟した業界で競争も厳しく、飛躍的な成長が難しい自動車業界で昨年、株価が6割近く上昇した大手メーカーがある。市場拡大が続くインドでの販売好調が、投資家から高く評価されているスズキだ。電気自動車(EV)への対応が課題だが、インドではトヨタ自動車と組んで投入する計画も打ち出した。金融市場の不安定化で足元の株価は軟調だが、今月5日に発表した2017年4~12月期連結決算では、売上高と各利益が過去最高だった。“快進撃”が続くか注目される。

 ◆課題はEVへの対応

 国内自動車大手の17年末の株価を1年前と比べると、4.9%上昇したトヨタなどプラスが4社。新車の無資格検査問題が発覚した日産自動車(4.4%下落)、SUBARU(スバル、24.9%下落)など3社がマイナスと明暗が分かれた。この中で、プラス58.8%と飛び抜けた実績を残したのがスズキだ。

 昨年は2月にトヨタとの包括的な業務提携を発表。月次の販売台数や四半期ごとの決算の内容も順調に推移し、業績拡大に期待が集まったようだ。

 牽引(けんいん)したのは、スズキにとって“牙城”とも言えるインドでの四輪車販売。17年通年でみると、インドでの販売台数は前年同期比15.3%増の約161万台と過去最高だった。小型車の「バレーノ」「ビターラ・ブレッツア」のほか、「スイフト」のセダンタイプである「ディザイア」は昨年5月の投入から5カ月半で10万台を販売した。鈴木俊宏社長は「インドさまさまで救われている」と振り返った。

 野村証券はリポートでスズキについて「インドは製品面、販売面で他社を大きく引き離しており、市場拡大の追い風を強く受けるだろう」と指摘している。

 スズキは、インド政府の「国民車構想」に応じて1983年に現地生産を始めており、インドで確固たる地位を築いたのは昨日や今日のことではない。しかし、株式市場は好業績をみて、スズキの持つ優位性を改めて認識した格好だ。インド自体の成長性もさることながら、潜在的な大市場であるアフリカ・中近東への輸出にも、地理的に橋頭堡(きょうとうほ)としての魅力がある。

 社長時代にインド進出の指揮を執った鈴木修会長が豪快な人柄で知られる一方、「冷静沈着」と評される長男の俊宏社長は、最高益にも淡々としている。昨年11月の決算会見では、「安心という思いはない。過去最高の収益は喜ばしいが、課題としてはEV、ハイブリッド車(HV)へのシフト。自動車産業がどうなっていくか見極めていかなければならない」と述べた。

 ◆トヨタと確執越え

 インドで急激にEVシフトが進み、それに取り残されれば、スズキにとっての強みは一転して弱点となりかねない。何でもいいからEVを開発すればいいというわけではなく、「お客に受け入れられる価格で提供しなければならず、研究開発費が収益を圧迫する」(俊宏社長)という難しさがあるのだ。

 インドのモディ首相は昨年、EV化の推進を打ち出しており、スズキも当然、対応が迫られる。インドも中国と同じく、EVシフトを自国産業の育成に利用したい思惑もあるとみられ、政府による大規模な実証実験でパートナーに選ばれたのは、民族系メーカーのマヒンドラ&マヒンドラだった。

 そしてスズキは昨年11月、トヨタと協力してインド市場向けのEVを20年ごろに投入すると発表した。トヨタは、スズキが開発してインドで生産、販売するEVに技術支援する。自動車に通信機器を搭載して幅広いサービスを行う技術の提供を想定するという。

 「スズキでも1番が取れる国があるということを見せたかった」(修会長)という思いで進出し、成功したインドでトヨタと組むことに、スズキ首脳に複雑な思いがあったことは想像に難くない。しかし、電動化で出遅れているスズキにとって対応は急務。インドでの事業を強化したいトヨタと思惑が一致したようだ。トヨタは奥田碩(ひろし)社長時代、小型車「ヴィッツ」と子会社のダイハツ工業の軽自動車による“両面作戦”で窮地に追い込んだが、スズキは過去の確執を乗り越えて業務提携に踏み切った。

 俊宏社長は昨年12月、来るべき18年の抱負として、「あらゆる可能性に挑戦する1年にしていきたい」と決意を語った。会社設立から100周年という節目を20年に控え、業績好調が続くスズキの動向に、今年も株式市場から熱い視線が注がれそうだ。(高橋寛次)

最終更新:2/12(月) 8:38
SankeiBiz