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生きてプレーできる幸せと2044日ぶりの復活優勝【舩越園子コラム】

2/12(月) 14:48配信

ゴルフ情報ALBA.Net

「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」は、さまざまなセレブリティが大勢集い、華やかな雰囲気に包まれていた一方で、いろいろな意味で復活を目指す選手たちのオンパレードのようだった。

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肋骨の疲労骨折、後には心臓にも障害が出ていると診断されたローリー・マキロイ(北アイルランド)は今大会に初出場。今週は彼にとっての米ツアーの今季初戦でもあり、勝利から遠ざかった昨年からの復活を目指した。だが、残念ながら予選落ちに終わった。

腰痛が悪化し、やはり2017年に勝利がなかったジェイソン・デイ(オーストラリア)は、すでに2週前の「ファーマーズ・インシュランス・オープン」で1年7カ月ぶりの復活優勝を挙げたばかりだが、今、彼の視線は4月の「マスターズ」へ向いている。

それは、世界ナンバー1のダスティン・ジョンソン(米国)も同じこと。昨春、「ジェネシス・オープン」、「メキシコ選手権」、「WGC-デル・マッチプレー」で出場3試合連続優勝の快進撃を遂げ、その勢いのままオーガスタに乗り込んだDJは、しかし、開幕前日の階段転落事故で腰を強打し、初日のスタート前に棄権する羽目になった。

それでも、昨年8月の「ノーザントラスト・オープン」、そして、今年初戦の「セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」を制して、すでに復活ぶりを見せている。だが今、DJが闘志を燃やしているのは、オーガスタでの昨年の雪辱だ。

すでにマスターズ3勝を挙げている47歳のフィル・ミケルソン(米国)も、長年の関節炎と闘いながら、さらなる勝利を狙っている。

そうやって誰もが故障や病いからの復活を目指し、日々黙々と戦い続けている。それが米ツアーという場所だ。

そんな中、テッド・ポッターJr.(米国)が首位で最終日を迎えたとき、彼の復活への戦いは本当に長いなあと思わずにはいられなかった。

高校卒業後の2002年に19歳でプロ転向したポッターは、ミニツアーを経てウェブドットコム・ツアーに辿り着いたが、夢の米ツアーにデビューできたのは10年後の2012年だった。その年、「ザ・グリーンブライヤー・クラシック」で初優勝。「世界ランク218位のルーキー優勝」と注目されたが、2014年の交通事故で右足首を骨折。そのときからポッターの復活への長い旅が始まった。

シード権が切れ、ウェブドットコム・ツアーへ逆戻り。再び米ツアーへ這い上がってきた今季、今大会で世界一のDJと最終日最終組。

「ここ何年も優勝争いを経験していない僕がどこまでやれるのか。最終日は僕にとっての厳しいテストになる。でも大好きなペブルビーチで戦えることは幸せ。交通事故で傷めた体は今でも痛むことがある。でも、こうして生きて、プレーできることは幸せだ」。

そう言っていたポッターの最終日のプレーぶりは実に落ち着いていた。前半に3つ伸ばし、後半はすべてパーの“69”で回り、2位になったジョンソン、デイ、ミケルソン、チェズ・リアビ(米国)に3打差を付けて通算2勝目を挙げた。

身を包んでいた赤いシャツ以外に華やかな部分は皆無に近かったポッター。今週は豪華な顔ぶれのプロとアマの中で、ポッターの存在はいつも以上に地味に見えたかもしれない。だが、最終日、誰にも何にも翻弄されることなく、自分のゴルフを遂行し、2位との差を広げていったポッターの姿は、最後には華やかで、そして格好良く見えた。

6年ぶり、実に2044日ぶりの復活優勝。込み上げる喜びと感動を必死に抑えながらTVインタビューに応えるところが、下積みと苦労を重ねながら歯を食い縛ってきた彼らしかった。

「うれしい。信じられない。ドリーム・カム・トゥルーだ」

多くの選手たちが復活を目指して戦った今大会で、ポッターの優勝は最も華やかな復活劇と言えるのかもしれない。

よくよく考えれば、ゴルフも人生も、何かからの復活を目指す歩みだ。歩み続けられるかどうかのカギとなるのは、頑張ろうという気持ち。そして、その気持ちが芽生えるかどうかは、復活を目指すことができる命とそれができる肉体があってこそだ。

「大好きなペブルビーチで戦えることは幸せ。こうして生きて、プレーできることは幸せ」。

ポッターの雄姿を眺めながら、ポッターの前日の言葉をもう一度、思い出した。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

(撮影:GettyImages)<ゴルフ情報ALBA.Net>