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信じて遂げた「ソチの雪辱」=高梨、成長示したメダル〔五輪・スキージャンプ〕

2/12(月) 23:58配信

時事通信

 「4年前の自分を見返したい」。女子最多のワールドカップ(W杯)通算53勝も、今季は10戦未勝利。絶対女王から挑戦者へ立場が変わったこの冬も、信念は揺るがなかった。「最後の最後に、こん身の一番いいジャンプが飛べた」。苦い記憶から4年。自分を信じ切った21歳が成長を示したメダルを手にした。
 17歳だった前回のソチ五輪。正式種目になったジャンプ女子の初代王者の本命とされながら、4位に沈んだ。「独特の雰囲気にのみ込まれた自分がいた」。このシーズンで表彰台に立てなかったのは五輪だけ。大舞台でのひ弱さが際立った。
 「ソチの雪辱」が4年間のテーマだった。五輪で自分を見失った経験から、独力で物事を解決し、自分を客観視する力を磨こうとした。ただ与えられていた合宿計画や練習内容を自ら立案。「ソチの時は自分と話し合う時間が足りなかった」と省みて、毎日30分は考えを整理し、日誌を書いた。「心の起伏が激しかったけど、今は安定できている」。大人の雰囲気を増したメークが話題になった頃から、周囲も認めるほど言動に余裕が感じられるようになった。
 若くて強い「沙羅ちゃん」の爽やかで穏やかな笑みは世間のイメージが良い。スポンサー企業は優に10社を超える。一方、勝負の世界に生きるアスリートらしい一面も。練習がうまくいかなければ不機嫌になり、映像の前を動かない。父の寛也コーチは、練習であえて助走距離が短くなる低いスタート位置を選び、他選手の飛距離を超えようと挑む娘に目を見張った。「何段下のゲートから出ても、あんたに勝ちたいという女王のスタイルがあるんでしょう」。高梨の長所は「気の強さ」だという。
 14歳の頃から指導する牧野講平トレーナーは「ずっと高梨を見ていると、すごく不器用だと感じる」と言う。ジャンプ選手で最も小柄な部類の身長152センチで、運動神経も並み。それでも持ち前の勤勉さで、時間をかけて習得した動きは離れない。そんな歩みは、かつて牧野氏が担当し、高梨も憧れたフィギュアスケート女子の浅田真央さんの姿と重なる。「職人さんタイプで言葉の表現がうまくない。二人とも、ものすごく負けず嫌いだし」
 冬に入る前、高梨に大切にしている言葉を問うと、「信」の一文字を挙げた。「『人に言う』と書いて『信じる』。しっかり言ってあげることで自分の力を引き出せる」。苦戦が続いた今季、何度問われても「目標は金メダル」と公言してきた。頂点には惜しくも届かなかったが、4年前の自分は乗り越えた。(時事)

最終更新:2/13(火) 1:06
時事通信