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「中南米の民主化さまたげている」 中国の援助外交に米財務省が対決宣言

2/12(月) 14:15配信

産経新聞

 中国が中南米地域で展開する援助外交に、トランプ米政権下の財務省が対決姿勢を鮮明にしている。中国は現地政権に近い資源産業やインフラ事業へ重点投資し、米国の裏庭で勢力圏を広げてきた。米財務省は「民主化や『善良な統治』のさまたげになっている」として、ベネズエラなどの独裁政権を支える中国の投資姿勢を問題視。民需主導の支援イニシアチブを推進し、対中対抗を強化する構えだ。(ワシントン 塩原永久)

 「中国は原油と引き換えにベネズエラに援助しているため、一体どれほどの額が中国から投じられているのか知りようがない」

 米財務省のデビッド・マルパス次官補(国際問題担当)は2日、首都ワシントンで開かれた討論会でそう述べ、独裁色を強めるベネズエラのマドゥロ政権を、資源インフラへの投資を通じて支援する中国を強く批判した。

 中南米で存在感を増す中国に対して、トランプ政権は疑念を高めている。昨年のパナマと中国の国交樹立や、今年初めに南米を外遊した中国の王毅外相が、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」への参加を呼びかけたためだ。

 米政権ではティラーソン国務長官が今月1日、メキシコやペルーなどの中南米諸国に外遊に出た際、「自国民の利益だけを追求する帝国主義的な大国を必要としていない」と強調。中国などの進出手法を「略奪的だ」と断じたばかりだ。

 一方、マルパス氏は、中国の国営企業が主体となって中南米各国に支援攻勢を展開している点に疑問を呈し、国家資本が関与する投資は「市場経済を通じた成長をさまたげる」と批判。中国政府が市場自由化に向けた改革を逆行させている点にも厳しく指摘した。

 2日にマルパス氏が明らかにしたのは、メキシコやブラジル、コロンビアなど多くの大統領選が予定される「政治の季節」を迎える中南米で、米国が全方位的に各国の経済成長に関与する「米州の成長イニシャチブ」だ。

 中国がこれまで注力してきた天然資源やインフラ分野を軸に、米民間企業の投資を呼び込むことが柱。さらに、金融システムの育成を手助けし、汚職への対処も含めた多面的な支援を実施。対象国の民間部門の成長を促すことで、「現地政府の貧困な統治を助長してきた中国の投資事業」(マルパス氏)との差別化を鮮明にする狙いだ。

 マルパス氏はこうした米国主導の取り組みについて米州機構(OAS)などの南米地域の多国間枠組み、先進7カ国(G7)や、アルゼンチンがホスト国となる20カ国・地域(G20)の会議の場で、中国に対抗する考えを示した。

 また米財務省は、米国が最大の出資国となっている開発支援機関「米州開発銀行(IDB)」で、中国の影響力拡大の芽を摘む構えだ。

 「北京で開催すれば会議の成功はおぼつかない」

 年始のブルームバーグ通信によると、マルパス氏はIDB首脳に書簡を送付。IDBが2019年の年次総会のホスト国を中国とすることとした初期的決定に反発し、書簡にそう記して再考を促した。中南米に浸透する中国に、徹底して対抗する姿勢をみせている。

 中国が国有企業を通じて海外で投資活動を展開するケースがあることには、開発系調査機関からも批判の声がある。特に投資の実態がみえない透明性の欠如を問題視する見方が根強い。

 マルパス氏は、中南米での中国の投資が自国の短期的な利益に資するためのもので、「地元の人々を助けるものとなっていない」と批判する。

 一方、中南米では、政情不安や経済の混乱から民間企業が手を引いた地域で、中国が「最後の貸し手」となって、経済支援をになってくれることを評価する声もある。中国は近年、ブラジルやアルゼンチンで、資源・インフラ分野に限らない幅広い分野で投資活動に及んでおり、資金の出し手となった中国への期待があることも否定できない。

 南米地域で米財務省は、2国間交渉や多国間の枠組みなど多面的に対中牽制(けんせい)に打って出る構えだが、トランプ政権に中南米地域での一貫した外交戦略が欠如しているとの懸念も専門家の間にあり、対抗戦略が実を結ぶかは見通せない。

最終更新:2/12(月) 14:15
産経新聞