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京都から羽ばたくSiC応用~製品、部材など多数の成果

2/12(月) 20:20配信

投信1

本記事の3つのポイント

 ・ 次世代パワーデバイスの筆頭であるSiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスは車載市場だけでなく、医療機器など様々な分野での採用が検討されている
 ・ 京都には地元企業のロームを中心に、産学連携による「SiCサークル」が存在し、様々な開発成果を生み出してきた
 ・ 京都を中心としたSiCの産学連携プロジェクトは17年度で終了するが、SiCデバイスの本格事業化に向けて後継プロジェクトの登場が求められている
 シリコンパワーデバイスと比べて物理特性に優れ、低損失、高耐圧、高速スイッチング、高温動作を実現できるSiCパワーデバイス。今後の電気自動車(EV)の普及拡大やIoT市場の立ち上がりにより省エネの重要性がますます高まるなかにあって、大幅なエネルギーの削減を実現できるキーデバイスとして期待されている。最も注目を浴びている用途は自動車への搭載だが、それ以外の分野においても多種多様な応用開発が進められている。なかでもSiCデバイスと非常に縁の深い京都では、産学連携プロジェクトによる応用開発が進められ、多くの成果が生み出された。そこで本稿では、京都を舞台としたSiCデバイスおよびその応用開発の取り組みを紹介する。

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京都で切り開かれたSiCデバイス実用化の道

 そもそもSiCデバイス実用化の歴史において、京都を避けて通ることはできない。SiCを半導体材料として利用する試みは1950年代にまで遡るが、高品質な結晶の作成が困難で研究開発が進まず、より有望な材料としてシリコンが注目を浴びたこともあって、世界的な取り組みは下火となった。そうしたなかで地道な取り組みを継続してきたのが京都大学だ。87年に松波弘之教授(現名誉教授)が開発したSiCの結晶成長技術は、半導体デバイスに利用できる高品質な基板の実現につながる契機となった。

 ただ、当時最盛期を迎えていた日本半導体メーカーはSiCという新材料に視線を向ける余裕がなく、その後のバブル崩壊による景気後退もあって取り組むタイミングを逸した。結局SiCウエハーの事業化を果たしたのは、いち早く松波教授の研究成果に着目した米クリーで、日本企業はこの分野において後塵を拝することになった。

 この事態を憂慮した松波氏は、90年代から国家プロジェクトによる大学、企業が連携したSiCデバイスの研究開発を提唱し、主導的な役割を担う。90年代から2000年代にかけて行われた複数のプロジェクトによってSiCウエハーやデバイスに関する基盤技術が蓄積され、参画した関係者からなる「SiCサークル」とも呼ぶべきコミュニティーが形成された。この蓄積が、2010年代になって本格化したSiCデバイスの事業化フェーズにおける興隆を支えている。

 京都の「SiCサークル」において、企業側の代表的な存在と言えるのが半導体デバイスメーカーのローム㈱だ。90年代からSiCデバイスの研究開発に着手した同社は、10年に世界で初めてSiCショットキーバリアダイオード(SBD)を量産化したのを皮切りに、12年にはダイオードとMOSFETをすべてSiCで構成したフルSiCモジュール、15年には基板表面に溝(トレンチ)を形成したトレンチ型MOSFETを量産するなど、最先端の成果を次々に生み出してきた。09年にはドイツのSiCウエハーメーカーであるサイクリスタルを買収し、ウエハーからデバイス、モジュールまでを一貫して製造できる体制を整えている。後述するSiC応用開発においてもデバイスを提供しており、中心的な役割を果たしている。

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最終更新:2/12(月) 20:20
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