ここから本文です

第1号の男性保育士、30年経て見えてきたもの

2/12(月) 9:10配信

西日本新聞

 保育士不足が深刻化している。福岡県久留米市も例外ではなく、保育所に入れない待機児童数は59人(昨年4月時点)で、保育所定員を満たしていないにもかかわらず、人材難を理由に入所を拒まれている。市立大城保育所(同市北野町)で主任保育士を務める浦浩三さん(58)は数少ない男性保育士。「もっと“男性参画”が進めば、保育士不足の解消にもつながるのでは」。30年間、保育現場に身を置くことで見えてきたものもあるという。

【写真】1歳児クラスを受け持つ「男性保育士第1号」の浦さん。絵本を読み聞かせながら一緒に体を動かした

 午後3時のおやつの時間。「みんな座って」。歩き回っていた子どもたちが椅子に腰掛けると、お菓子を手渡した。それでも、そわそわと落ち着かない子も。「椅子に座れる子は、かっこいいな」「さあ絵本の時間だよ。きょうは何かな」。優しい口調で、子どもたちの興味を引き付ける。

「何で保育士をやろうと思ったの」

 0~6歳の94人が通う大城保育所で、浦さんは昨年4月から、1歳児クラス(18人)の担任を務める。それまでは7年間、市幼児教育研究所で発達の遅れや偏りがある幼児を対象に療育訓練を実施してきた。「例えば、押し付けではなく興味を抱くまで待ち続ける-。以前と比べ、子どもたちとの向き合い方が変わりました」

 筑後市出身。中2の冬、父親を病気で亡くした。家計に負担をかけまいと、中学卒業後に就職するつもりだったが、五つ離れた兄の「高校には行け」との一言で進学。兄が子どもたちに運動を楽しく教える幼児体育指導者だったこともあり、九州大谷短大(筑後市)の幼児教育学科に入学した。在学中、幼稚園や保育所に足を運び、子どもたちの主体性を促す「創造保育」に関心を持った。「子どもたちと同じ目線で触れ合いたい」。保育士の国家資格を取得し、1981年、久留米市に保育士として採用された。

 浦さんは男性保育士第1号。現在も全83人のうち男性は4人しかいない。これまで6カ所で勤務したが、男性と一緒だったことはなかった。「変わってるね」「何で保育士をやろうと思ったの」と、保護者や知人から尋ねられたことも。「保育士は女性の仕事というイメージが強い。元気すぎる子どもたちと遊んだり、力仕事を引き受けたり…。頼りにされるケースは少なくありません」

「男性が魅力を感じる仕事として発信にも努めたい」

 2014年10月から、市従業員労働組合連合会(市労連)の執行委員長を務める。男性だけでなく保育士全体の人材不足を痛感しており、手当の増額や平日限定など柔軟な働き方を促すことで雇用増を働き掛けることを思案中。「公務員と民間の賃金格差もあり、国が本腰を上げて対策に取り組まないと、いつまでたっても待機児童問題は解決しない」と浦さん。「保育現場に限らないが、結婚や出産、育児を理由に男性が辞めるケースは少ない。男性が魅力を感じる仕事として発信にも努めたい」

 孫世代の1歳児から「しぇんしぇい」と慕われるベテラン保育士。2年後に迎える定年まで、子どもたちの屈託のない笑顔を見続けるつもりだ。

西日本新聞社

最終更新:2/12(月) 14:37
西日本新聞