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<イスラエル>イラン・シリア陣営と戦闘激化の恐れ

2/13(火) 20:03配信

毎日新聞

 【エルサレム高橋宗男、ワシントン会川晴之】イスラエルと、イラン・シリア陣営の間で10日発生した直接の軍事衝突で、長年対立する両者の戦闘拡大が懸念されている。イスラエルを支援する米国やイランなどと連携するロシアも紛争激化を回避しようと当面は火消しに回っている。

 ◇米露、火消しに躍起

 イスラエル軍などによると、10日の衝突ではイスラエルが、シリア中部パルミラ付近の基地から自国領空に侵入してきたとするイラン無人機を撃墜。発進拠点も攻撃したが、シリアの対空ミサイル約20発で反撃されF16戦闘機1機が墜落した。イスラエルは報復でシリアの防空装備やイラン関連通信施設など12カ所を空爆した。

 イランはシリア内戦でロシアとともにアサド政権を支援。一方、イスラエルは内戦に距離を置きつつ、シリアでイランの影響下にあるレバノンのシーア派武装組織ヒズボラの車列を攻撃、イラン製武器がイスラエルと敵対するヒズボラに渡ることを阻止しようとしてきた。

 それが今回、イスラエルは戦闘機を数十年ぶりに戦闘で失った。1967年の第3次中東戦争でシリア南部のゴラン高原を占領して以降、軍事的優勢を維持してきたシリアに顔をつぶされた形だ。

 さらに、今回の衝突は、長年敵対してきたイスラエルとイランが「初めてシリア領内で真っ正面からぶつかった」(イスラエルのハーレツ紙)事例にもなった。

 イスラエルのネタニヤフ首相は10日、テレビ放送で「イランが我々に対抗するシリア内でのいかなる試みも許さない」と強調、危機感をあらわにした。

 これに対し、サンダース米大統領報道官はイスラエルの「自衛権」は支持しつつ、イランに「挑発的行動を停止し、地域の平和に向けての行動」を要請、緊張緩和を図った。ロシアのプーチン大統領も10日、ネタニヤフ氏との電話で、地域での対立につながる行動の回避を求めた。米露とも、シリア内戦の激化や周辺地域への拡大は回避したいのが本音だ。

 一方で、イランがシリア、イエメン、イラクなど中東で武器や兵員の供与などを通じた影響力拡大を図る流れは続く。安全保障分野でのイスラエルとの構造的対立は、深まりこそすれ軽減は困難なのも実情だ。親イスラエル色の強いトランプ米政権も放置できない。

 イランは無人機をシリアで運用、昨年8月にはペルシャ湾を航行する米原子力空母への妨害飛行を繰り返した。米国防総省によると、イエメンの反政府派のイスラム教シーア派系武装組織フーシには攻撃用無人機「カミカゼ・ドローン」を輸出する。シリアでは弾道ミサイルや精密誘導兵器など「イスラエルの安全保障を脅かすイラン製武器の供給や現地生産が増える」(軍事専門家)との懸念もある。トランプ政権は今年1月、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討で派遣した米兵約2000人の駐留継続を決定。「シリアからのイラン排除」(ティラーソン米国務長官)を狙う。

 一方、シリア北部ではトルコとクルド系武装勢力、東部では米軍と政権軍の戦闘も継続。大規模な地域紛争化への火種はくすぶっている。

最終更新:2/14(水) 2:21
毎日新聞