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「それって働き方改革?」ツッコミどころ満載、農水省「一太郎」廃止報道

2/13(火) 10:10配信

産経新聞

 時事通信が1月13日に配信したある記事に対し、農林水産省を中心に霞ヶ関がにわかに沸いている。その内容は、農水省が働き方改革の一環で、文書作成ソフトをジャストシステムの「一太郎」からマイクロソフトの「ワード」に統一する方針を決めた-といったものだ。唖然(あぜん)、失笑の各省庁を尻目に恥じらう農水省。インターネット上でもさまざまな“ツッコミ”が展開される事態となった。

 「ワードを導入することを普通“働き方改革”とは言わない」「一太郎なんて久しぶりに聞いた」「一太郎は農水省で生きてたのか」-。ネット上では、農水省の時代錯誤を揶揄(やゆ)するような書き込みがあふれた。他の省庁からも、「まだ一太郎を使っているとは知らなかった」(財務省課長)、「記事を読んで、久しぶりに笑わせてもらいました」(経済産業省課長)といった声が相次いだ。

 記事によると、農水省は1月からワードに順次切り替えを進めるという。これまでは、ワードと一太郎とを併用してきたが、ワードに統一することで、スマートフォンでも閲覧でき、外出先でも仕事ができるため、業務の効率化と残業代削減が見込めると判断。一太郎の操作経験のない若手職員が増加していることもあり、働き方改革の一環として、国会の答弁書も含め省内の文書作成は原則としてワードに切り替えることにしたようだ。

 確かに今の10~20代にとってはなじみの薄い「一太郎」。簡単に説明すると、1980年代の日本のパソコン黎明(れいめい)期に、ソフトウエア開発会社ジャストシステムが開発した日本語ワープロ(ワードプロセッサーの略)ソフトのことである。最近ではワープロを知らない大学生も多いようなので、さらに補足するとワープロソフトとはパソコンで文書を作成するソフトだ。

 一太郎は90年代前半までは、日本語ワープロソフトで圧倒的なシェアを誇っており、日本語ワープロソフトの代名詞的存在だった。しかし、95年にマイクロソフトが発売した基本ソフト(OS)「ウィンドウズ95」が大ヒット。それに付属された「ワード」にシェアを侵食され、2000年代には完全にシェア王座を受け渡した。

 ただ、ジャストシステムが開発した日本語入力システム「ATOK」は使い勝手の良さで根強い支持を受けており、ワードを使いながら日本語入力はATOKというユーザーは多い。

 時代の流れから、今では“過去の産物”的な扱いを受ける一太郎。だが、50代以上の農水省職員からは、その使い勝手の良さを賛辞する向きが強い。ある幹部は「ワードだと文字や行間などの詰め方がわかりにくい。一太郎はフリーカーソルで好きなところに文字を打ち込める」と、その扱いやすさを強調する。

 確かに、ネット上でも少数ではあるが「一太郎には一太郎の良さがある」「レイアウトの面で公文書には一太郎が適している」などと擁護する声もあった。とはいえ、民間企業や他省庁はすでにワードに統一されており、この幹部も「農水省は遅れていると理解している」と自嘲。苦戦しながらもワードでの文書作成に切り替え始めている。

 ただ、幹部の中には、「文字を打ち込む作業が面倒」などとの理由で、音声を文字化するスマホの音声認識ソフトを使い、文書を作成するような“ハイテク族”もいる。「遅れているのか進んでいるのか分からない」(経産省幹部)ような実態も一部に散見される。

 そもそも、なぜ農水省だけがいまだに一太郎が使われているのだろうか。明確な理由は分かっていないが、「他省庁に比べ一般企業や団体、省庁間でのやりとりが少なく、どこか農水省には閉鎖的なところがある。高齢者が中心の農業団体などとのやりとりが多く、新しいものへの切り替えに躊躇(ちゅうちょ)したところもあるのではないか」(関係者)との憶測もある。

 農業の輸出産業化を目指す“攻めの農業”実現に向けた改革を急ぐ農水省。農協改革を主導した奥原正明事務次官のもと、農水省内の働き方改革も着実に進められることは間違いなさそうだ。(経済本部 西村利也)

最終更新:2/13(火) 10:10
産経新聞