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研修で人種差別経験=心臓カテーテルのトップランナーー三角和雄氏

2/13(火) 11:04配信

時事通信

実力とタフさで乗り切る

 「米国で実力をつけたい」。三角氏は思いを実現させるため、学位論文の研究テーマを「無症候若年者の冠動脈病変について」に決めると、教授からシカゴのイリノイ大学への研究留学を紹介してもらい、1985年に渡米。学位論文を仕上げた後も帰国せず、米国で臨床研修を開始した。
 研修先は自分で探し、最初は米国でも救急患者が多いニューヨークの市立病院を選んだ。治安の悪い地域にあったが、多くの経験を積めると考えたのだ。さらにカリフォルニア大学で神経内科、ピッツバーグ大学で今後の基礎となる一般内科を学び、米国の専門医試験の中で最難関という内科専門医の資格を取得した。
 91年にカリフォルニア大学アーバイン校で循環器臨床フェローを開始。その後、ロサンゼルスのグッドサマリタン病院で、心血管インターベンション専門のフェロー研修を2年半行った。
 三角氏は「臨床研修プログラムは約1年間で1クール。自分でいい病院を見つけて、どんどん変えていくのが米国では当たり前」と話す。腕を磨き実力をつけて、競争に勝ち良いポジションを次々につかむと、指導医の中には「有色人種は嫌いだ」「外国人に高い評価はつけない」と面と向かって言う人もいた。
 「勉強することが多い上に、不愉快な目に会うのは嫌なものです」と三角氏。「米国ではお客さんはウエルカム。しかし相手が力をつけ、自分の脅威になってくるとたたきに来る」。勤務先を変わろうとしたとき、指導医から不当に推薦状の内容を悪くすると言われたこともあったという。

経験無駄にせず、症例すべて記録

 「米国では皆が聖人君子というわけじゃない。でも、イエス、ノーをはっきり言える毅然(きぜん)とした態度が取れれば問題はない。実力の他にタフな精神力も必要です」。三角氏は周囲の環境に流されず、自分がやるべきことに集中。理不尽な対応に負けないためには、誰の目にも明らかな揺るぎない実力を身につけるしかなかった。
 「突き抜けた存在になってしまえばいいんです。本当に実力をつけて結果を出せば、敵が味方になることだってある。僕を毛嫌いしていた上司が、5点満点で6点の評価をくれたこともありましたよ。人種差別の国でもあるけど、機会均等の国でもあるから」
 米国の臨床研修プログラムは、三角氏が考えていた以上に充実していた。例えば今月は心エコー、来月は心臓カテーテル、次は冠状動脈疾患管理室(CCU)のレジデント教育と診療、などと1カ月ごとに集中して一つひとつの手技を身に付ける。「心エコーでは1カ月で約700件を読影、心臓カテーテルは120~150件を行うのが普通で、日本の数十倍、数百倍の患者を診られました」と振り返る。
 米国で自ら手掛けたカテーテル治療のすべての症例は、ノートに克明に記録。どう対応したのか、1例1例の経験を一つも無駄にしないようコツコツと書きためた13冊のノートは今でも院長室に大切に保管している。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

最終更新:2/13(火) 14:36
時事通信