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【舛添要一の僭越ですが】 憲法9条改正、下手な政治的妥協には国民が反発

2/13(火) 12:08配信

ニュースソクラ

3項加筆論は公明党への妥協

 安倍政権は悲願の憲法改正、とりわけ9条を改正し、自衛隊を合憲なものにすることに着手し始めた。しかし、その実現は容易ではない。

 憲法上の規定では、国会が「各議院の3分の2以上の賛成で」発議し、それを「国民に提案して」、過半数の賛成を得て実現する(96条)。

 第一の関門は国会で、3分の2以上の賛成を得るのは極めて難しく、そのため、55年体制下の社会党のような護憲勢力は最低限3分の1の議席を得ることに腐心してきた。いま、衆議院(465議席)では自民党(283議席)・公明党(29議席)のみで3分の2以上の議席を占めているし、日本維新の会(11議席)もいる。

 参議院(242議席)では自民党(125議席)・公明党(25議席)に日本維新の会(11議席)やその他の会派の議員を合わせれば3分の2の多数になる。

 改憲を目論む安倍首相としては絶好のチャンスである。しかし、公明党や維新の会が改正案に賛成しなければ発議はできない。とくに改憲に慎重な公明党が最大の問題である。

 「平和の党」をスローガンとする公明党は、改憲ではなく「加憲」を主張している。とくに9条については、母体の創価学会の方針もあり、明確な方針を出していない。

 今の9条1項・2項をそのままにして、自衛隊を明記する3項を「加える」という改正案を安倍首相が打ち出したのは、公明党対策である。何としても憲法改正を実現しようと思えば、それしかない。

 そして、参議院の議席数を考えれば、維新の会も賛成できるような改正案にしなければならない。安倍首相が大阪の松井知事や橋下前市長と会談するという特別の配慮をしているのは、そのためである。

 まさに、憲法改正は、その時々の政治力学に翻弄されるのである。私は、2005年に自民党が「新憲法草案(第一次憲法改正草案)」を提案したとき、事務局を担当したが、当時もそのことを実感したものである(拙著、『憲法改正のオモテとウラ』参照)。

 しかし、憲法という国の根幹を定める基本法については、立憲主義の観点から、また憲法学的にも超えてはならない一線がある。その意味で、今、自民党が提案しようとしている9条「加憲」は政治的妥協が度を超しており、私は賛成できない。

 私がとりまとめた第一次草案も参考にしながら、簡単に解説する。まず1項の平和主義については、改正しない。

 問題は、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」という2項である。これをそのままにしておけば、れっきとした戦力である自衛隊は存在できないことになる。

 そこで、第一次草案は、2項を「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。」とした。

 その際に、「国防軍」とせよという強硬意見もあったが、自衛隊がいきなり国防軍となったのでは、国民の合意を得にくいという判断で「自衛軍」としたのである。因みに、自民党が野党の時代の2012年に発表した第二次草案では、右バネが強すぎて、「国防軍」と記されている。

 「自衛軍」としたのも政治的判断であるが、「軍隊を持つ」という改正内容とは何ら矛盾しない。単に、軍隊の名称レベルの話である。

 ところが、今回は、2項をそのままにして3項に自衛隊を明記するという。しかし、それでは2項との整合性がなくなる。今後も神学論争を続けさせる悪しき改正案と言わねばならない。憲法体系の根幹を揺るがす政治的妥協である。

 安倍一強体制の下では、そのような正論を吐けば、反安倍勢力とみなされ冷遇されるかもしれず、自民党議員は皆腰が引けている。

 自衛隊は国際的には軍隊として認められている。今回の改正は、そのことすらも否定する危険性を孕んでおり、自衛隊にとっても歓迎すべきものではない。

 そして、国会での発議まではこぎつけても、国民投票という次の関門が控えている。下手な政治的妥協は、かえって国民の反発を買うのではあるまいか。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:2/13(火) 12:08
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