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樹脂のように使えるガラス、LED照明の自由度を高める

2/14(水) 7:10配信

スマートジャパン

 産業技術総合研究所(産総研)と石塚硝子は、500℃程度と低温で成形が可能な、耐水性、耐熱性、耐光性を持つ無色透明な低融点ガラスの作製技術を開発したと発表した。得られたガラスは、LED照明のレンズや透明封止剤などさまざまな光学材料への応用が期待される。

 シリカガラスに代表される一般的なガラスは、耐熱性、耐光性、光透過性に優れており、光ファイバーや光学レンズなどさまざまな光学材料に用いられている。しかし、ガラスを溶融・成形するためには高い温度を必要とするため、一般のユーザーが自由に成形することは難しいという課題があった。

 一方、ポリカーボネートなどの有機高分子樹脂は、耐熱性、耐光性、光透過性の点ではガラスに劣るものの成形温度が低く安価なため、その特徴を生かしてLED照明の封止剤やレンズなどの光学材料に用いられている。しかし、近年のLEDデバイスは高輝度化、短波長化が進んでおり、これら樹脂製レンズや封止剤用樹脂の劣化が大きな課題となっている。

 よって、溶融・成形温度の低いガラスを開発できれば、ガラスの特性を生かし光学デバイスの耐久性や性能が向上すると期待され、ガラスを樹脂に近い低温度域で液相合成から成形加工まで行えるプロセス技術が必要とされていた。

 今回開発した技術では、常温で流動性を示すリン酸と、物性を制御するさまざまな金属化合物を原料として、ガラスの前駆体液を調製する。この前駆体液は、約500℃という低温で流動性を示すガラス融液となり、成形・冷却することでガラスが得られる。ガラスの屈折率などの物性は、前駆体液に添加物を加えておくことで調整できるとする。

低融性と同時に耐水性、耐光性、耐熱性の両立

 さらに、組成及びプロセスを改良することで、低融性と同時に耐水性、耐光性、耐熱性を併せ持つガラスとした。

 一般に、リン酸を主成分とするガラス(リン酸塩ガラス)は耐水性が悪いが、今回開発したガラスもリン酸を主成分とするが、組成を改良することで実用に耐える耐水性を持つようになった。組成改良前と後のガラスを50℃の水に4時間浸した場合、改良前のガラスでは表面が水と反応して不透明になったのに対して、改良後のガラスでは水に浸すの前の透過特性を維持できるとする。

 また、今回開発したガラスの屈折率は波長633ナノメートル(nm)で1.65程度であり、シリコンやエポキシ、ポリカーボネートといった樹脂、BK7ガラスや、ソーダライムガラスに比べて高い。この屈折率は、工業的に用いられている半導体素子の屈折率との差が小さいので、発光素子に用いれば、光の取り出しに有利と予想されている。

 さらに、樹脂と比較して高い耐光性と耐熱性も確保した。加速試験として、今回開発したガラスと代表的な樹脂であるポリカーボネートに、波長365 nmを中心とした紫外光を700時間照射した後と、200℃で1000時間加熱後の光の透過率を計測したところ、ポリカーボネートは著しく透過率が低下したのに対して、今回開発のガラスは両試験後も透過率に変化はなかったとする。

 産総研では今回開発した低融点ガラスの実用化を目指し、構造解析を基にした反応プロセスの最適化や、用途に合わせた材料設計などの検討を進める。また、石塚硝子ではレンズ、封止剤などの光学用途を想定しているが、光学用途にとらわれない幅広い応用を検討するとしている。