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強みは「コミュニケーション」 LINE Payのモバイル決済戦略を聞く

2/14(水) 6:05配信

ITmedia Mobile

 日本に「アプリ決済」の市場が広がっている。アプリ決済とは、スマートフォン上のアプリを通じて決済を行う仕組みだ。NFCやFeliCaを使った決済手段とは異なり、あくまでアプリ上でアカウント情報を参照し、店舗やユーザー同士で通信を行うことで送金や決済を行う。相互通信は、オンライン上で相手を指定する、またはQRコードを使って対面のユーザー同士で直接やりとりを行うことで成立する。複数の手段が用意されている点が特徴といえるだろう。

LINE Payを利用できる店舗の一例

 アプリ決済でおそらく現在世界的に一番知名度が高いのは「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」だが、先日紹介した「楽天ペイ」もその仲間となる。そして今回、メッセージングサービスで多くのユーザーを獲得している「LINE」のプラットフォーム上で、決済や金融方面の強化を進める「LINE Pay」の戦略について、同事業を率いるLINE Pay取締役COOの長福久弘氏に話を聞いた。

●決済はコアなユーザー同士のコミュニケーション

 昨今のトレンドとして「アプリ決済」のカテゴリーに含まれることの多いLINE Payだが、もともとはWeb決済から始まったサービスだ。後にJCBとの提携でLINE Payカードを発行し、リアルな店舗を含めた「カード決済」の分野に進出した。

 LINE Payカードのメリットの1つは、従来ならクレジットカードの取得が難しい若年層にカード決済の裾野を広げた点にある。もともと若年層を中心にユーザーが広がっているLINEの特性も生かし、パートナーとなったJCBやその加盟店、そして他ならぬLINE自身にも利用層の拡大という恩恵をもたらすことになった。

 では、直近はどのような戦略なのか。「ここ2年くらい、中国でのAilpayとWeChat Payに代表されるようなモバイル決済が普及していることもあり、われわれも(LINE Payで)2017年から2018年にかけて、モバイル決済に大きくかじを切っていこうとしている」と同氏はLINEの決済戦略について説明する。

 日本でも2017年から2018年にかけて、急にこうしたQRコードを使った「モバイル決済」が話題になった印象があるが、この点について長福氏は「流れだと思っている」と言う。「中国でも2年くらいで大きな盛り上がりを見せた。日本では政府による銀行のオープン化の話の他、2020年に開催される東京五輪を目標にしたキャッシュレスの実現など、いろいろな要素が重なって2017年や2018年がモバイル決済の始まりとなるだろう」というのが同氏の見解だ。

 この指摘にもあるように、2017年から2018年にかけて中国だけでなく日本でもアプリ決済の機運が盛り上がり、多くのサービスが雨後のタケノコのように出現して互いの商圏を拡大している。その中でLINEの強みについて長福氏は「ゼロスタートではない」という点を強調する。

 もともと「メッセージング」というコミュニケーション型サービスを出自とするLINEでは、「決済はコミュニケーションの1つ」という形でLINE Payはスタートした。もっとも、当初のサービスとはだいぶ内容も変化しているが、「人と人、人とサービスの距離を縮める」という企業ビジョンにのっとったコンセプトは変化していない。

 登録ユーザー数も現時点で3000万人を突破しており、各種キャンペーンに連動した増減はあるものの、アクティブ率は2017年対比でかなり伸びているという。LINEはここ数年LINE Payカードに注力しており、2%のポイント還元も寄与して母数が拡大した印象だ。また2017年後半からはモバイル決済向けのキャンペーンも拡大し、今後の伸びが期待される。まだまだ数としては増えてくると同氏は分析する。

 一方で、ユーザー数の母数増加とともに、それを実際の市場規模拡大に結び付けるには、LINE Payが使える店舗の拡大も必要だ。QRコードによるモバイル決済は、既にローソンを皮切りに、札幌のツルハドラッグ、ロフト、ワタミといったチェーンでの導入が進んでいる。

 インタビュー時点では店舗名を明言しなかったものの、今後も大手を中心に一気に導入店舗拡大の流れにあるという。実際、大手でいえばインバウンドの恩恵を受けている店舗ではどこも検討自体は進めており、中国人の旅行客向けにはAlipayやWeChat Payを導入する一方で、日本人向けのサービスとして何を提供するのかを考えたとき、LINE Payがその候補となるという流れだ。大手はPOSレジの改修で対応するものの、中小や個人商店ではAirレジとの提携を生かしてQRコード決済の裾野を広げていく。

 「ライバル各社が数十万や5万という対応店舗を掲げる中で、LINE Payでは100万店舗という導入目標を掲げている。大きな目標と言われるかもしれないが、LINEでは『LINEビジネスパートナーズ』の名目で『LINE@』という企業向けアカウントサービスを提供しており、このアカウントが既に30万ほど存在する。さらに同サービスの審査に通っていない企業の一般アカウントも含めれば、契約形態としては既に大規模なものだ」(長福氏)

【更新:2018年2月14日19時30分 初出時に掲載していたLINE Payを利用できる店舗の画像は、LINE Payカードの場合だったため、LINE Pay QRコード/バーコードを利用できる店舗の画像を追加しました】

●2018年はライバルと一緒にマーケットを作る年

 筆者の私見ではあるが、業界内でのアプリ決済の機運が盛り上がっている一方で、一般ユーザーの間でサービスがそれほど認知されている印象はない。認知を含め、普及はまだまだこれからという印象だ。長福氏自身は「2018年は全プレーヤーでマーケットを作る年」だと述べている。

 「キャッシュレスという言葉が一人歩きしている印象があり、そもそも本当に便利なのかということをユーザーに知ってもらう必要がある。クレジットカードの歴史が50年あると考えれば、モバイル決済はまだその入り口の状態であり、体験を通じて各社がユーザーに便利さを認知させていく段階にある。LINEがガラケーからスマートフォンへと移り、コミュニケーション体験の世界を変化させた。今回のLINE Payにおけるチャレンジはこのあたりであり、もう一度LINEというサービスを作るアプローチが必要となる。LINE Payの普及というよりは、決済の在り方を変えるチャレンジだと考えている」(長福氏)

 ただ、日本では既に使い慣れた現金をはじめとする各種決済手段に慣れた消費者が多数おり、これをモバイル決済の世界へと誘導するにはそれ相応のメリットを提示する必要がある。前提として、簡単な初期セットアップや操作しやすいユーザーインタフェースの提示が重要だ。またAlipayやWeChat Payの流行った中国をはじめとして、諸外国では個人間送金がモバイル決済サービスの一端を占めており、このあたりのハードルの高さが日本での関連サービス普及の阻害になっているとも考えている。

 「分かりやすいユーザーインタフェースやユーザー体験は重要だ。安心・安全で使えるサービスであると同時に、金融サービスというのは金融庁の傘下でやるビジネスであり、法令順守の中で実現していくサービスでもある。LINE Payにおける本人認証は銀行口座連携によるものだが、今後は本人認証なしのサービスも含めていろいろな企画を考えている。個人間送金を使って同僚へのプレゼントのお金を集めたり、会食の席でワリカンをしたり、一度使うと便利なサービスであることは間違いない。

 オフラインでの店舗拡大の他、企業各社とのコラボレーションなど、いろいろな可能性を模索しているところだ。そもそも知られていないということは、生活に選択肢がないのと同じ。そこを経験させるのが重要だと考えている。キャンペーンやプロモーションを通じて、ユーザー体験にフォーカスしたものを早めに提供していきたい」(長福氏)

 このように2018年が認知の年であり、ライバル企業は「マーケットを作っていくパートナー」(長福氏)という認識の一方で、「1つの決済に対して、基本的に1つの決済手段した存在し得ない。2019年は規制の中でどうやって(秀でた)サービスを作り上げていくかという年になる」(同氏)とも述べている。

 長福氏がLINEの強みとして挙げるのは前述のユーザーとパートナー企業のベースの他、先行してサービスを提供してきたというリーディングカンパニーとしての自負だ。もっとも「クレジットカードのブランドや中国での2社の例のように、完全な一強の市場にはならないだろう。各社の強みやサービスのコンセプトをもって、ユーザーにとっていいサービスが選ばれていくのではないか」と長福氏は分析する。現在は複数あるモバイル決済サービスの中で、2019年は“強い”サービスが何社か抜きん出てくる形になるのだろう。

 「ユーザーに本当に求められているニーズ」を提供することが鍵になると同氏は説明する。例えば、中国では100元が最高額の紙幣であり、現金そのものの信頼性も低いことから、特にモバイル決済が重宝された。翻って日本を見ると、既にSuicaに代表されるように一部の利用者には電子マネーが広く生活に浸透しており、さまざまな場所で使える機会が増えている。「日本がキャッシュレス後進国というのは違うのではないか」とも同氏は言う。つまり、きっかけさえあれば日本でサービスが普及する素地はあるということだ。

●これからのLINE Pay

 こうした中で長福氏がライバルに対するLINEの強みとして挙げるのが、やはりコミュニケーションだ。LINE自体は国内の月間利用者が7300万人おり、そのうち84%が毎日アクセスしているという。「何かを支払う」ということにユーザーがメリットを見い出し、その先のコミュニケーションを提供していくのが重要だという。

 小売店に対しても、LINE Payを導入するメリットを提示していく。従来、クレジットカードなどの新たな決済手段を小売店が導入することは、手数料を取られるコスト要因でしかなかった。LINE Payの場合、「LINE@」という販促ツールがあり、ユーザーが決済をすることでLINE@や友達登録APIといった仕組みをシステム的に走らせることが可能になる。

 LINE自身はユーザーの個人情報をほとんど持っておらず、これを直接パートナーに提供する術を持たない。だがこうした仕組みを通じてパートナー自身が情報収集を行うことで、決済のたびに資産を増やしていく結果となる。重要なのは、LINE@という仕組みが「友だち登録」を行うことでスタートするものであり、その時点で「ユーザーが対象となる企業やサービスに興味がある」つまり「ファンである」ということを示している。LINE Payをフックとして、企業がビジネスやファンを拡大するためのきっかけを作ってほしいというわけだ。

 LINE Payもきっかけ1つで爆発的にユーザーが伸びる可能性が非常に高い。長福氏は現状でLINEユーザーが若い層に使われている傾向があるものの、実際にはそれほど層が偏っているわけでもないと述べている。まだブレークのきっかけは見えないが、いずれはLINE Payが同社事業の中核として機能していくだろう。

 実際、同社の過去の事例をみても、チャットサービスの登場からスタンプやマンガ、占いといった人気サービスが登場するまでに2~3年程度の期間を要している。LINE Payもまたユーザーやサードパーティーとともに成長していくサービスであり、そうしたスパンで事業を見ているのだと考える。

 収益に関しても、手数料もさることながら、アカウントビジネスとしての側面が強いと長福氏は説明する。LINE Adプラットフォームやサードパーティーを通じた事業など、既存の成功事例にあるようにマネタイズにおけるポイントは幾つかあると説明する。

 最後に現状のLINE Payが構想からどの程度の完成度かを尋ねたところ、長福氏は「できていることは1割」とコメントした。FinTechというくくりでいえば、決済や金融、各種サービスやコミュニケーションなど、可能性はいくらでもあり、現状はまだスタート地点にすぎないということだ。

【訂正:2018年2月14日19時30分 LINEの利用者数について、一部誤りがありましたので訂正致しました】

最終更新:2/14(水) 19:34
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