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<エレベーター事故>裁判後も「安全」訴える 息子失った母

2/14(水) 14:45配信

毎日新聞

 ◇震災訴訟原告に講演へ

 東京都港区で2006年に起きたエレベーターの事故で、高校生の息子を亡くした母親の市川正子さん(65)が17日、仙台市で開かれる震災訴訟原告らの集会で講演する。津波で家族を失った原告らの訴訟は多くが終結したり、判決日が指定されたりと最終局面を迎えている。9年に及んだ民事訴訟を昨年11月に和解で終えた市川さんは、「裁判の先」を見据えた自身の取り組みを遺族らに語りかける予定だ。【伊藤直孝】

 「事故原因を徹底的に解明し今後の安全に生かすことが、理不尽に奪われた息子の命を生かすことと信じて訴え続けてきました」。シンドラーエレベータ社製エレベーターによる事故で長男の大輔(ひろすけ)さん(当時16歳)を失った市川さんは1月29日、東京都内でエレベーターの保守点検業者ら約100人を前に語った。

 国土交通省は16年、エレベーターの安全情報を管理者やメーカー、保守点検業者が共有する原則などを定めた維持管理指針を策定。市川さんは指針に関わる研修会で昨年から講話を続けている。「事故までは安全情報を共有する仕組みがなく、息子の事故は起こるべくして起こった」。その思いを直接伝えたいと考えるからだ。

 市川さんがシンドラー社と保守点検業者、港区を相手に起こした民事訴訟は昨年11月、東京地裁で和解が成立。和解条項には2社が再発防止の取り組みを確約し、港区と市川さんが今後も安全対策に向けて連携していくことが盛り込まれた。「さらに前に進むためには、安全確保の法制化が必要。訴訟の相手側とも協力する必要があるかもしれない」と考え、葛藤はあったが和解に応じたという。

 和解成立の直後、東日本大震災の津波で七十七銀行女川支店(宮城県女川町)に勤めていた長男を亡くした田村孝行さん(57)から打診があり、震災遺族らの集会で講演することになった。田村さんは自身の民事訴訟で敗訴が確定した後も、企業が防災に取り組む必要性を各地で訴えており、約3年前から市川さんと交流してきた。「人の命のために企業の安全強化を求める市川さんの姿は私たちと重なる。集会で再発防止への思いを共有したい」と言う。

 市川さんは「大切な人を亡くした痛みと、その命を生かしたいという気持ちは震災のご遺族たちも同じはず。今の自分の気持ちを率直に伝えたい」と話している。

 集会「東日本大震災から学ぶべきもの」は17日午後1時、仙台市青葉区青葉山の仙台国際センター2階で開かれる。入場無料で事前申し込みは不要。

最終更新:2/14(水) 14:45
毎日新聞