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エアバス、A350-1000型機の飛行試験機を日本初披露。JALはボーイング 777-300ER型機の後継として長距離路線に導入予定

2/14(水) 17:53配信

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 エアバスは2月14日、2018年2月20日にローンチカスタマーのカタール航空へ引き渡すことが予定されているエアバス A350-1000型機の飛行試験機を、羽田空港で報道関係者に公開した。エアバス A350-1000型機が日本で披露されるのは初めてのこと。

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 この寄港は、中東およびアジア太平洋地域での市場調査などを目的としたデモ飛行ツアーの一環。フランス時間の1月26日にトゥールーズ(フランス)を飛び立ち、ドーハ(カタール)、マスカット(オマーン)、香港、ソウル(韓国)、台北、ハノイ(ベトナム)、バンコク(タイ)、シンガポール、シドニー(オーストラリア)、オークランド(ニュージーランド)を経由し、日本時間の2月13日23時54分に羽田空港のC滑走路(34R)に着陸した。このあとは、14日夜に日本を出発し、マニラ(フィリピン)に寄港したのち、トゥールーズへ戻る計画となっている。

 エアバス A350-1000型機は、日本路線での運航も増えているエアバス A350-900型機のストレッチモデル(長胴型)で、全長を7m延長し、標準仕様で40席を増席。プレミアムエリアを40%拡大した。エアバス A350型機全体ではワールドワイドで854機の受注(確定)があり、1月末時点で146機を納入。A350-1000型機は169機を受注している。

 日本の航空会社ではJAL(日本航空)がエアバス A350型機を確定で31機、オプションで25機を発注。確定発注31機のうち13機が今回公開されたエアバス A350-1000型機となっている。

 日本でのお披露目にあたってあいさつしたJAL 代表取締役社長 植木義晴氏は、エアバス A350型機の契約機数などを紹介したうえで、「契約をしたのが2013年10月で、いまから4年半前。私自身がエアバスの本拠地であるトゥールーズに行って、実際に見て、触って、匂いまで嗅いで、これだな、と確信を持って選定したが、契約当日は分厚い契約書があり、飛行機はお高いものなのでトータルの金額を見てサインをするのに手が震えたことを覚えている」というエピソードを披露。

 すでに運航実績を重ねているエアバス A350-900型機について、「世界の空を3年間飛んでいるが、すこぶる好調で、ほとんどノートラブルの状態。よく言われる初期故障などがほとんど見られない。この飛行機を選定してよかったと確信を深めている」とした。

 エアバス A350-900型機については、「2019年度に国内線でデビューする予定」「仕様の詰めは終わっている」と明かす一方、今回日本で披露されたA350-1000型機については「導入時期などは正式決定しておらず、明確に何年度から、などは話せない段階」と説明。「基本的には長距離メインの機体として、ボーイング 777-300ER型機の後継として考えている」と話した。同機の最終仕様についても、社員からの意見公募をもとにこれから詰めていくという。

 同じくあいさつに立った、エアバス・ジャパン 代表取締役社長のステファン・ジヌー氏は、2月14日の披露となったことにちなんで「今日はバレンタインデーなので、ちょっと悩んだが、義理チョコよりカッコイイ飛行機がよいかと思ってA350-1000を持ってきた」と場を和ませたうえで、「植木社長はパイロット出身だからこそ、この重い決断ができたと思う」と、JALへの感謝を示した。

 また、質疑応答で、競合のボーイング製の大型機が日本の航空会社に導入されることが多かった点について、「今回の大きな出来事で風穴が開いて、当社の飛行機のよさをもっと理解していただけることになると思う」と期待を寄せた。

 A350型機については、環境と騒音をポイントに挙げ、「いま飛んでいる飛行機のなかでもっとも静かな飛行機。CO2排出量も大幅に低減できている」と話した。

 ちなみに、今回日本で披露された飛行試験機は登録記号「F-WLXV」の機体で、エアバス A350-1000型機としては飛行試験2号機の位置付け。後部にカーボン調塗装が施され、機内にビジネスクラス、エコノミークラスのシートを配置した、客室環境テストを行なえる機体となっている。本機は2017年6月にパリで行なわれたパリ航空ショーでも展示され、その際にもレポート(関連記事「【パリ航空ショー2017】エアバス、A350-1000型機を飛行展示&機内公開。JALが導入予定」参照)をお届けしているが、改めて紹介したい。

 エアバス A350型機について説明を行なった、Airbus A350 XWB マーケティング・ディレクターのフランソワ・オべ氏は、A350型機を取り巻く市場動向などを紹介。20年後に全世界で約3万5000機の航空機が必要になるとの見込みに加え、特にアジア太平洋地域の成長率が他の地域を凌ぐと説明。アジア太平洋地域は、2016年の有償旅客キロが全世界の30%を占めているが、2036年にはこれが38%まで伸びるとの予測を示した。そして、アジア太平洋地域では、今後20年間で約1万4450機の航空機が必要になり、うちワイドボディ(双通路機)は4000機が必要になると試算している。

 そうした需要に応じるためにエアバスでは、標準仕様で257席のエアバス A330-800型機、287席のA330-900型機、325席のA350-900型機、366席のA350-1000型機とラインアップし、前世代の競合より25%燃費を削減し、「Airspace」ブランドの新客室、パイロットの機種ライセンスにも一定の共通性を持たせた一連のファミリーを用意している。

 エアバス A350型機についてもアジアでの需要が高く、-900型機と-1000型機を合わせた受注数854機に対し、アジア太平洋地域では14航空会社から287機を受注。これはエアバス A350型機全受注の約35%に相当する。

 オベ氏は引き続き、エアバス A350型機の特徴を紹介。オベ氏は、「これから10年間に出てくる飛行機のなかで、完全な新型機はA350だけ。まったく新しい設計」と話し、顧客の要望に応えることと、長距離フライトに対応するための機体であることから乗客の快適性や、環境性能に配慮したモデルであることを紹介。

 このまったく新しい設計とすることで、燃費、整備コスト、運用コストを25%削減。具体的には、機体の70%に複合材のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)や、チタニウムを採用することで軽量化。乗客、荷物を満載した状態が、競合のボーイング 777-9Xに乗客も荷物も載せない状態よりも35トンほど軽いという。

 また、独特のウィングレットを持ち、鳥の飛行からインスピレーションを得て、飛行中の状況に応じて常に最適な状態に変形する主翼や、これまでの実績で信頼性も証明してきたロールスロイスのエンジン「Trent XWB」、そして、信頼性向上とメンテナンスコスト削減を果たすために油圧系統を2系統とするなどシンプルなシステムにしたことなどを紹介。エンジンはA350-900型機で使用されているロールスロイス「Trent XWB-84」よりも推力の大きい「Trent XWB-97」を採用している。

 コックピットについては、タッチパネルを採用しており、パイロットと副操縦士がより協働できるとした。また、このディスプレイはメンテナンスコストも抑えるため、すべて同じパーツを用いている。

 また、エアバス A350-1000型機の機体の特徴としては、着陸装置の主脚(メインギア)がA350-900型機の4輪に対して、6輪のユニットを用いることや、離着陸時の揚力を高めるために主翼の後縁を伸ばし大型化している。

 客室は、同社が「Airspace」のブランドで展開している快適性を追求したものを標準仕様としている。最新のIFR(インフライトエンタテイメントシステム)の採用や、LED照明、デザインなどにこだわり、高い天井により空間の広さを確保。足下は段差の少ないフラットな床面となっている。また、CFRPの採用により機内の気圧や湿度を高め、より低い高度を飛んでいる状態を保てる。オベ氏は「双通路機のなかではもっとも静かな客室。乗客は快適に旅行できる」と自信を見せた。

 エアバス A350-1000型機の飛行試験機は3機で、2016年11月24日(フランス時間)に初飛行。それから1年と経ず2017年11月にEASA(欧州航空安全庁)とFAA(米連邦航空宇宙局)から型式証明を取得している。開発過程においては、オベ氏が「よい意味でサプライズな結果が出ている」と話すほど、空港性能を含めて目標としていた値を上まわる結果が出ているという。

 航続距離はエアバス A350-900型機と-1000型機では同じ8000nm(約1万4800km)。オベ氏は東京を基準にした図を示し、東は欧州からアフリカ大陸北部、西は北米全域に加えてメキシコまでカバーする範囲であることを紹介。A350-1000型機は座席数は増えても、同じ範囲をカバーできることを強調した。

 また、エアバス A350-900型機については、2018年に2つの新モデルを投入。一つはより短い路線に最適化したA350-900 Regional型機、もう一つは航続距離を9700nm(約1万8000km)に伸ばすA350-900ULR(超長距離)型機で、後者はシンガポール航空へ年内に納入される予定となっている。

トラベル Watch,編集部:多和田新也

最終更新:2/14(水) 17:53
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