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三菱電機、センチメータ級測位補強サービスを活用した「悪天候でも安全な自動運転技術」など研究開発成果披露会

2/14(水) 20:36配信

Impress Watch

 三菱電機は2月14日、同社本社において研究開発成果披露会を開催し、その様子を報道関係者に公開した。「スマート生産」「スマートモビリティ」「快適空間」「安全・安心インフラ」「共通技術」の5つのカテゴリーにおいて、日本および米国の同社研究所が開発した20案件を展示。自動車関連で構成されるスマートモビリティでは、4つの関連技術を公開した。

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 公開したスマートモビリティ関連技術は、すでに発表済みの「電子ミラー向け物体認識技術」「自動車向け安心・安全ライティング」と、新たに参考展示した電動車両に搭載される機器の低消費電力化、小型化に貢献する「電動車両を支えるコンポーネント技術」および、準天頂衛星から車載機器まで自動運転の実現を支える「悪天候でも安全な自動運転技術」の4つだ。

■電子ミラー向け物体認識技術

「電子ミラー向け物体認識技術」は、車両後測方の物体を100m程度の遠方から早期にカメラで認識することができる業界最高性能となる技術で、人、乗用車、トラックなどの接近する物体を早期に検出すると同時に種類を識別し、ドライバーに注意を促すことで車線変更時などの事故防止に貢献するという。

 同社のAI技術である「Maisart」を取り入れた独自の「視覚認知モデル」を採用。従来の物体認識技術では30m程度だった最大検出距離を100m程度にまで拡大し、検出精度を14%から81%に向上した。

 今後、夜間や悪天候時、連続するカーブなど、多様な走行環境に対応できるようにアルゴリズムを改良。時系列情報を活用することで、さらなる精度向上などを図るという。

■自動車向け安心・安全ライティング

「自動車向け安心・安全ライティング」は、光でクルマの動きを事前に周囲の歩行者や車両に伝えて事故を未然に防ぐ技術で、新たに「アニメーションを利用して悪天候時でも判別しやすい表示」「ドア開け・後退時に車外センサーと連動してより注意を喚起する表示」「表示図形の見え方を検証できる設計ツール」を開発。2020年を目標に実用化に向けた取り組みを加速する考えだ。

■電動車両を支えるコンポーネント技術

 今回参考展示した「電動車両を支えるコンポーネント技術」は、EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド車)といった電動車両に搭載される機器の低消費電力化、小型化に貢献することができる技術だ。

 PHEV/EV向けモーター、PHEV/EV向け駆動インバーター、SiC採用次世代インバーターなどで構成される。

 モーターの設計には、磁束の歪みを減らし損失を約30%低減した磁気設計、解析時間を8分の1に短縮した冷却設計を採用。インバーター設計技術では、サージ電圧抑制と損失低減を両立したSiC素子駆動、電磁ノイズを高精度予測し機器を小型化したEMC設計を採用。今後、さまざまな車格や駆動システムに適用できる製品群への拡充や、さらなる高性能化に向けた技術の継続進化を行なうという。

■悪天候でも安全な自動運転技術

 また、同じく参考展示とした「悪天候でも安全な自動運転技術」は、準天頂衛星から車載機器まで、幅広く自動運転の実現を支える技術だ。

 GPSなどの情報やダイナミックマップ(高精度地図)の活用に加え、準天頂衛星からのセンチメータ級測位補強サービスを活用することで、高精度な自車位置推定が可能となり、自動運転車両や鉄道、搬送車、農業機械、建設機械などに採用することが可能だという。カメラやレーダー、ソナー、車輪速度センサーや加速度センサーといった車載センサーに加えて、高精度ロケータを活用することで、自動運転システムの信頼性を向上させることができるとしており、「雪や大雨などのセンターラインが見えない悪天候下でも自動運転が実現できる」(三菱電機 常務執行役 開発本部長の藤田正弘氏)という。

■そのほかの分野の技術

 スマートモビリティ以外にも、いくつかのユニークな技術が発表された。

「物体の質感をリアルに表現する技術」は、質感表現技術「Real Texture(リアルテクスチャー)」と呼ぶもので、クルマのインストルメントパネルや、デジタルサイネージに応用。金属などの光沢のある素材を実物のように表現し、高級感のある表示を演出できるという。ディスプレイを見る人の頭の動きをカメラで撮影し、反射光の強度を計算し、リアルタイムに表示物の光沢、陰影の位置を変化させてディスプレイに表示。表示部表面の光反射特性を再現することで、2次元の画像を立体感がある画像として表示する。また、両眼視差を用いる立体視専用のディスプレイではなく、2次元の平面ディスプレイを使用するとともに、人の頭の位置を追跡する汎用的なカメラで構成することから、低コストで実現できる点も特徴だという。今後、素材の質感をよりリアルに表現するための要素開発を進めるという。

「モデルベースAIを用いた機器制御技術」では、同社のAI技術であるMaisartが、試行錯誤を繰り返しながら自動的に制御対象機器モデルをシステム内部に構築。あらかじめ設定した目標達成に必要な制御方法を、強化学習を用いて学習し、機器を制御することができる。実証実験では、円形の迷路でボールを中心のゴールまで誘導する目標を与えるだけで、制御プログラムを開発することなく、自ら制御方法を学習してゴールに到達することができたという。

「コンパクトなハードウェアAI」では、Maisartの1つであるコンパクトな人工知能の計算順序の効率化、回路構成の最適化によって、小規模なFPGAにも実装できるようにした。リアルタイム性の向上と低コストを実現し、家電やエレベータ、自動運転などに利用される高精度地図などの人工知能の適用分野拡大に貢献することを目指す。「これを活用することで、演算時間を10分の1に短縮することができる」という。

 また、「触りたくなるインターフェース」では、視覚障害者でも手で触るだけで直感的に操作できるインターフェースを開発。電源のON/OFFや設定の確認、および変更の操作などが容易にできるようにした。盲学校と空調機器向けのリモコンを共同で開発。操作部の形状や位置、動きによって、電源・運転モード、設定温度などの機能を操作でき、現在の設定状況なども分かるようにした。今後、家電製品や産業機器などのさまざまな製品やシステムにおける五感を対象としたインターフェースへと進化させるという。

 三菱電機 常務執行役 開発本部長の藤田正弘氏は、「2017年度は、売上高の4.8%にあたる2120億円を計画しており、2017年12月末時点で、計画の72.5%にあたる1537億円の実績がある。2018年度も売上高の5%前後の研究開発費を維持していくことになる」と説明。

「現在の事業の徹底強化をしっかりと進めていくのに加えて、技術シナジーや事業シナジーを通じたさらなる価値を創出し、あるべき姿の実現に必要な未来技術の開発、共通基盤技術の深化を進め、短期、中期、長期の研究開発をバランスよく推進していく。異なる技術や事業を組み合わせて新たな価値を創出するという点では、自動運転の例が挙げられる。ここでは、センシング技術や車両制御技術などを組み合わせた自律型システムと、準天頂衛星やITSなどを組み合わせたインフラ協調型システムの両面から、安全、快適な自動運転社会の実現に貢献していく」などとした。

 また、三菱電機の柵山正樹社長は、「研究開発成果披露会は今回で35回目となる。三菱電機が創業100周年を迎える2020年度には売上高5兆円以上、営業利益率で8%以上を目指しており、それに向けて、2017年度は過去最高の業績を見込んでいる。だが、2020年度は通過点に過ぎず、成長に向けて継続的な研究開発投資を行なっていく。また、社会課題の解決も重要なテーマであり、事業を通じて環境問題の解決にも貢献していきたい」などと述べた。

Car Watch,大河原克行

最終更新:2/14(水) 22:52
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