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ハリさんが論争に拍車 「チョレイ」はうるさいか 最年少日本一の張本智和 聞けるのもあと数年?

2/14(水) 16:30配信

産経新聞

 1月に東京体育館で開催された卓球の全日本選手権男子シングルスは、14歳の張本智和(エリートアカデミー)が最年少優勝を成し遂げて幕を閉じた。新聞やテレビがこぞって天才少年の活躍を取り上げた一方、インターネット上では彼の代名詞にもなっている「チョレイ」という雄たけびをめぐり、「うるさい」「卓球では当たり前のこと」などと論争が巻き起こっている。

 ■「チョレイ」に賛否両論

 大会最終日に行われた男子シングルス決勝では、張本が通算10度目の優勝が懸かっていた水谷隼(28、木下グループ)を序盤から圧倒した。得意のバックハンドを武器に、強化してきたフォアハンドを織り交ぜてリオデジャネイロ五輪銅メダリストを翻弄。最年少8強入りを果たした昨年の世界選手権に続いて4-2で水谷を撃破し、日本卓球界の歴史を塗り替えた。

 「憧れの選手」と公言する水谷に対し、張本は自らを鼓舞するように序盤から雄たけびを上げていた。優勝を決めた瞬間こそ無言で父でもある宇コーチの下へ駆け寄ったが、決勝の模様がテレビで生中継されたこともあってネット上ではこんな声がわき上がっていた。

 「チョレイうるさい」「強いのは分かったけど、相手へのリスペクトを感じられない」「うるさくて試合に集中できない」

 1月21日に放映されたTBSの報道番組『サンデーモーニング』で、「週刊御意見番スポーツ」のコーナーで野球評論家・張本勲氏(77)が、全日本選手権で4強入りした張本のニュースを受けて「ああいう子は気が小さいんですよ。感情を抑えきれない。ワァーッと出しちゃう。本当に根性のある人はああいう態度は取らない。男は」と発言し、論争に拍車をかけた。

 一方で、卓球経験者とみられるネットユーザーからは「卓球界では当たり前。実際に会場で見ればもっとうるさい選手はたくさんいる」「声を出して鼓舞するのはスポーツでは普通のこと」と理解を示す声も多かった。

 ■ルール的には「全く問題なし」

 では、実際にルール上で張本の「チョレイ」に問題はあるのか。卓球には行うべきではない行為を「バッドマナー」として定めている。たとえば審判への執拗な抗議行為のほか、相手選手や観客への暴言や威嚇したりするような行為がバッドマナーとみなされるという。

 張本の雄たけびが当てはまるとすれば「相手選手への威嚇」だが、これについて日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長(58)は「全く問題ない。相手に向けて拳を握ったりするのは良くないが、張本の場合は相手選手に背を向けてやっている。威嚇行為には取られない」と説明する。さらに、最近になって批判が高まっている大相撲の横綱白鵬の張り手・かち上げ問題になぞらえ、「張り手もかち上げもルール違反ではないけど、日本は強い者に品格を求める文化がある。張本がチャンピオンになったからこその批判だろうが、まだまだ彼は14歳の中学2年生ですよ」とおもんばかった。

 ■雄たけびは自然になくなるもの

 男子代表の倉嶋洋介監督(41)は全日本選手権前、張本に「声を出すな」と注意した。「全試合100%でいったら疲れる。少しずつ調子を上げていけ」と諭した倉嶋監督に、張本は「はい分かりました」と一度は納得。しかし、蓋を開けてみれば張本はジュニア男子の試合から気合全開で「チョレイ」を連発した。

 倉嶋監督は「彼は声を出して調子を上げるタイプ。あそこだけが本当に中学生らしい部分だと思う。あれが抜けちゃったら大人、ベテラン選手みたいになる」と苦笑した。卓球界では、小さい子にはまず声を出して気持ちを盛り上げていくように指導するもので、中高生の大会では叫びながら卓球台の回りを駆け回ることもしばしばなのだという。

 ■他競技でも雄たけび巡り賛否

 スポーツ界ではしばしば、選手の雄たけびやマナーをめぐって「品格」という観点から論争が巻き起こってきた。女子テニスではマリア・シャラポワがプレー中に発するうなり声に2011年、元世界ランク1位のキャロライン・ウォズニアッキが、「うなり声でボールの速度が正確に判断できない」と訴え、禁止するよう訴えていた。卓球でいえばリオデジャネイロ五輪で銅メダルを取った際に、水谷が床に倒れ込むような形で行った派手なガッツポーズにも賛否が起こった。

 「強いから注目されるだけ」と倉嶋監督が言うように、賛否は注目の裏返しでもある。もっとも倉嶋監督に言わせれば雄たけびは年齢とともに自然となくなっていくものなのだという。張本自身も全日本の合宿では当初、「チョレイ」全開でやっていたが、現在はあまり声を出さずに静かに練習に取り組んでいるという。

 「試合の中で『次はどうしよう』と頭で考えると、声は出なくなる。その分、勢いはなくなるけど、卓球がうまくなっていく感じ。彼の場合は声を出しながら、ちゃんと考えているんですけどね(笑い)。でも、僕としては(雄たけびが)あまりなくなってほしくない」と倉嶋監督は愛息について語るような優しい表情で、成長期にいる張本の変化の一端を教えてくれた。

 張本もあと数年もすれば、雄たけびもなくなり成熟した大人の卓球へと変貌を遂げるはず。ともすれば、闘志を前面に押し出したプレーと「チョレイ」の雄たけびを聞けるのも貴重なのかもしれない。(運動部・川峯千尋)

最終更新:2/14(水) 16:30
産経新聞