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余命宣告から16年間生き、バレンタインデーに逝った愛猫「ルナ」

2/14(水) 16:31配信

sippo

 保護猫の譲渡会で、子猫「はっぴー」を初めて見た時、どこか懐かしい気持ちがわいてきた。かつて一緒に暮らしたキジ猫の「ルナ」に似ていたからだ。最近になって、その姿をよく思い出す。もうじき「ルナ」の命日だ。

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 今から3年前の2月14日。よく晴れたバレンタインデーの朝、「ルナ」は16歳半で旅立った。

 1年間の闘病の末の別れだった。今の時代、16歳では長寿ともいえないだろうけど、ルナにとっては、“思いもかけない”長さだった。保護してすぐに余命の宣告をされていたからだ。

 家の近くでルナを保護したのは、1998年。生後1か月半くらいの子猫だった。目はぱっちりとしていたが、首が少し斜めに曲がっていて、足元がふらついていた。動物病院に連れていくと、「聴力だけでなく、脳に障害がある」「性格や行動に問題が出てくるだろう」といわれた。

 私にとっては2匹目の飼い猫だったが、障害と聞いて驚いた。もっと驚いたのは、説明の最後に「安楽死も考えて」という言葉が出てきたことだった。

「安楽死なんて、どうして」と聞きなおすと、「それだけ大変だということです」という。さらに獣医さんは「1年くらいしか生きられないかもしれませんが、覚悟はありますか?」と確認してきた。

 私は息を整えて、「あります」と答え、ルナを抱きあげたのだった。短い月日でもいいから、この小さく頼りない子猫と過ごそうと思った。

 ルナとの生活は確かに手がかかった。よく食べて足腰は丈夫になったが、トイレを覚えない。トイレでもするけれど、布団や洋服の上でもする。ふわふわな物は何でもトイレというようだった。それでも、あどけない寝顔を見ると、いとおしく、「何とかしてあげたい」という気持ちがわき、一生懸命に世話をした。

 ところがある時、私の顔を見て急に驚いたように飛びあがり、部屋を駆け回った挙句、洗面所に隠れてしまった。

 獣医さんに尋ねると「そういうふうに記憶に関係する問題も出てくると思います」という。つまり、脳の障害で、一緒にいる私のことを忘れてしまうというのだ。月日とともに絆が深まるどころか、飼い主を忘れていく……。

 それなら、毎日「はじめまして」というつもりで付き合おうと思った。首をかしげて、「誰?」というふうに見上げる様子は、独特で、愛らしかった。

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最終更新:2/14(水) 16:31
sippo