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フォルクスワーゲン、新ディーゼルエンジン日本導入記念イベント開催。清水和夫氏による基調講演レポート

2/15(木) 11:10配信

Impress Watch

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは2月14日、同日に発売した「パサート TDI」「パサート ヴァリアント TDI」の日本導入記念イベントとして、都内でディーゼルエンジンに主眼を置いたトークショーを開催した。

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 このイベントでは、自動車・エネルギー関連に明るい国際モータージャーナリストの清水和夫氏の基調講演が行なわれるとともに、独フォルクスワーゲンで先進ディーゼルエンジン開発部長を務めるエッケハルト・ポット氏がフォルクスワーゲンのディーゼルエンジン開発とその将来について語った。本稿では清水氏の基調講演を中心に紹介したい。

■新開発の「EA288」エンジン搭載

 同社のディーゼル車としては、2015年9月に独フォルクスワーゲンが北米で販売するモデルでエンジン制御プログラムの不正があったことが発覚。以降、最高経営責任者(CEO)のマルティン・ヴィンターコルン氏が辞任し、ポルシェAGの会長を務めるマティアス・ミュラー氏が独フォルクスワーゲンのCEOに就任して車両開発部門の組織改革を行なうとともに、リコールなどの対策を実施。これに伴い、フォルクスワーゲン グループ ジャパンもディーゼル車の日本導入を見送るなどしていたが、正式に日本導入することを決定。

 今回導入されたパサート TDI/パサート ヴァリアント TDIについては別記事で紹介しているが、最高出力140kW(190PS)/3500rpm-4000rpm、最大トルク400Nm(40.8kgm)/1900rpm-3300rpmを発生する新開発の直列4気筒DOHC 2.0リッターディーゼルターボ「EA288」エンジンを搭載。エンジン制御プログラムの不正があったのは「EA189」エンジン(1.2リッターTDI、1.6リッターTDI、2.0リッターTDI)であり、問題のあったエンジンとは異なる。

「EA288」エンジンでは、排ガスの流れを制御する可変機構の可動式ガイドベーンを採用。ターボチャージャーのタービン側に装着したガイドベーンを、低回転の状態では開口面積を小さくすることで排気の流速を上げて過給効率を高め、高回転の状態では開口面積を大きくすることで抵抗を減らし、排気圧力を下げ損失を減らす。こうした制御を行なうことで、過給効率を上げて効率のよい最適な過給圧を得られるようになったという。

 一方、ディーゼルでは燃焼温度が高くなると発生するNOx(窒素酸化物)と、低燃焼時に生成されるPM(粒子状物質)をどのように削減するかという課題があるが、「EA288」エンジンではこれらの削減技術として約2000barという超高圧で燃料の軽油を燃焼室内に直接噴射する「電子制御式コモンレールシステム」、排気ガス中のPMを吸着する「DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)」、尿素水溶液「AdBlue」を使用して排気ガスを窒素(N2)と水(H2O)に還元する「SCR(選択触媒還元)システム」、ターボチャージャーの下流から排出ガスを取り出して再びエンジンに循環させることで燃焼温度を下げる「EGR(排気再循環)システム」を採用している。

 なお、独フォルクスワーゲンは2017年のフランクフルトモーターショーにおいて、グループ全体で2025年までに計80車種の電動車両を新たに販売する新戦略「Roadmap E」を発表。電動化に舵を切ったように見えるが、日本に導入されるパサートシリーズを一例にとっても1.4リッター&2.0リッターのガソリンエンジン、PHV(プラグインハイブリッド)、そしてディーゼルエンジンを搭載するなど、多岐にわたるパワートレーンの開発を行なっていることも今回のイベントで強調された内容の1つになっている。

■清水氏による基調講演

 今回の日本導入記念イベントでは、初めにフォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役社長のティル・シェア氏が挨拶。シェア氏は輸入車におけるディーゼルエンジン車の概況について触れ、「過去数年間、輸入車のディーゼルエンジン車は非常に大きく伸びてまいりました。パサート TDIシリーズをラインアップに追加することによって、お客様からの要望に応えられると考えています。現在、自動車業界は大きな変化を迎えています。特にパワートレーンの分野においては何年にもわたって内燃機関が支配してきましたが、今や電動パワートレーンが台頭してきており、社会全体がエネルギー供給の課題に注目しています。今回のトークセッションではディーゼルエンジンの役割を語っていただきます」とコメント。

 次に登壇した清水氏は「持続可能なモビリティとは~内燃エンジンの役割~」と題した基調講演を実施し、交通社会やモビリティが今後どのようになっていくのかが語られた。

 冒頭、清水氏はモビリティ社会では大気汚染や地球温暖化、交通渋滞、交通事故、エネルギー、自然災害といったさまざまな課題があると語るとともに、排気ガスの問題について触れ、「世界各国をまわったうえで、実は東京の空が一番青いのではないかと気づきました。これは日本がマスキー法を受け、昭和53年規制という厳しいNOx規制を1978年に施行したおかげで、自動車業界にとっては厳しいものでしたが、ずいぶん早い時期からNOxとCO2を低減する両方の技術を開発するというのが日本の自動車メーカーの1つのチャレンジとして歴史のなかにありました。アメリカはCO2の問題よりもNOxの問題が重視され、ヨーロッパではNOxの問題よりもCO2の問題を重視してきたという歴史があるので、日米欧という先進国の歴史を振り返ると、日本はヨーロッパの厳しいCO2の規制、アメリカの厳しいNOxの規制というその両方をずいぶん早い段階からやってきたという歴史があります。その政策と技術のチャレンジが、現在東京の空が一番青いのかなというところにつながっていくのではないか」とコメント。

 また、清水氏は欧州をはじめとした地域で一定数以上の販売を行なった自動車メーカーに対し、ある年に販売した全車両のCO2排出量を平均化し、その値が規制値を下まわっていなければ罰金を支払わなければならないという「CAFE(Corporate Average Fuel Economy:企業平均燃費規制)」について触れ、「CAFEでは2021年が1つのターゲットになっており、ヨーロッパでは95g/km。高級車メーカーもスポーツカーメーカーも、平均燃費を95g/kmにしなさいとなっており、1g/kmでもオーバーするとかなり厳しい罰金が科せられます。ポルシェやランボルギーニも必死になって95g/kmというターゲットを守ろうとしています。今年のジュネーブショーではフェラーリが『ラスト・フェラーリ』を出すそうで、何が最後かというとエンジン搭載車が最後で、2019年以降はすべてPHVのフェラーリ、PHVのマクラーレンになるそうで、スーパーカーもいよいよエンジンだけで走れる時代がそろそろ終わりに近づいてきた、という動きがあります」。

「またヨーロッパではこのままいくと2030年に40g/km台になり、これは既存の技術でいくと到底届かない数値になるので、ダイナミックに電動化していく。電動化したとき、例えばPHV化したときにヨーロッパのレギュレーションだと電力のCO2が全部にカウントできるという少し現実から乖離した計算値が使えるので、法規上はかなりPHVは有利になるし、あるいはピュアEVの台数を増やして平均値を下げるという施策が行なわれています」と、規制に対する自動車メーカーの動向について解説する。

 一方でディーゼルエンジンについても紹介を行ない、1892年2月23日にルドルフ・ディーゼル氏がディーゼルエンジンの特許を取得したことなど歴史について振り返り、「一頭の牛から肉をさばくとヒレ肉と脂身が取れますが、原油から精製してガソリンを取るときに必ず重油と軽油が取れます。重油は船舶等で使うとして、ガソリン車ばかりの日本の場合、軽油はどうしても余ってしまう。この余った軽油を海外に再輸出しなければならなかったので、マイレージでいうとCO2が出てしまうので程よく軽油も使えるようにしたいということで乗用車ディーゼルの話は当時からあった。ただ、不正軽油という問題もあり、“悪しきディーゼル”を一掃したという意味では当時の石原都知事の行ないもわるくなかったなと思います」と述べるとともに、「最近のアメリカの情報ですが、GMがディーゼル燃焼を『タイタン』と呼ばれるスーパーコンピュータを使ってモデリングして開発を行なっているそうです。ディーゼルは自着火するのでいつどうなっているのかよく分からないそうなので、スーパーコンピュータを使ってスワール(混合気の横渦)かけて燃え方の研究を行なっているようです。また、2月8日(現地時間)にはフォードが1.5リッターのエコブーストのディーゼルがアメリカで市販されることが発表されました。アメリカという国は多様性を持っており、ディーゼルをやらないのではなくて色々なニーズに合わせて市販化している証です」と、各国の動向などについて報告を行なった。

 なお、エッケハルト・ポット氏によるフォルクスワーゲンのディーゼルエンジン開発とその将来についての講演の模様は別記事でレポートする。

Car Watch,編集部:小林 隆

最終更新:2/15(木) 12:22
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