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パッションあふれる作品が見てみたい、ガレッジニアで優勝すればアメリカ行き! ――「ETロボコン2018」

2/15(木) 16:55配信

MONOist

 ETロボコン実行委員会は2018年2月14日、「ETロボコン(正式名称:ETソフトウェアデザインロボットコンテスト)2018」の開催概要について発表した。ETロボコンは、組込みシステム技術協会(JASA)が主催する、組み込みエンジニアの人材育成と教育機会の創出を目的とするロボットコンテスト(以下、ロボコン)。2002年から年1回開催され、2018年で17回目となる。同ロボコンでは、同じ走行体(ハードウェア)を用いて、ソフトウェアやモデリングの良しあしを競い合う。協議会と併せ、モデリングのワークショップや懇親会も実施する。

「伸縮する謎のしっぽ」、ちょっぴりヒント。伸ばすと……、走行体の姿勢が変わる……でしょ?

 ETロボコン2018の申し込み受付期間は2018年3月1日~4月5日 17時まで。大会公式ページから登録できる。参加カテゴリーが「大学、短大、専門、高校、高専」(学生)の場合のみ「仮登録制度」が利用でき、2018年4月6~26日の間で登録キャンセルができる。従来通り、地区別の実施説明会、本番に向けた共通技術教育や地区が任意実施する教育、2回の試走会、全国12カ所の地区大会を開催していく。

 地区大会の成績優秀チームは2018年11月に横浜市のパシフィコ横浜で開催する「組込み総合技術展 Embedded Technology 2018(ET2018)」で併催のチャンピオンシップ大会に出場して優勝を競うことになる。

 ETロボコンは以下の3カテゴリーで実施する。

・デベロッパー部門/プライマリー・クラス:モデリング開発初心者・初級者。出場3回未満のチームが対象
・デベロッパー部門/アドバンスト・クラス:モデリング開発応用編
・ガレッジニア部門(2017年新設):条件規定が緩めな、自由開発部門

 デベロッパー部門は従来のオーソドックスなETロボコンのスタイル。「5年後に活躍するエンジニア育成の場」として、モデリング開発と競技を通じてトレーニングすることを目的とする。「教育用レゴ マインドストーム(LEGO MINDSTORMS)」を使用した大会が規定する走行体(ロボット)とバッテリーを必ず用いなければならないため、ソフトウェアの違いだけで競うことになる。UMLなどを用いた分析と設計モデリングに関してのモデル審査と、設計モデルから実装したロボットを走行させる競技を実施し、総合的に評価する。

 「今の若手は一からシステムを開発する機会がなく、派生開発が多い。そういった中で、この競技を題材に、モデリング技術を一から学んでもらえる機会」と、今回から本部審査委員長を務める富士ゼロックスの土樋祐希氏は話す。土樋氏は2010年から富士ゼロックス社内のETロボコン活動に携わり、2012年と2014年にはモデル部門で全国優勝を果たしている。2015年から本部審査委員として活動してきた。

 プライマリー・クラスは、とにかく「ソフトウェアの内容をモデルで正しく表現すること」が目標となる。競技ではライントレース(規定のライン上を走行させる)と難所攻略に挑む。出場経験者や事務局担当者などのレクチャーを受ければクリアできる程度の難易度だ。アドバンスト・クラスは、さらに「競技の最適解をモデルを使ってどう解くか?」が目標となる。競技では走行体にゲームをクリアさせながら、制御技術を競うことになる。

 ガレッジニア部門は上記2部門とは大きくことなり、ハードウェアに関する規定があまりなく、かつモデル審査がない。「5~15年後に活躍するエンジニア育成の場」としている。「ガレッジニア」は「ガレージ」と「エンジニア」を組み合わせた、JASAが考えた造語。開発テーマは、実行委員会があらかじめ提示する個別テーマから選定してもよいし、ユーザーが勝手に決めてもよい。

 開発条件は、アクチュエータとセンサーをそれぞれ1つ以上使用しソフトウェアで制御することと、実機製作費用(試作部品は含まず)を50万円以内に収めるだけ。マインドストームを利用するかは自由。審査は、期日までにYouTubeにアップした動画と、アピールシート、部品表に基づいて実施する。さらにETロボコン会場で開催する発表会で、開発したシステムに関するプレゼンテーションとデモンストレーションを実施する。結果は、それらの総合評価とする。

●ETロボコン2018、ガレッジニア部門にもっとパッションを!

 まず今回は、自由開発部門である「ガレッジニア部門」に力を入れる。同部門は今回で2回目の開催となる。2017年大会は18チームが参加。初代優勝者となったのは日立産業制御ソリューションズの「追跡線隊HiICSイエロー」だった。お店のお客さんにショッピングカートがいそいそとついてくる、手ぶらショッピングを実現できる仕組みだ。

 さらに今回は30チームの参加を目指す。「2017年大会では、技術の裏付けはしっかりしているものの、パッション(情熱)が少なかった。今回は『ばかばかしいのに、技術的な裏付けがある』『よく分からないけど、面白そう!』と感じるような、もっとパッションのある作品を期待したい」(ETロボコン実行委員会 共同企画委員長、アフレル 代表取締役社長 小林靖英氏)。

 実行委員会としても、ガレッジニア部門をより盛り上げるためにいくつかの施策を実施する。まずは実行委員会自身がガレッジニア部門にオープン参加(審査対象にはならない)し、身を挺して「パッション」や「面白い」を追求する。「われわれは、やりますよ!」と小林氏は意気込む。

 さらに今回、優勝チームに豪華な副賞を用意する。2019年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催する、消費者向けエレクトロニクス 展示会「CES 2019」への招待だ。「過去の日本の歴史では、海を渡ったものが未来を切り開いてきた。海外の現場で、新しい創造性やワクワクを体験してもらい、若者のパッションに火を点けたい」と小林氏は話す。「最近は、海外に興味がない学生が増えている。理由は『現地に行かなくてもネットに情報があるから』だという。日本は住み心地がよいこともあり、海外に興味がないのかもしれない。しかしこのままでは“井の中の蛙”になってしまう。若い人にこそ、CESに行ってほしい。世界を見ると、人はとても変わる」。

 特別審査員は2017年と同様に、スタートアップ企業やメーカーの新規事業担当、ガジェット研究者など“豪華な面々”を予定し、パッションに火を点けるようなワークショップも開催するという。

●ETロボコン2018のデベロッパー部門は「新技術への挑戦」

 ETロボコン2018のデベロッパー部門における変更点の1つは、2017年大会で既に予告があったように、走行体の仕様の一部に変更があることだ。プライマリー・クラスとアドバンスト・クラス、両方の走行体が変更の対象だ。具体的には、まずタイヤが変更される。これまで使用してきたタイヤの生産が終了し、なおかつ実行委員会側で確保していた在庫も尽きてしまったためだ。従来のタイヤ直径は8cmだったが、今回から10cmとなり、見かけも少しゴツい感じになる。走行体の本体は前年までのものがそのまま利用できるが、従来のプログラムのままでは走行が不安定になる。今回は新タイヤの制御へ補正するための倒立振子ライブラリも提供する。

 アドバンスト・クラス用の「HackEV」には、新たに「伸縮する謎のしっぽ」が付く。このしっぽは、モーター駆動で伸びたり縮んだりする。なぜこれを付けたのかは「それを言ったら面白くない」(本部技術委員長 江口亨氏)ということで、使ってみてのお楽しみ。「実際に使ってみると、意味が分かるかもしれない」。

それぞれの部門の変更点

 プライマリー・クラスについては、内容はほぼ従来通りとなる。難易度も変わらない。走行コースは以下の図のようになる予定だが、開催までに少し修正が加わる可能性がある。ガレージインの前に、以前の大会であったシーソーがサイズ変更しつつ復活する。モデル審査については、「アドバンストへの足掛かりになるような項目」が追加される予定だという。

 アドバンスト・クラスのゲームには、新たに「AIアンサー」と「カメラ画像を利用するブロック並べ」が加わり、旬な新技術に触れられるようになっている。AIアンサーは、機械学習や深層学習といったAI技術を利用して、何らかのゲームを解かせるもの。詳細は現時点で明かせないという。ブロック並べについては、カメラ画像解析が利用できる。今回、さらにゲームクリアの難易度が高まるのかと思いきや、「ゲームクリアの難易度自体はかえって低くなると思う」と江口氏は答える。

 またアドバンスト・クラスのモデル審査については、従来の網羅的な記述を評価する形式から、記述内容を絞って、質の向上を目指す規約とする予定だという。アーキテクチャを重点的に見ていくとのことだ。

●2018年は新しいコンテストも新設、テーマは「IoT」

 JASAは2018年、「IoTイノベーションチャレンジ」を新設する。以前からJASAが実施してきたIoTハッカソンをリニューアルし拡大するものになる。「ETを中心としたIoTビジネス全般に取り組めるエンジニア育成」をテーマとする。

 これまでのETロボコンやIoTハッカソンが、ハンズオンメインでかつエッジが中心であったところ、今回はクラウドやビジネスまで含めたところまでをカバーし、教育的な活動をもっと重視する。このコンテストはET2018の3日間の会期の中のみで実施する。

 申し込み概要や教育プログラムなどの詳細の公表は、2018年5月のゴールデンウイーク後くらいを予定しているという。

最終更新:2/15(木) 17:05
MONOist