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<米高校乱射>あふれる銃、規制不備 容疑者、身元調査パス

2/15(木) 21:24配信

毎日新聞

 米南部フロリダ州の高校で17人が死亡、15人以上が負傷した銃乱射事件が14日発生したが、米国で銃規制が進む可能性は低いというのが一般的評価だ。同様の事件は頻発し、3億丁ともいわれる銃器は社会にあふれたままで、自殺を含め年間3万人が犠牲になる。なぜか。社会的、政治的背景を探った。【ワシントン高本耕太】

【写真特集】銃乱射事件が起きたフロリダ州の高校

 銃規制を提唱する非営利団体によると、米国の学校で起きた発砲事件は今年だけで18件。今回、マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた乱射事件も含め、銃犯罪は教育の場にもまん延している。

 フロリダの容疑者が事件に使用した銃は、AR15型半自動小銃だと米主要メディアは報じている。銃規制に強く反対するロビー団体の全米ライフル協会(NRA)などは「主に狩猟スポーツ用」と説明。しかし、米軍のM16型の市販モデルで、殺傷力は高く簡単に全自動小銃に改造できる。昨年10月に58人が死亡し米史上最悪の被害を出した米西部ネバダ州ラスベガスの乱射事件など、大量殺傷事件に繰り返し使われてきた。

 同型による乱射事件が起こるたび「戦場兵器は要らない」との議論が起こるが推定約500万~1000万丁が米国内に流通する。

 銃規制法制も不備が目立つ。CNNテレビによると、今回の容疑者は過去1年以内に、銃を「正規に購入した」と伝えた。高校で他の生徒を脅迫するなど問題行動で退学処分になったとされるが、身元調査にも合格。購入当時、18~19歳とみられる。CNNは、連邦法は拳銃の販売を21歳以上に制限するが、「(より殺傷能力の高い)ライフルは18歳でも合法的に入手できる」と指摘する。

 民主党のマーフィー上院議員は14日の事件後、議場で演説し、「米国でしか起こらない大量殺人のまん延だ。私たちの不作為の結果だ」と訴え、再発防止に向けた議会の行動を呼びかけた。同議員が選出された東部コネティカット州では、2012年に小学児童ら26人が犠牲になったサンディフック小学校銃乱射事件が発生した。当時のオバマ大統領は涙ながらに規制強化を訴えたが、具体的効果は今も見られない。

 ◇対策阻むロビー団体

 「学校での銃撃事件が絶えない。(昨年10月に58人が死亡した)ラスベガスの乱射事件以降、大統領は何をしてきたのか」

 1月24日のホワイトハウス記者会見で、そんな質問が飛んだ。サンダース大統領報道官は、「政権はギャング摘発など犯罪撲滅に力を入れている」などと繰り返したが、政権の銃規制への姿勢には言及しなかった。トランプ政権は銃乱射事件の直後に規制論議が高まるたび「今は犠牲者を悼む時で、政策を議論すべきではない」として、対応を避けてきた。「では、いつ議論するのか」。サンダース氏はその問いに答えぬまま、会見場を後にした。

 今回の事件後もトランプ氏は犠牲者らへの「祈り」はツイートしたが、銃規制への言及はない。

 米国で銃規制が進まない背景には、銃の保有や使用を推進し規制に徹底して抵抗するNRAのようなロビー団体の存在がある。さらに、銃所持の権利を「個人の主権」の象徴ととらえる国民感情も根強い。中間選挙を11月に控え、有権者や有力支援組織であるロビー団体の支持を失う危険のある政策に、与党共和党が本腰を入れるとは考えにくい。規制強化を支持する民主党の支持者にも規制反対論者は少なくない。

 NRAは絶大な資金力で米政界に影響力を誇ってきた。2016年大統領選では、トランプ陣営に3000万ドル(約31億円)を献金し当選に貢献した。NRAの支援が、共和党議員の当落を左右することがあるともいわれる。

 規制強化を掲げたオバマ前政権時(09~17年)には「銃が買えなくなる」との懸念から駆け込み需要が増え、銃製造業界が活性化。NRAの会員数、資金力ともに上昇したとの皮肉な展開もあった。

 米国民の銃に対する意識には、自衛が原則だった開拓時代の伝統や、民兵組織で共同体を守り英国と独立戦争を戦った歴史も反映されている。

 ピュー・リサーチ・センターが昨年3月に行った世論調査では、銃保有者の74%、非保有者でも35%が、銃を保有する権利は個人の自由に欠かせないものだと答えた。

 自衛のための武器保有の権利を定めた合衆国憲法修正2条の否定は、米国の「価値観」の否定とも捉えられかねない。

 銃規制強化を唱える民主党でも、南部や西部など自衛・自助の意識が根強い地方では、銃規制に触れない議員が多い。

最終更新:2/16(金) 12:07
毎日新聞