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【舛添要一の僭越ですが】 医師不足のまま働き方改革はできない

2/15(木) 16:03配信

ニュースソクラ

働き方改革が労働力の偏在まで直せるなら大きいが

 今国会の大きな焦点になっているのが働き方改革である。政府は、8つの関連法案を一括して、2月下旬に提出する予定である。

 その内容は、(1)労働時間の上限規制(月平均60時間、繁忙期は単月なら100時間未満、翌月とあわせた2ヶ月平均では80時間。研究職を除く)、(2)
脱時間給制度(労働時間ではなく成果で賃金を決定、高度プロフェッショナル制度)、(3)同一労働同一賃金(正規労働者と非正規労働者の間の不合理な差をなくす)。

 残業規制については、長時間労働や過労死の問題がクローズアップされている今日、経営側も労働側も受け入れそうである。脱時間給制度については、働き方については、高度プロフェッショナルな職人芸とベルトコンベアー式工場での作業との間に様々なバリエーションがあるので、線引きが難しい。労働側は「残業代ゼロ法案」という批判を変えておらず、過労死を促進するとしている。

 また同一労働同一賃金についても、何をもって「同一労働」というのか、その基準、判断が容易ではない。かえって適材適所の人材を確保できにくくなるかもしれない。経営側が難色を示している。

 国会でも与野党の攻防が続いている。これは日本の長年の労働慣行を大きく変える改革であり、現場での反対論をも強い。具体的な例をあげる。

 最近、時間外労働で、杏林大学医学部附属病院やTBSが労基署から是正勧告を受けたが、医師、マスコミとも、現場はきれい事では済まない状況にある。

 杏林大医学部付属病院では、医師は週39時間の所定労働時間で、月最大70時間の残業時間が定められているが、実際は約700人の医師のうち約2%が過労死ラインの月80時間超の残業をしていた。 

 TBSは、番組制作部門の社員10人に労使協定(三六協定)で定められた1カ月80時間を超えて時間外労働をさせたという。

 中小企業などは、このような病院やマスコミと同様な状況にあるのではなかろうか。だからこそ、労働時間の制限が必要になってくるのであり、それは大きな意味を持つ。しかし、単に残業時間を減らすことが、経営者にとっても、労働者にとっても、プラスよりもマイナスのほうが多くなるなら、それは改革の名に値しない。

 私は、厚労相のとき、閣議決定を11年ぶりに見直して医師数を増やす決定をした。労働大臣としては医師の長時間労働は認められないが、厚生大臣としては医療現場崩壊阻止のため医師に無理してもらうしかない。そこで、この苦悩の決断がもたらした政策が、医師数を増やすというものであった。

 例えば、病院で勤務医を2人から3人に増員すれば、医療に支障を来さずに、医師の残業も減らすことができる。つまり、医師数を増やすという政策を実行しないままでは、働き方改革は不可能である。医師が長時間労働しなければ、助かる命も助からなくなるからである。

 働き方改革が医師不足、医師の偏在という問題の解決に繋がることを期待したい。また、全国の学校では、部活動などで先生たちが過労状態になっているが、部活動に外部のスタッフの支援を求めるなどの解決策が提案されている。

 今回の雇用関連法案が、このような日本社会の諸問題にメスを入れることになれば、それは我国の仕組みを根本的に変革するきっかけとなりうる。逆に言えば、我々が直面する様々な歪みを正さないかぎり、働き方改革は実現しない。

 働き方が問題にされなくても、医師不足や教師の過剰負担は改善されねばならないのであり、今回の法案がそれを後押しするなら大きな意味を持つ。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:2/15(木) 16:03
ニュースソクラ