ここから本文です

お使いのInternet Explorerは古いバージョンのため、正しく表示されない可能性があります。最新のバージョンにアップデートするか、別のブラウザーからご利用ください。
Internet Explorerのアップデートについて

フィギュアスケート“表現力”の本質とは何か? 羽生、小塚が大事にする観客との一体感

2/15(木) 17:10配信

VICTORY

熱戦が繰り広げられる平昌オリンピック、16日からはついにフィギュアスケート男子シングルが始まる。フィギュアスケートをテレビで観戦しているとよく耳にする“表現力”。この“表現力”とはいったい何か? どのように採点に結び付いているのか? そして、選手はどう向き合っているのか? スケーターたちのプログラムをより深く味わうために、“表現力”の本質を読み解いていきたい。(文=沢田聡子)

“表現力”の評価の基本は“滑り”にある

平昌オリンピックの金メダル候補、エフゲニア・メドベデワ(ロシア)の真のすごさは、会場で実際にその滑りを見るとよく分かる。滑りが力強く、速く、一蹴りでどこまでも伸びていく。リンクをいっぱいに使うその滑りを見ると、フィギュアスケートの基本は、“滑る”ことにあるのだと納得がいく。同じ芸術スポーツのシンクロナイズドスイミングでもロシアは圧倒的な強さを長年維持しているが、テレビで解説者がその演技中によく言う言葉がある。

「画面では分かりにくいかもしれませんが、とてもよく進んでいます」

“進んでいる”のはつまり、泳ぎそのものに推進力があり、泳力が優れているからだ。メドベデワの滑りを見ていると、そのことを思い出す。芸術スポーツであっても “スポーツ”である限り、その基本はあくまでも泳ぎ、また滑りそのものの質にある。

そう考えると、フィギュアスケートの“表現力”も、その評価の基本にあるのは“滑り”であることが分かる。音楽そのものや音楽が表す物語を、“滑り”で表現する力を評価するのだ。2002年ソルトレークシティ五輪の後に導入されたフィギュアスケートの現在の採点システムは、その点において優れた方法だといえる。

5つの評価項目で構成される現行の“表現力”採点システム

技術点と演技構成点で評価する現在の採点システムは、2002年ソルトレークシティ五輪で起こったジャッジの不正疑惑が発端となり、グランプリシリーズでは2003-04シーズンから、チャンピオンシップでは2004-05シーズンから導入された(選手たちは採点表で上に表示される技術点を“上の点数”、下に表示される演技構成点を“下の点数”と言ったりする)。それまでの旧採点システムでは、技術点と芸術点のそれぞれを審判が6点満点で採点する方式で、技術点および芸術点の採点基準は細かく定められていなかった。そのため、ジャンプの成功・失敗などが影響する技術点に比べ、特に芸術点の基準は分かりにくかったといえる。現行の採点システムにおける演技構成点は、難しいジャンプ・スピン・ステップなどを行っているかどうかには関係なく、プログラム全体の構成について評価するものだ。評価する項目には5つある。

1.スケーティングスキル(スケーティングの技術)
2.トランジション(技と技のつなぎの動作)
3.パフォーマンス(演技力とプログラムの完成度)
4.コンポジション(振り付け・構成)
5.インタープリテーション・オブ・ザ・ミュージック(音楽との調和と解釈、アイスダンスのみタイミングも評価項目)

特に1.と2.の項目に注目すると、単に「芸術点」として点数をつけた旧採点システムよりも、「プログラム構成要素」を評価する現行の採点システムは、“表現力”に加え“スケーティング”を見る傾向が強いといえるだろう。つまり、現在はフィギュアスケートの採点において“表現力”と“スケーティング”は切っても切り離せない関係にあり、スケーティング技術が高ければ高いほど表現の幅も広がるということだ。採点方法が変わった直接のきっかけは不正疑惑だったが、結果としては旧採点システムでは曖昧だった芸術面での評価の基準が、“滑り”を重視する方向で定められたともいえる。

前述したシンクロナイズドスイミングでの泳力の場合と同様に、フィギュアスケートのスケーティングの質もテレビの画面では分かりにくいが、会場で見ると一目瞭然だ。試合が進み、後半グループのスケーターになるにつれ滑りが伸びやかになり、リンク全体を使った演技になる。滑りのスピードさえあれば、ある程度は見応えのある演技になるといってもいい。よく滑るということは、プログラムの見栄えという点でもとても大切な要素なのだ。

一方テレビで観戦している場合、スケーターの表情や所作などが細かいところまでよく分かる。スケーターは主にジャッジに向かって表現するので、リンクに近いところにいるジャッジはそれをダイレクトに受け止めているはずだ。フィギュアスケートをよく知るほど足元のスケーティングを見るようになるし、そこが一番重要なのだが、全身で演技している以上は上半身も大切なのは間違いない。特にエモーショナルな動きは上半身によるものが多い。深いエッジに乗って滑りながら表情や指先まで音楽と一体化した演技を堪能することこそ、フィギュアスケートの醍醐味ではないだろうか。

1/3ページ

最終更新:2/15(木) 18:12
VICTORY