ここから本文です

「金持ち子女」親名義の住宅にタダ住まい…相続争いが勃発した場合、どう影響する?

2/21(水) 9:46配信

弁護士ドットコム

「この家って旦那の親が昔、買ったんだけど、今は私たちがタダで住まわせてもらってるの。家賃がかからないと、助かるよねー」。東京都内在住の主婦・J子さんは最近、友人のマナミさんがそう言っているのを聞き、モヤモヤしている。

「マナミちゃんの家と我が家は、世帯年収は似ているはず。でも、住宅ローンの返済を抱える我が家と、住居費がかからないマナミちゃんの家では、全然余裕が違います。子どもにかけられるお金も違うし。やっぱり嫉妬しちゃいますよね」(J子さん)

親名義の住まいに暮らし、余裕をもった暮らしをしている人たちを見ることがある。庶民のひがみだろうが、給与以上の暮らしをする「金持ち子女」が、法的な問題に巻き込まれることはないのかとも勘ぐってしまう。

相続に詳しい三野久光弁護士は、「『隣の芝生は青い』と言うように、自分の境遇よりも、知らない他人の家がうらやましく感じるのは世の常です。親名義の家に住んでいる人が住居費がかからないのは、羨ましく見えるのものですよね」と話す。

では、本当に青く見えているだけなのか。お金持ちの世界の生々しい相続問題について、三野久光弁護士に詳しく聞いた。

●生前に受けた「特別受益」は「遺産」と計算するが

「資産家の子どもには資産家であるゆえのトラブルがつきものです。その一例が、相続争いで、この種の紛争は解決まで時間を要し、感情的な対立がいつまでも続くことが多いものです」

では、「親名義の家に子がタダで住む」という家庭では、どんな相続争いが繰り広げられるのだろうか。

「まず、基本的なルールとして、法定相続人間では、生前に被相続人から受けた『特別受益』は遺産に戻して計算し、既に遺産相続されたものとして計算すべき(この操作を『持ち戻し』といいます)とされています(民法903条1項)」

●建物の「使用貸借」は、通常特別受益とはされない

親名義のマンションの生前贈与を受けた、あるいは贈与ではなくとも無償で使用していたという場合は『特別受益』にあたるのか。

「居住の為にマンションの生前贈与を受けた場合、民法903条1項の生計の資本としての贈与にあたりますから、『特別受益』にあたることになります。

しかし、生前親からマンションを無償で使用することを認められていた場合(法律的には『使用貸借』といい、無償で使用できるが、返還しなければならない性質のものです)には、争いがあります。

多くは、この場合は『特別受益』に当たらないとされています。親が収益物件として本来、賃貸借にしているものを子の事情から無償で使用させたというなら別ですが、そうでなければ、『特別受益』には該当しないと解釈されています」

●「特別受益」に該当しない理由

なぜか。

「その理由は、

(1)建物の使用貸借は恩恵的要素が強く、遺産の前渡しという要素は定型的に薄い

(2)土地の使用貸借と異なり、対抗力もなく明渡は容易であり、経済的価値はない

(3)使用の対価相当の損害が生じたといえないことが多く、仮に認められたとしてもそれについては持ち戻し免除の意思が認められる

(4)使用の対価の総額は残った遺産に比して過大となることがある

主にこの4つの理由から、特別受益には該当しないと判断されるでしょう」

庶民からすれば、うらやましくなる話だった。

【取材協力弁護士】
三野 久光(みの・ひさみつ)弁護士
同志社大学卒、1987年4月弁護士登録、大阪弁護士会交通事故委員会委員長等歴任、2015年9月からシリウス法律事務所 共著に「狙われる!個人情報・プライバシー 被害救済の法律と実務」(民事法研究会)、「Q&A 自動車保険相談」(ぎょうせい)など
事務所名:シリウス法律事務所
事務所URL:http://www.sirius-law.net

弁護士ドットコムニュース編集部