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精神疾患者の就労支援、「うつから自殺」のサインをAIが判別

2/23(金) 10:39配信

ニュースイッチ

ありきたりな発言でも病状が変化している場合も

 LITALICO(リタリコ)は精神疾患を抱える人の就労支援で人工知能(AI)を活用している。スタッフが日々作成する支援記録から、スタッフでも見抜きにくい症状重篤化のサインをAIが判別する。サインを見抜くのは熟練スタッフでも難しい。重篤化は最悪で自殺に至ることもあり、AIの役割は重要だ。

 リタリコの就労支援サービス「LITALICOワークス」の拠点は全国に59あり、6000人を超える人を支援している。利用者はうつ病など精神疾患を抱える人が主だ。400人以上のスタッフがメンタルケアをしながら就労に必要なスキルを教えるなどの支援を行う。

 うつ病などの精神疾患の場合、ストレスをためて症状が悪化するリスクがある。仕事だけでなく日常生活でもストレスをためる危険があり、最悪の場合は自殺に至ってしまう。

 それを防ぐため、スタッフはメンタルケアと併せ、被支援者の日々の状態や会話などを支援記録として本部に報告し、悪化のサインを見抜こうとしている。だが本音を言わない人が多く、熟練したスタッフでも察知は難しいという。

 リタリコワークスは精神疾患の人の自殺リスクとその防止について研究するライフネット支援室を2014年に設置。同支援室は人工知能(AI)を使い、支援記録の文章から病気悪化のサインを察知するシステムをFRONTEO(フロンテオ)と連携して構築した。16年からの運用で一定の効果が出ているという。

 「気持ちも沈んでいるし、外に出るとまた何か言われそう」。通所を休んだ被支援者との会話の中身だ。こうした場合、スタッフは「適切なケアの必要あり」とし、どう支援するかを家族や医療機関との連携を含めて検討する。

 だが、こうしたストレートな表現ではなく、「職場環境は大切にしたい」などとありきたりな発言でも病状が変化している場合がある。

 フロンテオのAI「KIBIT」の機能で、スタッフがケアの必要性がさほどないと判断しても、実は危険だと判断できるようになった。

 日々2000件の記録を自動で解析している。同支援室の浅見淳室長は「熟練の支援者と同じスキルを持つ。かつ膨大なデータを黙ってチェックしてくれるのもありがたい」と話す。

 導入の時間は調整を含め6カ月ほどで、手間はかからなかったという。AIの学習データは約200件ほどで済んだ。その後新たに学習する必要もなく、役目を果たしている。

 課題は支援の体制側にある。AIが送るアラートに対し適切な対応ができるかが重要で、「ここはAIではできないので、人材を育てる必要がある」(浅見室長)。スタッフは新人が多く、教育が追いつかない。新人スタッフの行き届きにくい点をAIがサポートしている。

 リタリコでは子ども向けの学習事業や、就労支援のマッチングにもAIを利用したいと考えている。利用者と直接触れあう部分は人でないとできないが、業務をサポートする役割にAIを位置付ける。

日刊工業新聞第一産業部・石橋弘彰

最終更新:2/23(金) 10:39
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