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「お前チクっただろ」いじめ調査後に暴力 何かを変えたくてモデル事務所へ

2/23(金) 5:15配信

沖縄タイムス

◆青葉のキセキ-次代を歩む人たちへ- 第2部 傷を抱えて 清貴 光の方へ(中)

 「やばい。これでは自分が疑われる」

【壮絶ないじめ】「やぎ座だから」と紙を食べさせられ… 男でも女でもない、私は私

 当時中学2年の安泉(やすもと)清貴(27)は青ざめた。クラスで、いじめの有無を問うアンケートが配布されたからだ。安泉は、いじめられていることを教師に告白したばかりだった。

 前日、家が近所の男性教師にコンビニでたまたま出くわし、夕飯に誘われた。2人でラーメンをすすりながら交わす会話は、教室の重苦しい空気とは違う。安泉は初めて悩みを打ち明けた。いじめに全く気付かなかったという教師。「なんで分からないば」と、泣きながら怒りをぶつけた。「どうにかする」という教師の言葉を信じ、涙をぬぐった。気持ちをさらけ出し、少しだけ心が軽くなった。

 その直後のアンケート。「お前(先生に)チクっただろ」。いつもの男子グループに問い詰められ、殴られた。結局、状況は何も変わらない。「大人を頼っても無駄だな」。教師が話を聞いてくれたことはありがたかったが、安泉は他人に期待することをやめた。

 やがて卒業式が近づいてきた。いじめに耐え続ける日々から解放される-。そう思うと、夜も少しずつ眠れるようになった。だが、友人がいなかった安泉にとって、式後に開かれる卒業生の集いが心を重くした。

 ある夜、母の寝室で集いに行きたくないと口にし、いじめのことを打ち明けた。母は静かに話を聞き、言葉を掛けた。「行かなくていいよ。その代わり、自分で決めたことには後悔をしないように」

 1人で自分を育ててくれた母に心配を掛けたくなくて、言えずにいた悩み。「肩の荷が下りた気がした」。孤独に抱えてきた重圧がほどけ、涙があふれた。

 いじめグループのメンバーとは別の高校に進んだ。ほっとしたが、再びいじめられることへの恐怖心もあった。「何かを変えないと、今まで通りになる」

 中学時代は「天然パーマ」「ガリガリ」などと容姿をからかわれた。自信をつけたいと、知人に勧められたモデル事務所の門をたたく。モデルの肩書が付けば、ばかにされないと考えた。

 高校3年のある日、友人に誘われ、那覇市内の小さな劇場に足を運んだ。そこで目を奪われたのは、汗だくになって舞台を動き回り、熱気みなぎる演者の姿。「めちゃくちゃすごい。俺はこんなふうに一生懸命生きてきたかな」

 人に心を開き、感情を表すことが苦手な自分。対極的に全てをさらけだす演者の姿に、激しく心が揺さぶられた。安泉は、舞台に心引かれていった。=敬称略(社会部・湧田ちひろ)

<清貴 光の方へ(下)に続く>

最終更新:4/26(木) 16:40
沖縄タイムス