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常識破りな真珠のジュエリーが打ち砕いた壁とは?

3/8(木) 18:00配信

bouncy

常識や固定観念といった壁を打ち破るプロジェクトや試みにフォーカスする「CROSS THE BORDER」。第2回はミラーボールのように燦然と輝くジュエリー「華真珠」。

その名通り真珠を加工して作り出されたもので、山梨県甲府市にあるジュエリーメーカー「小松ダイヤモンド工業所」が開発したもの。丸いつるっとした球体と柔らかな光沢が特徴の真珠に、新たな光を宿した逸品だ。

日本で採れる唯一の宝石

開発のきっかけは、「小松ダイヤモンド工業所」の先代、小松一男氏。ダイヤモンドのカットを中心に宝飾研磨を請け負っていた同氏は「現在日本で採れる唯一の宝石である真珠(貝の体内で生成される「バイオミネラル」)に付加価値をつけ、新たなジュエリーの分野を開拓できないか? 」と華真珠を考案。「どこまで美しくなるかは未知数だったのではないか」と語る後継者である現取締役・小松一仁氏に話を聞いた。

1992年に世界で初めて誕生し、「華真珠」と名付けられたこの真珠は、ダイヤモンドのカット技術を真珠に応用したもので、直径約1センチの真珠に大小200近いカット面が施され、真珠の常識をくつがえす絢爛豪華な輝きをまとう。

高い技術が要求される職人技の結晶

華真珠には、現代のテクノロジーでは到達できない職人技と経験が要求されると小松氏は語る。

小松:ダイヤモンドをはじめとする他の宝石は、中まで同じ石でできているので、失敗したとしても小さいサイズで製品化することができるが、真珠は削りすぎると「核」と呼ばれる輝かない部分が露出してしまう。

そのため表面のわずか1ミリしかない真珠層だけでカット面を作らなくてはならない。真珠は宝石のなかでもかなり削れやすい部類に入る。そのため、華真珠のカットパターンを正確に仕上げるには、熟練の職人技を要する。

職人技の粋を尽くした逸品で、小さな工場が世界への進出を試みた。

華真珠を待ち受けた壁

華真珠の美しさは、海外のジュエリーブランドにも取り入れられ、好評を博す一方、市場では「もともと美しい真珠をなぜ削るのか?」「真珠の魅力を損なう」と否定的な声が後を立たなかったのだ。

そして、もう一つの大きな問題がコピー品。香港を始め世界各国で、華真珠のコピー品が「カットパール」「フラワーパール」などと名前を変えて量産された。見よう見まねのコピー品はカットや研磨の精度が低く、次第に「真珠」を「カット」した製品は評価を落としていった。

「小松ダイヤモンド工業所」が同時期に開発した「コンケーブカット」も同じ問題を抱えていた。通常の角を複数作って象るカットパターンとは異なり、くぼみ(コンケーブ)をつける、高度なカット技術をもって初めて輝くことがこのカットパターンの特徴だ。

小松氏が発表してから数年経った2000年。あるブラジル人が「ミレニアムカット」とあたかも自分たちが考案した記念碑的なカットパターンとして世界に打ち出した。

小松氏が考案した「コンケーブカット」ではなく「ミレニアムカット」の名で一世を風靡し、そしていつしか忘れ去られてしまった。

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最終更新:3/8(木) 18:00
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