ここから本文です

伊調馨「パワハラ」問題、両者を公平に扱ってはならない理由。

3/9(金) 11:30配信

VICTORY

オリンピック4連覇、国民栄誉賞を受賞している女子レスリングの伊調馨選手をめぐるパワーハラスメント告発問題が世間を騒がせています。日本レスリング協会の栄和人強化本部長のパワハラを糾弾する告発状に端を発するこの問題は、競技団体を統轄する協会の対応も注目を集め、第二の“相撲協会問題”の様相を呈しています。この問題に対し、作家・スポーツライターの小林信也氏は、「スポーツ界の体質自体に問題がある。世間の求める“公平性”では解決しない」と警鐘を鳴らします。(文=小林信也)

「早すぎる対応」に感じられる不自然さ

女子レスリングのパワハラ騒動の雲行きが怪しくなっている。日本レスリング協会が報道の出た翌2日(金曜)すぐ、「当協会が伊調選手の練習環境を不当に妨げ、制限した事実はございません。同様に、当協会が田南部力男子フリースタイル日本代表コーチに対し、伊調選手への指導をしないよう不当な圧力をかけた事実もございません」などと告発内容を否定した。
 
また産経新聞によると、警視庁の幹部も同じ2日、取材に対し、『伊調選手が練習先だった警視庁への出入りを禁止されていたとする告発状の指摘について、「警視庁が出入り禁止にした事実はない」と述べた。』と答えたという。
 
こうした素早い動きで、告発者側の言い分や世間で盛り上がる批判ムードを抑え込み、騒ぎがこれ以上大きくならないよう水を差す意図が感じられる。対応が素早いのは「いいことだ」という印象がある。だがこの短時間で一体、誰にどのように確認し「そんな事実はない」と断定したのか? 多くの人が不信を抱いただろう。こうした不可解な発表と否定こそが、パワハラ体質を投影しているとも感じられる。
 
パワハラの告発があったら、「パワハラを受けた」と訴える当事者の言い分をできるかぎり聞くのが「誠意ある対応」「双方が前向きな未来を見出すための基本」ではないだろうか。「パワハラをした」と告発された側は、自分たちの常識や思い込みを盾にせず、できる限り自分たちの思い込みや「常識」を取っ払い、「パワハラをされた」「そのために傷ついた」と訴える側の気持ちに寄り添う心構えが求められる。そうしなければ、会話が平行線で終始するのは目に見えている。権力を持つ側の論理を強く主張されたら、「権力者側の言い分が通ってしまう」。それこそが、パワハラが改善されない不毛なからくりだ。

1/3ページ

最終更新:3/9(金) 23:54
VICTORY