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俳優・岩田剛典、本格降臨! 3つの顔で、観客の視点を翻弄する『去年の冬、きみと別れ』

3/10(土) 8:40配信

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岩田剛典と聞いて多くの人がイメージするのは、やはりEXILEや三代目 J Soul Brothersのメンバーとしてのパフォーマンスだろう。しかし、『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(2016年)では第40回日本アカデミー賞・新人賞を受賞しており、今年4月からは主演ドラマ「崖っぷちホテル!」(日本テレビ系)が決定しているなど、俳優としての活動も順調だ。そして、3月10日より公開される映画『去年の冬、きみと別れ』では、“俳優・岩田剛典”としての芝居力が存分に発揮されている。

惹きつけながらも、肝心なものは見せない

『去年の冬、きみと別れ』はミステリーに分類される作品だが、その中核を担っているのが岩田だと言える。なんと「第2章」から始まり、その後に「序章」が続くという変則的な構成。岩田が演じるのは、主人公である血気盛んな記者・耶雲。彼は、いわく付きの事件を起こした、危険な香りのする天才カメラマン・木原(斎藤工)に接近するが、やがて自身の婚約者を狙われることになる。

結婚を目前に控え、名を挙げておこうとするフリーランスの記者。当初はそんなふうに映るが、耶雲の野心が実は別なところにあると次第にわかってくる。この観客の想定が見事に崩されていく展開こそ、本作最大の醍醐味だ。岩田は観る者の目を惹きつけながらも、肝心なものを見せない。そんなワザを身につけている演じ手なのである。

仮面と素顔をつなげる、破格の説得力

「序章」で耶雲は眼鏡をはずした姿であらわれる。彼はかつて眼鏡をかけていなかった。つまり、眼鏡はある種の「仮面」であり、なんらかのカモフラージュであったことがわかる。事実、「序章」での耶雲は、「第2章」の彼とは同一人物とは思えないほど、無垢でピュアな印象がある。わたしたちの胸には、“いったい、どちらが本物なのか?”という戸惑いが生まれ、視点の混乱が起きるだろう。

耶雲が見せる二つの人物像は、まるで違って見える。だが、岩田は二重人格者を演じているわけではない。ひとりの人間の“ふたつの側面”を見せているだけなのだということが、やがて明らかになっていく。

最終盤で彼は「第3の顔」を見せる。その顔は、「第2章」の耶雲と「序章」の耶雲とをつなぎ、人間がいかに多面体の存在であるかを知らしめるだろう。岩田は、アクロバティックに豹変するというより、ひとりの人間をじっくり煮詰め、その味わいが変化していく様を体感させる。意表を突かれるが、彼の演技そのものは、地道で真っ当で説得力がある。

本作を観終わったとき、観客の中で耶雲の実像は変化している。その変化を鮮やかに体現できるのは、岩田の演技力があってこそ。さらなる飛躍を予感させる彼の芝居を、ぜひ本作で確かめてほしい。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

最終更新:3/12(月) 12:24
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