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牛乳配達への回帰が証明、前進するには過去を振り返ることも必要

3/11(日) 9:01配信

The Telegraph

【記者:LUCY HOLDEN】
 なんという懐かしさだろう! 1980年代以前に育ったわれわれにとって、木箱に入った瓶がぶつかり合う音や時速25キロでゆっくりと進む車輪の音は、ある一つの存在を意味している。凍るように冷たい牛乳瓶を玄関前の階段まで配達してくれる、午前4時の牛乳配達の音だ。

 しかし絶滅が危惧される鳥の鳴き声のように、牛乳配達の音は失われつつある。遺物リストに掲載される運命であるかのように。牛乳全出荷量に占めるガラス瓶入り牛乳の割合は、1975年の94%に対し昨年はわずか3%。うぬぼれ屋でいばりん坊の「近代化」がプラスチック製の容器を持って大股でやってきて、もっと良い方法があるぞ、と言ったのだ。

 それが今、プラスチックに不安を抱く消費者からの要望が殺到したことを受け、牛乳配達が復活している。なんという皮肉…でも素晴らしい。私たちは、毎日3500万本のプラスチックボトルを使うが、うち1600万本はリサイクルできていない。そして、それがどれだけ環境に悪いかも知っている。

 だが同時に、とても腹立たしい。ガラス瓶を放棄してプラスチック容器に乗り換えたのは、完璧に機能するシステムのための安易な変更だった。それが受け入れられたのは、「新しいほど良い」という決めつけからだ。だが以前より悪くなることは多々ある。

 2042年までに不要な廃棄物をゼロにするというテリーザ・メイ(Theresa May)首相の政策は、若者たちの想像力をかき立てたかもしれない。牛乳発射機を載せたドローンからシリアルの上に直接牛乳をかけてもらうのはどうだろう? 紅茶に牛乳の錠剤や3D印刷のカルシウムを入れるというのは?

 失われてしまった英国の伝統に固執しているとして、お年寄りたちが激しくやゆされることもあるが、進歩が過去への後退を伴うことも多い。

 近代化の曲がり角に差し掛かるたびに過去が見直されたのは、私たちがいつも古いものをお払い箱にしておきながら、年月を経て、それが機能的であるだけでなく環境にも良く、かなり「クール」でもあると認めてきたからだ。近年でははく製や陶芸、パン作りやガーデニングなどを楽しむ人々が急増している。

 編み物も流行しており、スケート場から樹木まで都市の一角をすべて編み物で覆う「ヤーン・ボミング」という活動も若者の間で行われている。祖父母にしてみれば腹立たしいことかもしれないが、私たちは50年前に流行遅れになったさまざまな物を再発見しているのだ。(当時彼らにそれがわかっていたら、そもそも流行遅れになることはなかっただろう)

 進歩することは極めて重要で、そのためには現状を疑うことも必要だ。しかし私たちはそれを複雑にしすぎる傾向がある。すべてのものが、超近代的な解決法やハイテク技術を必要としているわけではない。牛乳に関して言えば、進歩とは、前進するために過去を振りかえることを意味する。【翻訳編集】AFPBB News

「テレグラフ」とは:
1855年に創刊された「デーリー・テレグラフ」は英国を代表する朝刊紙で、1994年にはそのオンライン版「テレグラフ」を立ち上げました。「UK Consumer Website of the Year」、「Digital Publisher of the Year」、「National Newspaper of the Year」、「Columnist of the Year」など、多くの受賞歴があります。

最終更新:3/11(日) 9:01
The Telegraph