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社説[福島原発事故7年]将来の方向もっと議論を

3/11(日) 8:55配信

沖縄タイムス

 2011年4月12日朝、福島県飯舘村の男性が、自宅で首をつって自殺した。102歳だった。この年になって自ら死を選んだのはなぜか。

 男性は、村が避難区域になると知って、「やっぱりここにいたいべ」とつぶやいていたという。福島地裁は今年の2月、原発事故と自殺の因果関係を認め、東京電力に賠償を命じる判決を下した。

 東日本大震災と東電福島第1原発事故の発生からきょうで7年になる。

 住み慣れた町を離れ、不自由な避難生活を続ける人は、全国で約7万3千人。原発事故に見舞われた福島県では、今も5万人が県内外に避難する。

 政府は被災地のインフラ整備や除染などのため巨額の予算を集中的に投じた。復興を急ぎ、古里を離れた人びとを避難元に呼び戻す帰還政策に力を入れてきたのであるが、その試みが成功したとは言いがたい。

 第1原発が立地する双葉町や大熊町などは、帰還困難区域に指定され、今も立ち入りが制限されている。政府や自治体は、区域内の一部地域を特定復興再生拠点として整備し、帰還を促す方針だが、復興拠点からはずれる住民は、帰還の見通しが立たないままだ。

 避難指示が解除された地域でも、帰還率は低い。放射線への不安や生活環境の不便、子どもたちが避難先での生活になじんでいること、などの理由からだ。

 「復興=帰還」を急ぐ行政側と住民の間に考え方のずれが生じているのである。

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 時がたてばたつほど明らかになってきたのは、福島第1原発事故の「理不尽さ」と「途方もなさ」である。

 除染、汚染水処理、廃炉、被災者への補償、風評被害対策など、いずれも長い時間と巨額の経費と膨大な労力が必要なものばかりだ。

 福島第1原発は1~3号機の計3基で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。廃炉完了までに30~40年かかると見込まれている。

 溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出す作業は容易でない。遠隔カメラによって内部の調査を進めているが、まだ内部の状態を正確につかんではいない。

 帰還困難区域の除染費用は数千億円にのぼると試算されている。汚染水も増える一方である。地下水の建屋流入を防ぐため東京電力は「凍土壁」を設けたが、その効果は限定的だ。

 第1原発事故にまつわるデマや偏見も依然として収まる気配がない。

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 これほどの過酷事故を引き起こしたにもかかわらず、政府や経済界は原発の再稼働だけでなく、新・増設にも意欲的である。

 ドイツは2022年までの脱原発を決めた。イタリア、台湾、スイス、韓国なども、脱原発の方向性を打ち出している。再生可能エネルギー(自然エネルギー)への転換は世界的な傾向だ。

 野党4党は原発ゼロ基本法案を国会に提出した。この機会に原発論議を深めてもらいたい。

最終更新:3/11(日) 8:55
沖縄タイムス