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デジタル改革時代に“選んではいけない”SIer

3/12(月) 12:26配信

ITmedia エンタープライズ

 「NTTデータはもはや古くさいシステムインテグレーター(SIer)。デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のパートナーにはなり得ない、とお客さまに思われないように、しっかりと取り組んでいきたい」――。NTTデータの冨安寛 技術革新統括本部システム技術本部長は、同社が先頃開いたDX事業についての記者説明会でこう切り出した。

図2 SIerのDX推進における課題

 確かに、SIerといえば業務システムの構築・運用を担うイメージが強く、最新のデジタル技術を自在に操る印象は乏しい。SIerの代表格であるNTTデータはまさにそのイメージがつきまとうが、冨安氏によると「私たちもDXに対して、ただ手をこまねいているわけにはいかない。ここに来て本腰を入れ始めている」という。

 今回はそうしたNTTデータの話を基に、ユーザー企業の視点で、SIerをDX推進のパートナーに選ぶ際のコツについて考察してみたい。

 まずは、NTTデータの独自調査によるITサービス市場の予測を図1に示した。これによると、SIやパッケージ(PKG)などのトラディショナルと、クラウドやモバイルアプリなどのデジタルにおける構成比率は、2014年で9対1だったのが、2025年には4対6に逆転するとしている。

 では、国内のSI業界にとってDXの進展は何を意味するのか。冨安氏は、SI業界ではかねて、IT人材の不足、オフショアの単価高騰、グローバル規模のクラウドサービスの利用加速などへの対処に迫られていたところにDXの進展が重なり、「従来の人月による受託ビジネスでない新しいモデルが必要になってきている」と指摘した。

 また、宿泊予約サイトをサンプルとして、システムを自前で構築した場合とデジタル技術を活用して構築した場合のコストを比べたところ、デジタル技術の活用が4分の1で済むことが判明。こうしたことから、冨安氏は「SIerは従来の開発スタイルとともに、工数や物販、ライセンス費の増大などによる収益構造を変えていかなければいけない。ひいては、象徴的なSIerであるNTTデータ自身が変わっていかなければいけない」と力を込めた。

●SIerに求められるビジネス現場でのデジタル活用

 そこで、NTTデータは今後の生産技術の方向性として、図1になぞらえて3つのアプローチを図っていく構えだ。3つのアプローチにおけるキーワードは、トラディショナル領域に向けてさらなる生産性向上を目指す「System Lifecycle Automation」、トラディショナルとデジタルの両領域に向けて既存IT資産のデジタル融合を目指す「Legacy Digital Integration」、そしてデジタル領域に向けて新しいサービスの創出を目指す「Digital Capability」である。

 この中で、SIerにとってビジネスモデルの転換をも迫られるのが、Digital Capabilityである。ここではこのアプローチに注目したい。

 冨安氏によると、これまでSIerはユーザー企業のIT部門の要求を受けて受託開発を行ってきた。一方、DXはユーザー企業にとってのユーザーであるエンドユーザーとの接点となるビジネス現場を中心に発生しており、SIerとは遠いところで動いていた。つまり、SIerのDX推進における課題は、ビジネスとITが分断されていることに起因しているのである。(図2)

 こうした状況に対し、NTTデータはDX推進に向けてどのように取り組んでいるのか。それを示したのが図3だ。ポイントは、ビジネスの現場にITを近づけることである。ここでいうITとは、一通りのデジタル技術のスキルを備えた「フルスタックエンジニア」と呼ぶ人材と、その人材をユーザー企業に送り込んでビジネス現場で一緒に議論する「共創の場」を指す。

 そのうえで、具体的に何をやるのかを示したのが図4である。この中でSIerがこれまで得意としてきたのは、業務システムの要件定義から右側の領域だ。しかし、DXを推進するためには、ビジネス現場寄りでの「ユーザーインタフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)デザイン」や「サービス企画」のケイパビリティも求められる。ちなみに同社では、これらのケイパビリティを発揮できるデジタルプラットフォームとして「Altemista」(アルティミスタ)と呼ぶ道具立てを用意している。

 冨安氏によると、同社のDigital Capabilityにおける実績は2017年度(2018年3月期)、グローバルの受注額で120億円超、2016年度比3倍に迫る成長率で推移しているという。とはいえ、同社としてはこれからが本格的な取り組みとなる。「フルスタックエンジニアの育成を急ぐとともに、当社がDXの推進に向けてしっかりとご支援できることを今後もっと積極的にPRしていきたい」と同氏は意気込みを見せた。

 さて最後に、今回のNTTデータの話を踏まえて、ユーザー企業がSIerをDX推進のパートナーに選ぶ際のコツについて5つ挙げておこう。その5つとは、「DX関連ソリューションがあるか」「DXに精通した人材がいるか」「実績があるか」「コストや取り組み姿勢に柔軟性があるか」、そして「ビジネスパートナーとして信頼できるか」である。裏を返せば、こうしたマインドのないSIerとの付き合いは考え直した方がいいかもしれない。

 これからのDX時代は、SIerにとっても生き残りをかけた厳しい戦いになりそうだ。冨安氏の話からはそうした危機感もひしひしと伝わってきた。