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タニタ  活動量計を社員証にして、自社でテスト

3/12(月) 18:04配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 谷田千里タニタ社長(1)

 タニタ(東京)は、体重や体脂肪、骨量等を測る体組成計や歩数計など、家庭用、業務用の各種計測計量機器を製造販売する。最近は健康メニューの「タニタ食堂」から健康管理を支援する「タニタ健康プログラム」まで多角化し、健康総合企業に発展している。ユニークな経営を谷田千里社長が語る。

 ――タニタは体重計の「ヘルスメーター」を初め、様々な健康関連の計測機器を世に送り出し、開発に当たっては、まず社内で試してみるそうですね。

 私が首から下げている活動量計は、社員もつけています。1日の歩数や消費エネルギーを測るもので、「タニタ健康プログラム」の一環として使います。フェリカチップが入っていて、体脂肪や血圧を測る時、計測器にかざせば、個人のデータとして記録されて、サーバーに送られます。

 今年1月に、私からのお年玉として、今までのものと換えて、社員全員に写真入りのやつを渡しました。社員証になっていて、今度はこれを忘れたら会社に入れないよ、と言っています。

 他のも全部そうなのですが、試してみて問題が無くなったら、お客様にどうぞと売ります。これで個人認証もできますから、コピーやファックスを使うのに必要ですし、会社や部署間の出入りのセキュリティーコントロールもやれます。

 ――一石二鳥か三鳥ですね。

 活動量計は常時、身につけてもらわないと困るのですが、「忘れて来るなよ」と言っても、私も含めて忘れるんです。いろいろ対策を考えて、社員証としても使えるようにしたのです

 社内にお知らせを出しました。これを忘れたら、総務に行って理由書を書いて社長に提出してください。それで社長が許可したら、入れますと。これくらい厳しくすれば、多分、絶対忘れないでしょう。

 ――私が勤めていた日本経済新聞社も入館証がないと入れません。取材から戻ったら、入館証を忘れたのに気づき、面倒なので帰ったことがあります。

 まあ、いいかって(笑)。うちでは1月の雪が降った次の日、7時頃にメールが来て、「家を出たのですけど、びしょ濡れになって、なえたので、帰って家で仕事します」というのがいましたよ。

 その日は、総出で雪かきをするでしょう。私は頭ごなしに命令するのは嫌だし、「自分でやらないで、言うなよ」とも言われたくないので、前夜、雪かきをしました。

 最後に残っていた社員に「雪が降っているので帰ってくれ」と促したら、「雪かきを手伝いましょうか」と言ってくれました。「私は家が近いから大丈夫だ」と、その社員を帰してから、夜中に雪かきです。

 雪がさんさんと降る中で、門の近くまでやって、力尽きました。翌朝、出社したら、遠くから通う社員も出てきて雪かきをしているので偉いな、こういうところで働きぶりがわかるなと思いましたけどね。

 ――いろんな社員がいらっしゃる(笑)。そのネクタイのところにつけているのも活動量計ですか。

 これも活動量計です。通信機能はついていませんが、より細かく、歩き、走り、静止の状態などで、どのようにカロリーを消費したかがわかります。

 外に出るときもネクタイピンの代わりにつけています。会った方から「何ですか」と尋ねられたら、「ご説明しましょう」と、営業活動につながるでしょう。トレードマークになっているんです。

 ――いろいろな製品を扱っていますが、谷田社長は「健康を測るから、健康を作る」と言っていますね。最近は何がヒット商品ですか。

 今一番いいのは子会社のタニタヘルスリンクがやっている「タニタ健康プログラム」です。この会社はトヨタ自動車の東京本社の隣にあるビルに入っています。健康オフィスのショールームも兼ねていて、板橋区の本社から見ると、カネをかけすぎと思いますが、引く手あまたなんです。

 当社で実践して開発した健康プログラムで、まず歩数計なり活動量計なりを一人ひとりが持ち、その数値と体組成計や血圧計で測ったデータとを併せて、サーバーに集めます。

 データを分析してめいめいの健康状態を見える化します。それを自分でも見られますが、管理栄養士や健康運動指導士などの専門家からアドバイスを受けられます。こうして利用者の健康の維持増進に役立ていただくサービスです。

 たまたま日本で健康経営を進めようという機運が高まってきたのと合ったんです。自治体や企業は健康経営によって医療費を減らせと、プレッシャーをかけられているのです。

 ――引く手あまたと言うほどですか。

 平成24年版と26年版の厚生労働白書に、これによって医療費が下がったという当社の事例が載ったのです。白書に出た効果なら、疑わないでしょう。

 自治体や企業の方には、話半分に聞いてもらっても、上がり続ける医療費が横ばいになれば、抑えられた分で、プログラムの導入費用をまかなえるのではと説明しています。

 「じゃあ、いけるね」と、だいたい入れていただけます。こちらが処理しきれないくらいです。

 ――いくつの企業、自治体が導入しているのですか。

 100を超えましたね。売り上げは年に2倍までは行きませんが、かなり伸びています。というのは、継続してやるところ、1つの部署から始めて、2つ3つ、そして全体に広げるケースもあるからです。

 導入に当たってはまず機器の購入とシステムを設定する初期費用がかかります。あとは利用する人数分のWebの月額使用料です。低額ですが、仮に1人100円としても、私どもにとってはほぼ100%利益になります。

(次号に続く)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:3/12(月) 18:04
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