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ゴーゴー・ペンギン「アイデンティティ外す音楽」伝えたい想い:インタビュー

3/12(月) 14:15配信

MusicVoice

 英・マンチェスターのバンドのゴーゴー・ペンギンが去る2月9日に、最新アルバム『A Humdrum Star』をリリース。同作を引っ提げた世界ツアーの中で、2月19日から来日し、ブルーノート東京と名古屋ブルーノートで計4日間の公演をおこなった。彼らはクリス・アイリングワース(Piano)、ニック・ブラッカ(Ba)、ロブ・ターナー(Dr)から成る、ジャズにおいて伝統的なピアノトリオという楽器編成。アコースティック楽器でエレクトロニカやダブステップなど、クラブミュージックの様な独自のサウンドを展開する。2012年にアルバム『V2.0』が『マーキュリー・プライズ』(英国、アイルランドで最も優れたアルバムに贈られる賞)にノミネートされ、世界中から注目される存在となった。クラシックの音楽学校で学び、様々な活動を経験してきたという3人。今回は4度目の来日となる彼らにインタビューをおこなった。「今が自分達の到達点だとは思っていない」と語る彼ら。独自のサウンドを形成してきたこれまでの活動と、音楽のジャンルや世界ツアーを通して彼らが考える音楽の魅力について語ってもらった。【取材=小池直也/撮影=大西 基】

【写真】ロブ・ターナー

アイデンティティを取り外すのが音楽

――みなさんのお名前は日本のジャズリスナーにも知れ渡っていますよ。

一同 おお、良いですね(笑)。

――4度目の来日となる今回の公演はいかがでしたか?

クリス・アイリングワース とても良かったです。4日間2セットずつのショウをやっていましたので、結構疲れましたね。でも日本の皆さんのエネルギーのおかげでいいライブが出来たと思いますよ。前回来日した時は1日くらい東京を巡る機会があったのですが、それが今回なかったのが少し残念でした。

――日本に対する印象はいかがでしょう。

クリス・アイリングワース いつも皆さん良くしてくださるし、ライブは盛り上がるし、食べ物はおいしい。とても良いですね。日本の後も色々な所をツアーする予定です。アメリカ、ブリュッセル、フランス、ドイツ、イスタンブール、その先は怖くてスケジュールを見ていませんが…(笑)。

――ゴーゴー・ペンギンは日本でジャズのカテゴリで紹介される事が多いですが、皆さんはどう思われますか?

ロブ・ターナー 特にジャズと呼ばれる事にこだわりはないです。例えば、最初にウォークマンがあって4つのボタンで選曲ができるとしましょう。『ジャズ』、『ロック』、『クラシック』、『ポップス』。そこから段々ジャズでもビバップ(40年代後半から50年代のスタイル)や色々に派生し、クラシックはバロック(バッハなど)やロマン派(べートーヴェンなど)と細分化していきます。だから、そのリスナーが見つけたい音楽にたどり着くために言葉があると思うんです。それはそれで良いんじゃないかなと。

――なるほど。皆さんはエレクトロミュージックの質感をジャズの伝統的なピアノトリオ(ピアノ、ウッドベース、ドラムスの編成)で再現しようとされている様に思われますが、なぜこの様な音楽性に辿りついたのでしょう。

クリス・アイリングワース このバンドを始めて数年が立ちましたが、今が自分達の到達点だとは思っていません。まだこれからミュージシャンとして、これまでもそうだった様に実験を重ねて変化し続けていくと思うので。3人の人間が集まって、それぞれの考えがあり、個性があり、人生がある。小さな事が積み重なって、年月を経て何かになっていくので、どうやってここまで来たかという事を説明するのも難しい。それと同じ様にこの先どうなっていくのかもわかりません。

 ターニングポイントはありましたよ。2012年にアルバム『V2.0』が『マーキュリー・プライズ』(英国、アイルランドで最も優れたアルバムに贈られる賞)にノミネートされた事もそうですね。そういう事が自分達の背中を押してくれましたが、それもあくまで通過点。だから、どこから来たのかも、どこに向かうのかもわからないんですよ。

――敢えて伝統的なフォーマット(ピアノトリオ)を使っているわけではない?

ニック・ブラッカ たまたま、この3人が1番得意だったのがこの楽器なだけです。僕もギターがちょっと弾けたり、ロブも少しピアノが弾けるので、それを使うという事も出来なくはないですが。でもアコースティックな楽器でエレクトリックな事を再現するという事に面白さを感じます。シンセサイザーやパッドなどの機材を使えばそれは簡単ですけど、敢えてそれを人力でやるところがチャレンジングなんですよね。

――イギリスの音楽シーンについてはどのように感じていますか。

クリス・アイリングワース 僕達はあまり周りの事を考えていないんです。気にしていないという訳ではないんですけどね。常に「自分達の音楽」を考えているので。実際にUKでも「ジャズが復活した」という様な事が言われていて、シーンは盛り上がっていると思います。でもそういうバンドがいたとしても、自分たちがそれによって何かを変えるという事はありません。

ニック・ブラッカ アメリカに行った時はジャズの本家というか、ジャズが生まれた場所だから「もしかしたら自分達の音楽が受け入れてもらえないのではないか」という気持ちもありました。でも実際に行ってみたら全く正反対でした。なぜかと言えば、自分達がやっている事はジャズだとは思って聴かないんですよ。「ジャズではないけど、この3人組面白い」という風に受け止めて貰えた事は良かったです。

クリス・アイリングワース アメリカは凄く広い。国によってだけでなく、州ごとでも凄く反応が変わるんです。例えばアリゾナ州のフェニックスでやった時の雰囲気と、オレゴン州のポートランドだとマンチェスターに近いと感じたり。会場によってその土地の個性が違うのが面白かったですね。

――とすると、皆さんの音楽もイギリスだったから生まれたという風に思うのですが…。

クリス・アイリングワース 音楽と自分達の国籍的なアイデンティティを一緒に捉えた事はないですね。

ロブ・ターナー 歴史的にもクラシックのオリヴィエ・メシアン(作曲家)もインドの音楽が好きだったりします。今で言えば、ジャズの人もヒップホップの人もスマホなどで国に関係なく色々な音楽が聴けますよね。だから国籍というアイデンティティを外してくれるのが、音楽なんじゃないかなと思います。

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最終更新:3/12(月) 14:15
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