ここから本文です

「内部留保」と「賃上げ」を語って恥をかかないための超入門

3/13(火) 21:20配信

投信1

内部留保は「明日配当する予定の株主の持ち物」だと考えよう

少し時間を巻き戻して、社員の給料を払った後に利益が10万円残ったことを思い出しましょう。

その10万円は、電子レンジを買ったり銀行の借金を返したりするのに使うこともできますが、株主のものですから、株主である筆者に利益の10万円を配当することもできます。配当した後、残った100万円でパンを仕入れれば、2日目のバランスシートは1日目と同じになります。

表2と表5を比べてみましょう。表5は、儲けを株主に配当してしまったので、社内に現金がありませんし、バランスシートの右下に内部留保もありません。表2は、儲かった10万円を明日株主に配当しようと思って金庫に保管してある状態だとします。それを見て「金庫に現金があるなら賃上げしろ」というのはおかしいですね。10万円は株主のものですから。

内部留保は、一度配当した資金を再度出資してもらったのと同じこと

さて、表5の株主としては、「配当を受け取ったけれども、その分も使って電子レンジを買ってもっと儲かる会社にしたい」と考えて、会社の増資を引き受けたとします。会社に株券を新たに印刷させて、配当された10万円を使ってそれを会社から買い取ったのです。バランスシートは表6のようになります。

表2と表6を比べてみましょう。どちらも純資産が60万円ですから、会社を解散する時には株主に60万円払い戻すことになるはずです。

表6には内部留保がないので、「内部留保を使って賃上げしろ」という人はいないでしょう。しかし、表2に対しては、そういう人が多いのです。

表2と6は何が違うと言うのでしょう?  単に「株主に配当して、同額を出資してもらう」という手間を省いただけです。会計規則上、手間を省くと10万円が「資本金」ではなく「内部留保」と記載されることになっているから、違いがあるように見えているだけです。

P.S.
「儲かっているのだから賃上げしろ」と言うのであれば、理解できますが、その場合には表3や4や5や6の会社にも賃上げを要求すべきでしょう。表2の会社に賃上げを要求して、他の会社に要求しないのは、筋が通りませんよね。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>

塚崎 公義

3/3ページ

最終更新:3/15(木) 22:00
投信1